オンライン:防災士 フリーアナウンサー 奥村奈津美さん
西村)ゴールデンウィーク、「今年は緊急事態宣言が出ているのでどこにも出かけない」という人が多いのではないでしょうか。このタイミングを生かして、家族で防災を考えてみませんか。
きょうのテーマは「防災散歩」です。著書の中で「防災散歩」を提唱しているフリーアナウンサーで防災士の奥村奈津美さんにお話を聞きます。奥村さんは2011年3月11日の東日本大震災のとき、宮城県の放送局でアナウンサーをしていて、その経験から、10年間、防災をライフワークに取り組んできました。奥村さん、おはようございます。
奥村)よろしくお願いいたします。
西村)奥村さん、「防災散歩」とは何でしょうか。
奥村)今災害が起きたらどうなるかを想像しながら、街を歩いてみることを「防災散歩」と呼んでいます。
西村)どんなところを歩けば良いですか。
奥村)災害はいつどこで起きるかわかりません。普段よく歩く通学路、友達の家まで、災害時に避難する場所までなど...身近な道を歩いてみてください。
西村)「防災散歩」するにあたり、準備することはありますか。
奥村)ハザードマップを用意してください。これは無料でもらえる防災グッズなのですが、7割の人が活用していないというアンケート結果も。ハザードマップとは、その地域にあるリスクを"見える化"してくれる地図です。
西村)ハザードマップはどこで入手できるのでしょうか。
奥村)多くの自治体が印刷物を配布しています。インターネット上で公開している自治体もあります。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で住所を入力すると全国のマップを確認できます。
西村)ハザードマップのどこをチェックしたら良いですか。
奥村)洪水マップのチェックポイントについてお話します。洪水には、川が氾濫する洪水と下水が溢れてくる内水氾濫があります。それぞれのリスク、両方のリスクを示したマップがあるので確認してみてください。
最初に確認していただきたいのは、自宅の浸水想定。ちなみに毎日放送さんの場所を大阪市北区のハザードマップで確認してみたところ、淀川が氾濫したら3m ~5m浸水すると表示されていました。
西村)恐ろしいですね...。
奥村)マップには川が氾濫したらどうなるのかが色分けされています。色がついてないところは、条件では浸水想定がないということになります。色の判例が地図の端に載っているので、比較しながら自分の家が何色に塗られているのかを確認して、どれぐらい浸水するのかを見ておいてほしいです。
西村)自宅以外の場所に「立ち退き避難」する必要があるのは、どんな人ですか。
奥村)家屋倒壊等氾濫想定区域、土砂災害警戒区域、寝室水没の家屋の住人です。この3つのうちどれか1つでも当てはまる人は、自宅にとどまっていると命が守れません。
家屋倒壊等氾濫想定区域は、簡単に言うと、川が溢れてきたときに、水の勢いで木造家屋が流されてしまう地域。家ごと流されてしまう危険なエリアです。ハザードマップで見ると、点線で囲まれていたり、斜線がついていたり、赤い枠になっていたりします。自治体によって表記方向が異なります。
土砂災害警戒区域は、土砂災害の恐れがあるエリアです。土砂災害のハザードマップを見ると示されています。
寝室水没は、1階が水没する想定になっていて、1階にしか寝る場所がないという場合や、体が不自由ですぐに2階に避難できない場合。夜寝ている間に水が来ると逃げ遅れになってしまうので、寝る前に避難することが大切です。
3つのうちどれか1つでも当てはまる人は、自分は危険なエリアに住んでいるということを認識して、危ないときは明るい内に避難するなどの備えが必要です。
西村)自宅が浸水区域でない場合は、「防災散歩」をする必要はないのでしょうか。
奥村)今、地球温暖化の影響もあって豪雨が増えていますよね。50m以上の降水確率がすごく増えていて、降り方も変わってきています。このマップの通りに浸水するとは限りません。ハザードマップは、1000年に一度の想定となっていますが、最新のものになっていない場合も。想定外の被害が起きたこともこれまでにありました。最新のものかという確認が必要です。さらに、指定されている河川は、大きな川がメインで、小さい川や用水路は反映されていません。ハザードマップで色が塗られていない(浸水想定がない)から安全というわけではないのです。自分の家が浸水しそうでなくても、「防災散歩」をしていただきたいです。
西村)大切なことですね。具体的にどんなところを歩いてチェックすれば良いですか。
奥村)普段よく行く場所は、必ず子どもと一緒に「防災散歩」をしてほしいですね。自宅から避難場所、保育園や学校、公園、友だちの家へのルートなどです。ハザードマップを見ながら歩いてください。普段歩いていると気付かないのですが、昔、川や池があったところなども示されていて確かめることができます。
