ゲスト:防災士 プラスワン防災代表理事 坂本真理さん
西村)10月に入っても台風の発生が続いています。
きょうは、リスナーのみなさんからいただいた台風対策の疑問について、できるだけお答えしようという企画です。
そこで、頼りになる方をスタジオにお招きしました。防災士 一般社団法人プラスワン防災 代表理事・坂本真理さんです。
坂本)おはようございます。よろしくお願いいたします。
西村)坂本さんは女性の視点を活かした防災に取り組んでいて、プライベートでは2人の男の子を育てるお母さんでもいらっしゃるんですよね。そして息子さんも防災士ということで、以前、親子でこの番組にも出演していただきましたね。
坂本)その節はお世話になりました。
西村)息子さんは、今おいくつになられたんですか?
坂本)あの時は、まだ小学生だったんですけど、今はもう高校2年生です。
西村)時の流れの速さを感じますね。
個人的にも以前、北区在住・在勤の方を対象に行われている「あおぞら防災ママ養成講座」でお世話になりました。私の先生でもいらっしゃいます。改めて「あおぞら防災ママ養成講座」は、どんな講座なんでしょうか。
坂本)小さなお子さんを抱えたご家庭向けの防災講座です。中津の子育て支援施設「あおぞら湯」とタッグを組んで、防災意識を高めていこうということで、親子向けの防災講座というのをしています。
西村)そんなさまざまな活動されている坂本真理さんに、きょうは来ていただきました。坂本さんにリスナーの方からの質問をたくさん投げかけていきたいと思います。
「大阪府寝屋川市・お預かりワンコボランティアのやっちゃん」さんからいただきました。
「我が家は、ほとんどの窓に雨戸がありますが、玄関の扉の明かり取りの窓や、雨戸の上の小さな窓には雨戸がなく、ガラスだけです。ガラスに養生テープを貼るなら、どのような貼り方が良いのでしょうか?」
これ、私も悩みましたよ。養生テープを貼るとき、米印にしたらいいのかと思っていたんですけど、実際にはどうなんでしょう?
坂本)あれはガラスを割れないようにするわけではなくて、割れてしまった時に飛び散りを防ぐものです。あれ貼ってみてどうですか? 私は、ちょっとどうかなと思うんですよ。
西村)どれぐらい守ってくれるのかな?と思いますね。
坂本)台風は「もうすぐ来る」と分かるものですから、事前に対策することができます。その時のためだけではなく、普段からガラスを補強するという意味で、ホームセンターなどで売られている「ガラス飛散防止フィルム」を貼っておくことをオススメします。
西村)私、携帯電話のフィルムを貼るのも苦手なタイプなんです。飛散防止フィルムって、貼る面積が大きいから難しそうやな~と思うんですけど...。
坂本)結構簡単に貼れるものがあるんですよ。100均なんかでも売られていたりします。失敗したらまた貼りかえたらいいですし。自分の家ですから DIYをやってみよう!ぐらいの気持ちでやってみるのも楽しいかもしれないですね。
西村)じゃあ家族と一緒に、「きょうは、みんなで飛散防止フィルム貼ってみよう」と。そういう日を設けるのもいいですよね。
坂本)いろんな柄があるものも出ています。ステンドガラス調になったものとか。そういうものを探して貼るのもいいかもしれないですね。
西村)「大阪府寝屋川市・お預かりワンコボランティアのやっちゃん」さんのお家では、雨戸の上や明かり取りの小さな窓には雨戸がなく、ガラスだけだから、こんな小さな窓にもフィルムを貼ったほうがいいんですか?と聞いておられます。
坂本)すべての窓を完璧に保護するのは不可能ですが、気になるのであれば対応をした方が良いと思います。そこに何か物が飛んで来ないとは限らないので。ただ場所によっては貼ることに危険性があります。高いところに登るのが果たして安全かどうか。そんなことも加味しながら、対策するしないを考えていただければ。
西村)ここ貼った方がいいかな?と相談しながらするのもいいですね。例えば、ガラスの内側にブルーシートやカーテンをひいておくのも有効なんですか?
坂本)それは割れた時にガラスの破片が飛び散らないためなので、「しないよりはした方がいい」というぐらいのレベルと考えておいてください。
西村)では、一戸建てで、雨戸やシャッターがあるなら、まずそれを閉めることですね。
坂本)はい。たまに窓ガラスの中に針金が入っているものがありますよね。そういうものには、わざわざ貼る必要はありません。
逆に貼ることによって強度が低下してしまうこともあります。
西村)あと、家の外に置いてあるものを片付けることも大切ですよね。
坂本)我が家にもベランダにいろいろなものがあります。まずは洗濯の物干し竿を片付けないといけないですね。
西村)植木鉢も片付けとかないといけないですよね。あと自転車とか。
例えば洗濯バサミぐらいだと大丈夫かなと思ったりしますが。
坂本)全部家の中に入れた方がいいです。スリッパとか結構見落としがちですけど、強風にあおられると凶器になりかねないので。できるだけ物は全て家の中に入れてください。
西村)小さなものでも気をつけて、ということですね。
坂本)大げさかなって思うくらいでいいと思うんです。
西村)ガラスが割れてしまうと、風が吹き込んできて、大変なことになってしまいますね。
坂本)大変です。家財が全部やられますからね。
西村)自分の家が物を片付けていなかったために、ご近所さんのガラスが割れてしまうことも考えられますね。
坂本)ガラスが割れるだけではないですからね。部屋の中の家財全てがやられてしまいますから。家財全般の補償ということになると莫大な額になります。その間生活ができないので、生活費もかかってきますよね。
西村)屋根にも被害が出たりするんですか?
