第1404回「台風シーズン到来~命を守る避難と備え」
オンライン:アウトドア防災ガイド あんどうりすさん

西村)5年前、近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号。記録的な暴風などで14人が亡くなり、8万棟を超える家屋の被害が発生しました。関西国際空港連絡橋にタンカーが衝突した映像も衝撃的でしたね。専門家によると、日本近郊の海面水温の上昇によって、強い勢力の台風が日本に上陸する可能性が高くなってきているそうです。
きょうは、台風シーズンを前に台風への備えを考えます。ゲストは、アウトドア防災ガイドのあんどうりすさんです。
  
あんどう)よろしくお願いいたします。
 
西村)大雨・河川の氾濫・土砂災害・浸水といった台風の被害から身を守るためにはどうすれば良いですか。
 
あんどう)台風は地震とは違い、予想できる災害。事前に備えることができます。まずは情報を得ることが大事です。
 
西村)テレビ・ラジオ、自治体のSNS、友人や家族からさまざまな情報を得ることができますが、その中で一番大事な情報は何ですか。
 
あんどう)まずは、自宅の場所をハザードマップで確認して、土砂災害・河川の氾濫などのリスクを調べることが大事です。
 
西村)自宅はもちろん、職場の場所も調べておく方が良さそうですね。ハザードマップは自治体から配られますが、なくしてしまったときはインターネットで調べることもできます。
 
あんどう)ハザードマップポータルサイトという言葉で検索してください。国や自治体の情報をすべて見ることができます。
 
西村)ハザードマップポータルサイトにある「重ねるハザードマップ」なら、洪水・土砂災害・高潮・津波などのさまざまな情報を一度にチェックすることができますね。
 
あんどう)河川の氾濫から逃げようとして、土砂災害の危険がある方向に行ってしまわないように、さまざまな情報を重ねて確認しましょう。「重ねるハザードマップ」に住所を入力すると、その場所のリスクがすぐにわかります。浸水想定が3m以上の場合は、2階の床上まで浸水することになるので、浸水の危険性は3mを基準に考えてください。
 
西村)浸水や土砂災害の可能性が高い場合は、どのような備えをすれば良いでしょうか。
 
あんどう)リスクが高い場合は避難が必要。早めに避難するために避難先をあらかじめ決めておきましょう。
 
西村)近所の公民館や学校以外にも避難できる場所を調べておいた方が良いですね。
 
あんどう)ホテルや親戚の家でも良いので、リスクの少ない場所を考えておきましょう。人口が多い地域では避難所が密になるのは当然。避難先としてホテルを利用するときに補助金や助成金を出してくれる自治体もあります。
 
西村)それなら早めの避難もできそうですね。
 
あんどう)台風が来たときに停電するからと冷蔵庫の掃除を始めてしまって、避難が遅れた例もあります。早め早めの避難が大事です。
 
西村)ホテルや実家、親戚の家なども利用して、避難計画を早めに立てて実行していきたいですね。どれぐらい前までに避難を済ませるのが良いですか。
 
あんどう)リスクによりますが、早ければ早いほど良いです。夜になると車で避難するときに、すり鉢状の道に水が溜まっている様子が見えなくなって危険です。天気予報を見ながら早めに行動すること。警戒レベル5になってしまうと逃げ遅れになります。警戒レベル5になったら避難よりも命を守ることを優先してください。
 
西村)警戒レベル5は、既に何らかの被害が起こってしまっている状態ですね。
 
あんどう)水圧で避難ができなくなる可能性もあります。
 
西村)警戒レベル4までには必ず全員避難すること。高齢者、体が不自由な人、障がいのある人、小さいお子さんがいる人や妊婦など避難に時間がかかる人は警戒レベル3(高齢者等避難)の段階で避難を始めた方が良いですね。他の人も警戒レベル3で、余裕を持って避難した方が良いですね。
 
あんどう)警戒レベル3なら、避難の準備もしやすいと思います。ペットがいる人も警戒レベル3で避難する人が多いです。
 
西村)車で避難するときの注意点を教えてください。
 
あんどう)車で避難中に亡くなる人(車中死)が増えています。中には、逃げなかった方が良かったというケースも。水の深さがわからなくなり、橋の手前が崩壊していて落ちてしまった例もあります。アンダーパスでは、前の車が進んでいると安全と思って、着いて行ってしまいますが、すり鉢状になっているところに水が溜まっているので危険です。車のタイヤの3分の1~半分が浸水するとほとんどの車は電気系統がトラブルを起こし、窓が開けられなくなります。水圧でドアも開けられなくなると脱出が不可能になります。
 