西村)土地の歴史までわかるのですね。
奥村)ハザードマップにはいろいろな情報が詰め込まれているので、新しい発見もあると思います。
西村)自転車だと通り過ぎてしまって気づかないこともありますね。
奥村)特に注意して見ていただきたいのが、アンダーパス(道路や線路の下を道路がくぐっている道)です。水は、低いところに溜まっていく性質があるので、早い段階で水が溜まってしまいます。車が立ち往生してしまうニュースを見かけたこともあると思います。そういうところは通らないようにしましょう。
蓋のない側溝も危険です。水没してしまうと場所がわからなくなってしまうのでチェックしておきましょう。用水路もあらかじめ見ておくと良いです。用水路からの水の流れに巻き込まれたり、足を取られたりすることがあるので、平常時に見ておくことが大切です。
西村)地震のリスクを想定した「防災散歩」もできますか。
奥村)ぜひやってください。特に津波のおそれがある地域。地震の揺れの影響で、数分で津波が来てしまう想定のところもあります。「家にいたら、ここの高台」「通学中や公園にいたら、ここの防災ビル」という感じで、避難場所を決めておきましょう。そこまで走って何分かかるのかを親子でやってみてください。想定にとらわれないで、想定よりも大きな津波が早く来るかもしれないと思って最善を尽くしてほしいですね。
西村)大切なことですね。
奥村)大阪北部地震では、ブロック塀の下敷きになって命を落とした人もいました。町にはまだブロック塀がたくさんあります。ブロック塀がある場所をどうしても通らなくてはいけないときは、反対側を通るなど工夫をしましょう。同じことが起きないように、子どもたちにブロック塀は危険だということを伝えてほしいです。
西村)信号待ちのときに気づいたら、ブロック塀の横にいたということがありました。ほかに注意すべきポイントはありますか。
奥村)落ちてくるものや倒れてくるものに注意してください。古い看板は落ちてくる危険があります。倒れやすい自動販売機もあります。古い橋は地震の揺れで落ちてしまう危険があるので、渡らないようにしましょう。細い路地は周りの家の倒壊が道を塞いで通れなくなることも。土砂災害警戒区域は、地震でも崩れる恐れがあるので通らないようにしましょう。危険な場所をどう回避するかまで考えて歩いてみてください。
西村)普段、ぼーっと散歩をしていると、考えていなかったりしますね。
奥村)東日本大震災のときもビルの上からガラスや看板が落ちてきました。地震が起きた後、どう行動するかを考えておかないと、いざというとき、とっさに判断できないと思います。子どもたちにも伝えておく必要があります。
西村)災害時に役立つものも見つかるかもしれませんね。
奥村)公衆トイレや災害時に無料で使える自動販売機、公衆電話などもチェックしてください。チェックしたことを子どもと一緒にマップに書いて玄関に貼っておくのも良いですね。危険な場所ばかりではなく、役立つものもチェックしておくと良いです。
西村)今までの災害で役立ったことはありましたか。
奥村)ある被災地では、夏場に停電になり被災者が熱中症になる危険がありました。そんなときに地元のお魚屋さんの氷で体を冷やしたといいう話を聞きました。役立つものがある場所を把握しておくことも大事ですね。
西村)最後に「防災散歩」についてリスナーに伝えたいことはありますか。
奥村)ある福祉施設では、避難ルートを毎日の散歩コースにしていたそう。実際に災害が起きたときに、障がいがある子どもたちがスムーズに逃げられたというなお話を聞きました。「防災散歩」は、特別なものではなく、毎日の生活でより安全なルートを使えるようにするための下調べとして行うもの。安全なルートが見つかったら、それを毎日の通学のルートで使うなど体にインプットしていってほしいです。
西村)防災を日常に、ということですね。子どもはもちろん、大人も1人で散歩するときや犬の散歩中に避難ルートを通るのもいいですね。ゴールデンウィークは天気が良くない日もありますが、これからは気持ちのいい季節がやってきます。みなさんぜひ「防災散歩」をしてみてはいかがでしょうか。
きょうお話いただいたことは、奥村さんの著書『子どもの命と未来を守る!防災新常識」』という本に詳しく載っています。
奥村)できることを優先順位順に書きましたので、一つ一つ取り組んでいただけたらうれしいです。
西村)かわいいイラストとともに要点がまとめられているので、とても読みやすいです。さまざまな専門家の方のインタビューもあって視野が広がりました。
改めて奥村さんの著書『子どもの命と未来を守る!防災新常識」』は辰巳出版から税込1430円で販売されています。
奥村さんは無料で「オンライン防災訓練」も頻繁に開催しているのですね。
奥村)週に1回ぐらい開催しています。もしよければお気軽にご参加ください。
西村)詳しくは奥村奈津美さんのホームページをご覧ください。