オンライン:一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事 吉澤武彦さん
西村)地震や台風のニュースで車が水没したり、ひっくり返ったりしている映像を見たことありますよね。1人に1台車を必要としているような地域では、災害で車が使えなくなると死活問題です。買い物や役所への手続き、通院などすべての日常が滞ってしまいます。
きょうは、寄付された車を被災地へ届ける活動をしている一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事 吉澤武彦さんに被災地でのカーシェアリングの重要性についてお聞きします。
吉澤)よろしくお願いいたします。
西村)被災地に車を届ける活動を始めたきっかけは。
吉澤)東日本大震災です。石巻だけで約6万台の車が被災しました。車がなくなって困っている被災者に車を集めて仮設住宅に届ける活動から始めました。元は、阪神・淡路大震災のボランティア団体「神戸元気村」代表の山田和尚さんにカーシェアリングの提案をしていただいたのがきっかけです。当時は大阪に住んでいて、現地で炊き出しの手伝いをしていました。当時はペーパードライバーで車のことは全然わからなかったのですが、車を集めたら何とかなると思って。会社四季報を見て「車ください」と自転車で会社回りをしました。大阪・神戸で車を集めるところから活動を始めて。何とか1台車を届けることができ、そこから今まで続けています。
西村)そこから11年も続けているのですね。車はどれぐらいまで水に浸かると動かなくなってしまうのでしょうか。
吉澤)車によって異なりますが、エンジンまで浸かったら難しいです。車の中に水が入ると状態も悪くなるので、後々トラブルが出ることも。
西村)車を届ける支援は必要ですね。実際に車を届けた人からはどんな声がありましたか。
吉澤)とても喜んでもらっています。車がなければ、買い物、通院、被災に関する手続きをするのにも困ります。自宅から離れたところに避難している場合も多いので。片づけにも仕事にも行けません。小さいお子さんや高齢の両親がいる場合もあります。車がないと何もできないんです。車を届けると「助かった」「前に進めます」という言葉をもらっています。
西村)車がなければ、炊き出しをしている場所にも行けず、お腹もすいて片付けもできない...。日頃の生活が全て止まってしまいますね。レンタカー屋さんも被災している可能性もあります。
吉澤)「家もおじいさんも流されてつらいことばっかりだったけど、やっといいことがあった」とおばあさんに言われたときは、胸が熱くなりましたね。車は、前に進むきっかけになるんです。
西村)被災地でのカーシェアリングがもっと広がると良いですね。カーシェアリングの具体的な方法について手順を教えてください。
吉澤)SNSやメールを発信して車の寄付を募ったり、企業と協定を結んで協力を依頼したりしながらまず車を集めます。次に集まった車を現地に運びます。日頃からFacebookなどで募集している運搬ボランティアに運搬してもらいます。まとまった台数の場合は、陸送会社に依頼して運ぶことも。自治体に協力してもらって、貸し出しのための拠点を確保して、現地に到着した車を貸し出していきます。寄付された車を協会の名義に変更し、保険に加入。その後無償で貸し出すという流れです。
西村)被災者は無料で車を貸し出してもらえるのですね。企業や個人が手放そうと思っている車を寄付することもできるのですか。
吉澤)はい。そのような車を集めて活動しております。
西村)運転手としてボランティアに参加することもできるのですね。
吉澤)体力を使う作業が難しい人でも運転ができたら誰でもボランティア活動ができます。
西村)車を貸してもらえる期間はどれぐらいですか。
吉澤)被災地の状況、災害の状況にもよりますが、3ヶ月~半年ぐらいです。ふるさと納税での寄付やクラウドファンディング、民間の助成財団の支援でやりくりしているので、利用者の負担はガソリン代のみです。
西村)ガソリン代のみということは、レンタカーと同じような仕組みですね。
吉澤)期間限定の無料のレンタカーということです。
西村)車を貸してほしいときは、どのような手続きが必要ですか。
吉澤)まずホームページか専用の予約電話番号から予約をしてください。車の準備ができたらお知らせして、最寄りの拠点で貸し出す流れです。
西村)何か必要なものや条件はありますか。
吉澤)自治体から発行してもらった罹災証明など、被災したことが証明できるものを用意してください。時間がかかる場合は、被災した車の写真を見せてもらえれば貸し出すことができます。
西村)被災直後の写真は撮っておかなければいけませんね。地域によっては家族1台ではなく、1人1台車を持っている人もいると思います。
吉澤)車が潤沢に集まればそのようなニーズにも応えていきます。最初は車が不足するので、2世帯に1台ずつ届けて、車が集まってきたら追加で貸し出しています。
西村)最近では、静岡でも活動しているんですね。
吉澤)10月11日から静岡市内に拠点を設けて無料の貸し出し支援を開始しました。報道以上の被害があり、特に車の被災が多いです。
西村)被害に遭った車は、静岡県内でどのぐらいのなのでしょう。
吉澤)家の浸水件数は行政が調べて被害の認定をしていくのですが、車の被害集計はされていなので正しい数字はわかりません。かなりの車が被災していることは間違いありません。
西村)台風で大きな被害を受けた静岡県は、日頃から車で生活する人が多い地域。現時点で何件ぐらいの申し込みがあるんでしょうか
吉澤)今週始めたばかりで、既に160件の申し込みがあります。でも準備できている車は、今のところ40台ぐらいで全然足りていません。7月から3ヶ月連続で大きな水害があり、宮城県や新潟県に加え、静岡でも対応しています。災害が起こりすぎて車が足りず、静岡県内の車屋さんも被災しているので、業界の協力も難しい状況。寄付を呼び掛けて集めていくしかありません。ぜひ関西方面のみなさんからも寄付をお願いします。車を手放してもいいという人がいたら、協力してもらえたらありがたいです。
西村)寄付する車の条件はありますか。
吉澤)車検が付いていて、走行に支障がない車、使途を一任してもらえる条件で車を募集しています。車の車種は問いません。軽自動車、普通乗用車、貨物車両など全て募集しています。
西村)どのような順番で貸し出しているのですか。
吉澤)詳しくはお伝えできませんが、事前にヒアリングをしています。緊急度の高い人から貸し出すようにしています。
西村)被災状況や家族構成にもよるのですね。静岡県内に限って今週から募集をかけて、160件に達しているということは今後も増えていきそうですね。
吉澤)静岡市内だけではなく浜松や磐田も被害が大きく、協力してほしいという連絡が今朝入ってきました。でも車が足りず、対応できていない状況です。
西村)被災していない私たちができることは、寄付できる車があれば寄付をする、運搬ボランティアとして参加する、ふるさと納税などの募金という形で協力するということ。最後にリスナーに伝えたいことやメッセージがありましたらお願いします。
吉澤)車を手放すときに、下取りに出したり、売却したり、廃車したりすると思いますが、寄付するという選択肢があることも頭の片隅に置いてもらえたらありがたいです。愛着を持って乗ってきた車が生き生きと人を助け続けます。手放すときには僕たちのことを思い出してもらえたら。車を失うととても苦労するっていうことも認識しておいてください。台風など予測できる災害の場合は、事前に車を避難させるという備えを心がけてほしいです。
西村)災害の備えの一つとして、車を早めに避難させるということも心に留めておきたいと思います。
きょうは、日本カーシェアリング協会 代表理事 吉澤武彦さんにお話を伺いました。