第1291回「夏の危険~猛暑、落雷から身を守る」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

西村)近畿は今月17日にようやく梅雨明けしたとみられ、直後から厳しい暑さが続いています。暑さや夏に起こる災害から身を守るために、私たちはどんなことに注意すれば良いのでしょうか。
きょうは、MBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんにお話を聞きます。
 
前田)よろしくお願いします。
 
西村)今年の夏は暑くなりそうですか。
 
前田)厳しい暑さになりそうです。21日に発表された3ヶ月予報によると、7月末~8月上旬は、平年よりも気温が高くなりそうです。気象庁からも「熱中症に警戒が必要」と注意を呼びかけています。9~10月も平年よりも高めの気温となり、残暑が長く続きそうです。
 
西村)10月も暑いのですか!
 
前田) 今年は暑さとの戦いが長期戦になりそうです。
 
西村)暑い日がずっと続くとなると、熱中症が心配ですね。今年から本格的な運用が始まった「熱中症警戒アラート」とは、どんなものですか。
 
前田)「熱中症警戒アラート」は、最近テレビやラジオなどで耳にすることも増えたと思います。熱中症の危険性が高くなっているときに、みなさんに熱中症を予防する行動を呼びかけるものです。「熱中症警戒アラート」が発表されるときは、お年寄りは、部屋でおとなしく過ごしていても熱中症になってしまう危険性があります。
去年までは最高気温が35度以上の猛暑日になると予想されると「高温注意情報」が発表されていました。「熱中症警戒アラート」は、気温だけではない暑さ指数が発表の判断に取り入れられています。

 
西村)気温以外に何か考慮されているのですか。
 
前田)気温のほかに、湿度、輻射熱(建物とか地面からの照り返しの熱)も要素として取り入れた指数になっています。
  
西村)どれくらいの湿度になると危険になるのですか。
  
前田)「熱中症警戒アラート」の暑さ指数は、湿度がとても重要視されています。気温、湿度、輻射熱は、どれぐらいの比率で重要だと思いますか。
  
西村)一番はやはり気温だと思います。
  
前田)実は一番考慮されるのは湿度で70%。輻射熱は20%、気温は10%です。
 
西村)意外ですね。
 
前田)なぜかというと、湿度は、人間が熱を発散・放出するために重要な要素だからです。湿度が高いと汗をかいてもなかなか蒸発しないので、体の中の熱を上手に外に逃がすことができなくなってしまうのです。同じ気温でも湿度が高い方が熱中症のリスクが高まります。
 
西村)「熱中症警戒アラート」はどのタイミング、どの時間に出されるのでしょうか。
 
前田)1日に2回発表されます。まず前日の夕方の5時に発表され、当日の朝5時にも改めて発表されます。前日の段階では発表されていなかった地域でも、当日の朝に発表されるケースがあるので、最新の熱中症警戒アラートの情報をキャッチしてください。
 
西村)「熱中症警戒アラート」が出された場合、私たちはどんなことに注意したら良いのでしょうか。
 
前田)厳しい言い方になりますが、「熱中症警戒アラート」が出たときは、外出は控えるということが原則です。不要不急の外出は控えましょう。
 
西村)ちょっとランニングに行くのも危険ということですね。
 
前田)できるだけ暑い日中の時間帯を避けてください。やむを得ず外出をするときは、輻射熱を避けるために日傘を使う、帽子をかぶるなどの対策が必要になります。なるべく汗を逃がしやすい、風を通しやすい服装を選ぶことも大切です。
熱中症の4~5割は、屋内で発生しているので家の中にいるときも警戒が必要。できるだけエアコンを使うようにして、快適な温度環境で過ごしてください。

 
西村)寝るときにいつも迷うのがエアコンの温度やつけておく時間。扇風機を使う方がいいのか。前田さんはどうしていますか。
 
前田)我が家は、1歳半の息子がいるので、夜の間26~27度くらいの温度でずっとつけるようにしています。
 
西村)熱中症予防という観点からも、涼しい室内で眠ることが安眠につながりそうですね。
 
前田)疲れが溜まっていると熱中症にかかりやすくなってしまいます。夜の間に体調を整えておくことも熱中症対策のひとつです。朝ご飯もしっかり食べましょう。夜の間に水分を失っているので、朝起きたときにしっかりと水分補給をすることが大事。水分は、飲み物からだけではなく、ご飯や味噌汁などからも取ることができます。
 
西村)早起きをして、しっかり朝ご飯を食べることが楽しい夏を過ごすためのポイントになりそうですね。今年の夏もコロナ禍の中で、外出するときもマスクを付けなければなりません。暑いと息苦しいですよね。
 
前田)一つの目安としては、人との距離が2m以上取れる状況にあれば、なるべくマスクを外してしっかりと深呼吸するのも良いと思います。
 
西村)子どもやお年寄りは、特に熱中症に注意が必要とよく聞きます。具体的にはどのようなところに気をつけたら良いのでしょうか。
 
前田)お年寄りは暑さや喉の渇きを感じにくくなっています。まずは自覚すること。周りの人は、お年寄りやお子さんがどのような状況にあるかを気にして、声かけをしてあげることも大切です。
 