坂本)屋根も飛びますよ。完璧に備えることは難しいかもしれないですけど、「これぐらいは大丈夫かな」っていう油断は非常に危険です。なるべく被害を減らすように、洗濯バサミひとつでもしまっておくという心配りが必要だと思います。
西村)では続いてのメールです。
前回は大阪市北区役所が制作した「台風がキタ!」という対策本の漫画をラジオドラマにして放送しました。その感想です。
「奈良県橿原市・ゆきママ」さんからいただきました。
「『内水氾濫』(※下水の処理能力を超えて水が溢れてくるということ)初めて聞く言葉です。ラジオを聞きながら、私も3年前の夏のこと思い出していました。突然のゲリラ豪雨で、ご近所のお宅のガレージにあるマンホールの蓋がボコボコと浮き上がっていました。まさにこの事ですよね」
内水氾濫というのは確かに耳慣れない言葉ですが、これはよく起こることなんでしょうか?
坂本)頻繁に起こるというわけではないですが、都会はアスファルトが敷き詰められていますので、水はけが非常に悪いです。水はけを良くするために、都市部では対策が講じられていますので、かなり少なくはなってきています。
西村)内水氾濫でトイレが溢れるのを防ぐために、先週放送したラジオドラマでは、「水のう」をつくって、それを便器の中に入れて、蓋を閉めて重しを乗せておくというのがあったんですが、「水のう」というのはどういうもので、どうやって作ったらいいんでしょうか。
坂本)河川敷なんかでよく水の流れを止めるために、庭の土を入れて「土のう」を作ったりしますけれど、その土の代わりのものが水であるというイメージを持っていただければいいです。
西村)都会には土がないですよね。「土のう」はどうやって作ろうか?と思いますね。
坂本)その代わりに水で作ろうということですね。
西村)作るとしたらゴミ袋でいいんですか?1枚でいいんですか?1重?2重?
坂本)何重かにしておいていただければと思います。ゴミ袋はペラペラのものから、結構厚手のものまでいろいろあります。水は入れたら重くなりますので、くくれる程度に水を入れて、袋を2重3重にしてください。
西村)ラジオドラマでは、トイレが溢れるのを防ぐために「水のう」を使うということだったんですが、トイレだけでいいんですか?
坂本)水が上がってくるところは、できるだけ対策をしておいたほうが良いと思います。
西村)ということは、キッチンも...
坂本)下水につながっているところですね。
西村)あとは洗濯機の排水部分、お風呂など、結構ありますね!
都市部では、そういうところに「水のう」を使うといいんですね。部屋の中で使うイメージはなかったのですが。
土が使えるところにいる人は、土でもいいんですね。
坂本)はい。水が上がってこないように、食い止められるものであればいいです。水の圧力に耐えられるものなら大丈夫です。
西村)土って結構処分が大変そうですよね。
坂本)郊外だと、庭から土を持ってきて、庭に戻してということができるのかもしれないですけど。都会なら、「水のう」がいいですね。
西村)みなさんのご自宅の環境に合わせて使い分けたら良さそうですね。
「水のう」の話で、もう1通。
「香川県高松市・二代目みちのすけ」さんからです。
「洋式トイレが溢れるのは防げると思うんですが、和式トイレもやった方がいいんですか?防ぎようがないんでしょうか?」
坂本)洋式トイレでも蓋をはねのけるぐらいの水圧で上がってきますから、和式トイレの水のあるところに重しを置いて、下水が上がってこないようにすれば良いのではないでしょうか。
西村)洋式トイレの蓋が上がってくるぐらいの水圧があるんですね。和式も洋式も一緒ということですね。
台風対策で、ほかに坂本さんがみなさんに伝えたいことはありますか?
坂本)台風は早めに逃げることができるんです。地震や火事はいつ起こるかわからないけど、台風は近づいてくるのが分かるので、早めに逃げるなり準備するなりできるんです。是非早め早めの判断をお願いしたいです。
西村)大きい台風なら自主避難場所が開設されますよね。でも自主避難場所って食べ物などを持っていかないとダメって話を前回のラジオドラマで知って、びっくりしたんです。
坂本)避難所って地域の人たちが運営していかないといけないので、地域が活発なところは、何回も訓練をしますけど、「避難所って役所が開けるんでしょう?」というところで止まっている地域もたくさんあります。そういうところは備蓄もないです。場所があるから逃げたけれど、何もないということになります。
西村)どんなものを持っていったらいいんでしょう。
坂本)開けてすぐ食べられるカロリーメイトとか一口サイズの羊羹とか。
西村)私なら小分けになっているチョコレートのファミリーパックを持っていって、みんなに配ろうかな。お子さんがいらっしゃる人に渡したくなるんですけど、それはどうですか?
