第1343回「夏休み直前!特別企画 気象予報士オススメの自由研究」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

西村)きょうは、夏休み前の特別企画。MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さんがオススメする、子どもも大人も楽しめる「夏休みの自由研究」をご紹介します。前田さん、よろしくお願いいたします。
 
前田)よろしくお願いいたします。
 
西村)前田さんが子どもの頃は、どんな自由研究をしましたか。
 
前田)子どもの頃はあまり天気に興味がなかったんです。どちらかというと文系で、絵を書いたり漫画で日記をつけたり、工作をしたりすることが好きでした。理系っぽい研究をした思い出は、炭酸飲料の炭酸ガスの研究。飲み物の比重の研究をしたことを覚えています。
 
西村)難しいことをしていますね!小学生ですよね!
 
前田)ただ、飲み物が好きだったんです(笑)。炭酸ガスは二酸化炭素だとわかって、水をストローでブクブク吹き込んだら炭酸水ができるのか実験してみたり。
  
西村)そんな子どもの素朴な疑問を解決するのも自由研究ならではの楽しみですよね。
 
前田)研究のテーマは身の回りにあると思います。その中でも特に身近で生活に直結しているのが天気です。
 
西村)前田さんがオススメする天気の自由研究とは何でしょうか。
 
前田)大人も子どもも楽しむことができる雲の観察です。
 
西村)雲の観察ならお金もかからず、大人も子どもも一緒に楽しめますね。
 
前田)同じ雲は一つとしてありません。毎日時間を決めて雲を観察したり、スケッチしたり、写真を撮ったりして記録を残して、雲の図鑑を作るのはいかがですか。
 
西村)オリジナルの雲の図鑑!ワクワクします。私も雲を眺めるのは大好きです。雲にはいろいろな特徴や種類があると思うのですが、何種類ぐらいあるのですか。
 
前田)雲の種類は細かく分けるとたくさんあるのですが、大きく分けるとたった10種類。十種雲形といって、国際的に10種類に分類されています。積雲、層雲、層積雲、積乱雲、乱層雲、高積雲、高層雲、巻雲、巻積雲、巻層雲です。
 
西村)なんだか難しそうですね...。
 
前田)いくつか聞いたことがある名前もあるかもしれません。
 
西村)積乱雲はよく聞きます。モクモクとした入道雲や雷雲のことですよね。
 
前田)「積」という漢字が名前の中に出てきますが、これは形の特徴を表しています。大きく分けると積雲と層雲の2つに分類できて、積雲がモクモクと厚みのある雲。もう一つの「層」は、高層ビルや地層の「層」のことで、言葉の通り、薄くて広がりのある雲のこといいます。
 
西村)層雲とはモヤっと層になっている細長い雲(HP写真参照)ですね。この雲見たことないです。
 
前田)雨上がりに山の方を見てみるとよく出ていますよ。層雲は高さごとに名前が異なり、低いところは層雲、高いところは高層雲、
もっと高いところは巻層雲という名前があります。富士山よりも高いところ(高度8~10km)にできる雲は、巻層雲や巻積雲と呼んでいます。

 
西村)巻層雲とハロ(HP写真参照)のハロとは何ですか。
 
前田)巻層雲とは薄いベール状の雲です。空の高いところにこのような雲が出ているときは、太陽の周りに光のリングが現れるときがあります。これがハロ。日本語で日傘という意味です。巻層雲が出ているときは、このような光の現象も合わせて見ることができます。雲にはさまざまな特徴があることがわかります。
 
西村)太陽の周りに虹のような輪っかがありますね。これがハロという現象なのですね。気付かなかったです。
 
前田)太陽を直接見ると目を傷めてしまうので、うまく手や建物で隠しながら見てみてください。
乱層雲とか積乱雲など「乱」という漢字がついている雲は、雨を降らせる原因となる雲で、いわゆる雨雲。灰色でどんよりとしていて、いかにも雨を降らせそうな見た目をしています。積乱雲は入道雲のことで、夏によく見られる雲です。夕立やゲリラ豪雨、雷や竜巻を起こす原因にもなる雲です。

  
西村)夏の高校野球の中継を見ていると、いろいろな雲があることに気付きます。このようなモクモクとした積乱雲が出ていて、そのあと雨が降って、野球が一時中断になることがよくありますよね。
  