西村)散歩中のペットは、地面が熱いのではと思います。
 
前田)コンクリートは、鉄板のような熱さになっているときがあります。昼間に散歩に行くことは避けるなど、ペットの健康にも気をつけてあげましょう。
 
西村)子どもたちにも水分補給を促した方が良いですよね。
 
前田)子どもは、汗をかく機能が大人ほど十分に発達していないので、特に注意してあげる必要があります。
 
西村)前田さんは、お子さんの熱中症対策で実践していることはありますか。
 
前田)一緒にドライブするとき、車の中は大人が感じている以上に暑いと思うので、チャイルドシートに保冷剤を設置しています。ひんやりグッズをうまく活用して暑さをしのげる工夫をしています。
 
西村)もう一つ夏の危険について考えます。
最近は、天候が変わりやすく、近畿でも急な大雨や雷がありましたね。今月、滋賀県で落雷が原因とみられる死亡事故がありました。ランニング中の男性が橋の上で雷に打たれたとみられています。
私も先日、仕事帰りに急に大雨にあい、雷がゴロゴロと鳴ったので、あわてて建物の中に避難しました。落雷の危険性が高い場所はありますか。
 
前田)雷は高いところに落ちるという性質があります。ビルの上には避雷針がついていますね。雷は木や電柱など高いところに落ちやすいです。広い場所にいるときは、自分が一番高いところになってしまうので危険です。
 
西村)例えばグラウンドとか、ゴルフ場、海水浴場、田畑などですね。
 
前田)そのような場所では雷が自分に落ちるリスクが高くなります。
 
西村)安全な場所はどこでしょうか。
 
前田)頑丈な建物の中。屋内に避難してください。建物が近くにない状況なら車の中も安全です。
 
西村)ゴルフ場でプレイしていて、急に雷が鳴った場合、建物まで距離があったらまず木の下に行ってしまいそう。
 
前田)雷が鳴るときは、激しい雨が降るので木の下で雨宿りしたくなりますが、これは絶対にやめてください。雷が木に落ちて、そこから人に間接的に落ちるということがあります。これを側撃雷といいます。人間は、水分が多く木よりも電気を通しやすいので、人に雷の電流が飛び移ってしまいます。よって、木の麓はとても危険です。木から距離を置いて、なるべく姿勢を低くしてください。地面との接地面積を少なくするために、つま先立ちでしゃがんで身をかがめるというのが、一番良い方法です。雷雲が発生して過ぎ去るまでの30分~1時間ぐらいをやり過ごしてください。

西村)家の近くに小学校があるのですが、先日子どもたちが帰ってくるときに激しい雨が降ってきて。家の軒先に避難させるのは良いですか。
 
前田)これも少し危険な場合があります。雨よけの屋根の部分に雷が落ちてしまうと、側撃雷を受けてしまう可能性があります。できるなら、家の中まで入れてあげる方が良いですね。
 
西村)雷の危険を察知することはできるのでしょうか。
 
前田)雷は、局地的で短い時間に起こる現象なので、いつどこで発生するかを知ることは、今の予測技術では難しいです。でも、雷が発生しやすい状況は知ることができます。気象庁から雷注意報が発表されたとき、天気予報で大気の状態が不安定と聞いたときは、雷のリスクが高くなっていると思ってください。
 
西村)テレビやラジオの情報がない場合、外にいるときに空の様子で知ることもできるのですか。
 
前田)雷の音が遠くで聞こえたり、雲がピカピカ光っていたら危険です。雲と雲の間で電気のやりとりが起きているということなので、自分の近くにいつ雷が落ちてもおかしくない状況です。
雷雲ってみなさんがよく知っている入道雲のことなんです。

 
西村)ソフトクリームのような白い雲ですね。
 
前田)遠くから見るととてもきれいな雲なのですが、積乱雲と呼びます。積乱雲は、遠くから見ると白いのですが、雲の底は真っ黒。黒い雲が近づいてきたら危険ということです。
もう1つは、冷たい風がひゅーと吹いてくるとき。

 
西村)ちょっと不穏な空気を感じるとき、ありますね。
 
前田)「あんなに暑かったのに冷たい風が吹いてきた」というときは、危険と思って屋内に入ってください。積乱雲は、強い上昇気流によってできるのですが、同時に近くでは下降気流がおきています。冷たい風が吹いてくるのは、空の高いところの冷たい空気が引きずり下ろされて、それが地上に吹いてくるから。積乱雲が近づいているサインととらえることができます。
  
西村)①黒い雲(積乱雲)が近づいてきたとき ②雷の音が聞こえたとき、光が見えたとき ③冷たい風が吹いてきたとき
落雷はこの3つに注意しましょう。
厳しい暑さは続いていきますが、今年の夏の雨量はどう予測していますか。
  
前田)これからは、台風による大雨が心配です。8~10月の雨の量は、ほぼ平年並みと予想されていますが、京阪神を含めた中部や南部では、やや雨量が多くなる可能性もあります。雨雲のもとになる暖かく湿った空気が一時的に太平洋側に流れ込みやすくなる時期がありそうです。そんなときに台風が近づいてくると、局地的に被害が出る大雨にもなりかねない。油断せずに台風や天気の情報に注意をしながら、夏を過ごしていただきたいです。
 
西村)お天気が不安定なときは、ステイホームということになりそうですね。
きょうは、MBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんにお話を伺いました。