坂本)チョコレートは2点問題がありますよね。今の季節ならいいんですけど、夏はドロドロに溶けちゃいますよ。あともう1点はアレルギーの問題。お子さんだけじゃなく大人でも食品アレルギーがある人がいて。一人一人に聞くのは大変です。断ったら申し訳ないと思って食べて体調悪くするとたいへんですよね。
西村)そういったことも気をつけないといけないですね。自分たちが食べるものをまずは準備すること。小さいもののほうが、持ち出し用リュックにも入れやすいかも。
坂本)あとは、地域の避難所の整備をしっかりしていくことです。
同時に自分の避難所を作るというのも大切なところですよね。例えば自宅避難、友達の家、実家など。両軸でやっていく必要があると思っていて。どちらか一つを頑張るということではないと思うんですよね。
西村)自宅避難、あるいは友達や親戚の家に避難させていただくときは、どんなものを持っていったら良いでしょうか。
坂本)まず考えられる被害は停電。できるだけ充電できるものは充電をしておく。
西村)例えば携帯電話とか。
坂本)今、モバイルバッテリー、持ち運びできる蓄電池なんかもたくさん売られています。
西村)携帯電話以外にも使えるものですね。そういうものがあったら便利ですね。
坂本)あと、停電したら困るのは、冷蔵庫の中をどうするかという問題。
西村)3年前の台風21号で、我が家も停電してアイスクリームが溶けるので、近所に配りました(笑)。
坂本)結構、切実な問題なんですよね。
西村)何から食べていったらいいんでしょう。
坂本)腐りやすいものですよね。
西村)あと常に常温のものをローリングストックしておかないとダメですね。
坂本)カセットコンロやカセットボンベは役立ちますので、用意しておきましょう。
西村)そういえばドラッグストアにこの前行った時、カセットボンベが安くなっていたんですよ。そういう時に買っておいたら良いですね。
坂本)例えばお友達のお家で、避難パーティーみたいな形で楽しんで避難をするというのも一つですよね。
西村)いろいろ缶詰パーティーしてみたりとか。みんなで一緒に対策をしていくっていうのも大事になってきますね。
<エンディング>
西村)きょうは坂本さんにもエンディングにお付き合いいただいてお送りします。
先週の感想が届いています。こちらもご紹介しましょう。
「神戸市・頑張れ!市工健児」さんからです。
「災害時の対応を聞いて、現代人っていかにスマホに依存しているということがよくわかりました。ライフラインが災害後にすぐに使えないのは、この番組を聞いているから百も承知です」
常に心がけていただいているんですね。
台風が過ぎ去った後は、停電していても電気がすぐにつくと思っていたけど、実は結構長引くっていうこともありますよね。
そしてスマートフォン頼りになってしまうというのは分かるなあ。
坂本)分かりますね。災害じゃなくてもスマホを忘れた日は、一日落ち着かないですよね(笑)。
西村)台風21号が一昨年来た時も、懐中電灯を用意していたのに、寝室に置きっぱなしにしていました。スマートフォンは明かりを照らしたり、ラジオを聴いたりといろんなことに使えるんですけど、充電というのはポイントですよね。坂本さんは、モバイルバッテリーを用意しておく以外に、何かご自宅で対策をされているんですか?
坂本)ポータブル蓄電池を持っているのと、もう一つはベランダで自分発電をしています。
西村)どういう風に?
坂本)簡単なソーラーパネルの発電機を置いています。
西村)ソーラーパネルというと、屋根に大きなソーラーパネルが付いているイメージで、お金持ちの家やなーって思ったりして、我が家は高額でできないなと思っていたんですけど、ベランダでできるんですか!?
坂本)ソーラーパネルは1枚からでも Amazon なんかで買えます。
西村)1枚おいくらぐらいですか?
坂本)値段は、ワット数によって変わるんですけど、1万円ぐらいです。
西村)それなら我が家でも用意できそうですね。何に使えるんですか。
坂本)ワット数で変わってくるんですけど、スマートフォンやパソコンの充電であればワット数はかなり低いので、パネル1枚の発電で十分賄えます。
西村)そういう風に備えることもできるんですね。
坂本)ソーラーパネルのほかにバッテリーコントローラー、インバータなどいろんな機械が必要なんですが、楽しみながらつくってみると、いざという時の安心感につながります。もちろん台風の場合は、ベランダものを家の中に入れるのが大前提にはなるんですけれども。過ぎ去った後に出して発電をすることは可能です。
西村)バッテリーと言うと、自動車のバッテリーも思い浮かんだんですが、使えるんですか?
坂本)私は軽自動車用のバッテリーを使っています。
西村)いろんなことに使えるんですね!坂本さんならではのアイデアをお聞きしました。ありがとうございました。