前田)遠くから眺めている分には、キレイでスケールの大きな雲なのですが、危険な現象をもたらす雲でもあります。積乱雲が連なってかかり続けると「線状降水帯」になってしまいます。
  
西村)線状降水帯の予測情報が6月から可能となりました。情報をチェックしながら備えていきましょう。夏休み期間中に観察できる雲はどれですか。
  
前田)理論上は全ての雲を見ることができます。気象条件にもよりますが、夏によく見られるのは、積雲や積乱雲です。積雲は綿雲という別名もあります。青い空にプカプカと浮かんでいる雲のことです。
 
西村)子どもたちの絵日記によく登場する夏らしい雲ですね。
 
前田)上昇気流が起こっていない朝は、雲がなかなかできません。雲は上昇気流で地上付近にある水分が持ち上げられることによってきることが多いからです。太陽で地上付近の空気が暖められると上昇気流が起こりやすくなります。昼頃から積雲がモクモクと出来上がってくることが多いです。
 
西村)雲の観察をするのは、朝ではなく昼以降の方が良いのですか。
 
前田)昼以降の方がいろいろな雲が現れます。強い日差しで暖められた空気によって上昇気流が強まって、成長していくと雄大積雲という大きな雲になり、それがさらに成長すると積乱雲になります。
 
西村)積乱雲になると雨を降らせてしまうのですね。
 
前田)だから夕立は夕方に起こることが多いのです。
 
西村)なるほど。面白いですね!
 
前田)別々の雲が存在するわけではなく、積雲が成長して積乱雲になっていく。雲にも一生があるんです。長い時間かけて雲の成長の過程を見るのも楽しいですよ。
 
西村)雲を見る時間はどのように決めておくのが良いですか。
 
前田)朝と午後の2回ぐらい決めて見ると良いと思います。
 
西村)夏休みにゆっくり見ることがきるとしたら、前田さんがオススメの時間帯はありますか。
 
前田)朝9時と午後3時。時間を空けて見るのがオススメ。時間があるときは1~2時間続けて雲の様子を眺めてみるのも楽しいですよ。まとまった時間を取れるのも夏休みぐらいだと思うので。
 
西村)夏休みにぜひ楽しんでほしいと思います。
 
前田)太平洋高気圧が日本に張り出しているときは、雲一つない日もありますが、8月後半になると少しずつ秋の気配が出てきて、現れる雲も変わってきます。
 
西村)秋の気配を感じる雲といえば、うろこ雲がありますね。
 
前田)うろこ雲は十種雲形でいうと巻積雲。ひつじ雲は高積雲です。これが秋の雲の代表格で、うろこ雲がひつじ雲に変わると湿った空気が下の方に増えてきているという証拠に。天気が下り坂になるというサインになります。
 
西村)高積雲(ひつじ雲)が見えたら、雨が降ってくるかもしれないのですね。
 
前田)はい。雲の変化を見ることで天気の予測につなげることができます。
 
西村)雲を観察すると天気の予測もできるのですね。今後の私たちの暮らしにも役立ちますね。
 
前田)それを「観天望気」といって、昔の人は普通にやっていたんです。子どもたちにもぜひできるようになってほしいと思います。
 
西村)気象予報士を目指すきっかけになるかも。
 
前田)それはうれしいですね。
 
西村)これをきっかけに天気のことをもっと詳しく知りたいと思う子どもたちもいると思います。
 
前田)そんな人にぴったりの天気の展示が行われています。
大阪・中之島にある大阪市立科学館にて
「大阪管区気象台 気象の科学展~天気予報ができるまで~」という企画展が開催中。
https://www.sci-museum.jp/event/#pl5914
大阪管区気象台は、7月1日で140周年を迎えます。気温や雨量はどのよう測っているのかを、実際の観測機器を見ながら知ることができます。先日私も行ってきたのですが、昔の機械と今の機械を見比べることができてとても面白かったです。子どもたちや大人にも楽しんでほしいと思います。自由研究のヒントになるような天気と身近なもの関係を紹介したコーナーもありますよ。

 
西村)9月4日まで、大阪市立科学館で開催されています。わたしも子どもたちと一緒に行ってみようと思います。いつも何気なく眺めていた雲がこんなに楽しいものだとは。改めて知ることができました。
きょうは、子どもから大人まで楽しむことができる「夏休みの自由研究」について、MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さんに聞きました。