西村)逃げたくても逃げられない状況になって、車の中で亡くなってしまう人が多いのですね。
 
あんどう)浸水して車が浮いてしまうこともあります。浸水時に車から脱出できるツールを車内に備えておきましょう。浸水で歩けない状態の道は、車で走ることも危険と認識してください。
 
西村)車から脱出できるツールは、どんなものを備えておくと良いですか。
 
あんどう)先が尖ったトンカチのようなもので、窓ガラスを割ることができるツールがあります。フロントガラスは、簡単に割れないように強固なガラスになっていますが、運転席の横や後ろ、後部座席の窓は割れやすいので、そのようなツールを使って脱出できます。
 
西村)自分の家が浸水や土砂災害の可能性が低い場合は、在宅避難をしても良いのでしょうか。
 
あんどう)リスクが低ければ、外に避難するのではなく在宅避難を選ぶことも可能です。
 
西村)在宅避難の場合は、どのような備蓄が必要ですか。
 
あんどう)食料品などの備蓄以外にも災害時に問題になっているのは電気の備蓄。停電すると、風呂のお湯を沸かすことも、トイレを流すこともできなくなります。スマートフォンの充電がなくなると不安になります。
 
西村)懐中電灯の電池を入れっぱなしにしておくと、電池が消耗して、スイッチがはいらないこともありますね。
 
あんどう)台風のときは、室外で使う発電機は使いにくくなるので、巨大な充電器のようなポータブル電源を備蓄しておくと良いです。台風前に電気を蓄えておくと冷蔵庫も動かすことができます。
 
西村)冷蔵庫も動かせるのですね。
 
あんどう)エアコンは難しいですが、扇風機は動かせます。それ以外にも結構動かせるものがあります。
 
西村)準備しておくと安心ですね。平時に1~2度使っておくことも大切ですね。
 
あんどう)充電器は、普段使わずに1年ぐらい放置していると壊れてしまう場合もあります。普段からスマホやパソコンの充電に使うと良いですね。
 
西村)水の備蓄はどのようにしたら良いでしょうか。
 
あんどう)農林水産省は3日~1週間分、1人1日3リットルの水の備蓄を推奨していますが、それは飲み水のみで生活用水は含まれていません。水害が起こったときは、掃除などにたくさんの水が必要になります。
 
西村)災害用トイレも備蓄しておいた方が良いですか。
 
あんどう)断水してしまったときは、災害用トイレが活躍します。ぜひ備蓄しておきましょう。
 
西村)お風呂の残り湯は、災害時に停電や断水したときに役に立ちますか。
 
あんどう)地震のときは、トイレの配管が壊れている可能性があるので、風呂の残り湯でトイレを流すのはNG。しかし水害時は、配管が壊れていない可能性が高いので、水を流すことはできます。地震のときは、マンションの高層階に住んでいる場合、長い揺れによるスロッシングの影響で風呂の水が溢れてしまうケースもあります。普段からお風呂に水を溜めておくことがかえってリスクになる場合も。0~1歳のお子さんがいる家庭は風呂に水を溜めておくと危険。風呂に水を溜めない方が良い場合もあります。
 
西村)事故の危険性もありますよね。トイレ以外で、風呂の残り湯の活用方法はありますか。
 
あんどう)浄水器できれいにすることも可能ですが、飲み物についてはペットボトルの方が安心。水害時は、掃除や泥を洗い流すときに水が必要になるので、風呂の残り湯が活用できますね。
 
西村)台風シーズンはまだまだ続きます。ほかに伝えたいことはありますか。
 
あんどう)台風は備えられる災害です。事前にハザードマップでリスクを確認して、早め早めの避難を心がけましょう。
 
西村)在宅避難の場合は十分な備えをしておきましょう。家族と相談して、備えて、命を守ることを実践していきたいと思います。
きょうは、台風への備えについて、アウトドア防災ガイドのあんどうりすさんにお話をお聞きしました。