マンション防災士 釜石徹さん
西村)きょうは、災害時の停電対策についてお送りします。マンション防災士の釜石徹さんにお話しを聞きます。
釜石)よろしくお願いいたします。
西村)台風で長期の停電が起こる可能性はありますか。
釜石)ここ数年、大きな被害が出ています。2018年9月の台風21号では1300本以上の電柱が折損し、延べ220万軒が停電。完全復旧まで16日かかりました。2019年9月の台風15号では、千葉を中心に93万戸が停電になり、2週間以上停電になりました。
西村)台風による長期の停電は頻繁に起きているのですね。大きな地震や津波のときの停電はもっと長期になりますか。
釜石)被害状況によりますが、発電所が何ヵ所も同時に被害を受けたときは、長期の停電になる可能性があります。
西村)停電したら自宅は不便なことも多いので、避難所に行くマンション住民もいるのでは。
釜石)耐震性のあるマンションに住んでいる人は、停電時に自宅で生活できる備えをしてほしいです。避難所は地震倒壊や火災で家を失った人が一時的に利用する場所。マンション住民は建物が無事なら避難所には行かないようにしましょう。
西村)一戸建てに住んでいる人も建物が無事なら避難所には行かない方が良いのですね。停電に備えて準備しておくべきものを教えてください。
釜石)普段通りの生活をするのは難しいですが、まず情報を得るための手段としてラジオが必要です。充電式や乾電池式が良いです。また、急に停電になったときには、懐中電灯と合わせて自動点灯ライトを用意しておくと良いです。
西村)それはどのように使うのですか。
釜石)普段はコンセントに差し込んでおきます。停電時にコンセントから抜いたときに点灯します。廊下や寝室や居間に設置しておけば、夜中に急に停電になっても明かりがつきます。
西村)避難するときも明かりがあれば安心ですね。
釜石)スマホを枕元に置いている人が多いと思いますが、直下型地震が来て揺れたら、どこかに飛んでいってしまうかもしれません。真っ暗な中で第一歩を踏み出すときに、停電時自動点灯ライトがあれば、それを頼りにすることができます。あとモバイルバッテリーも必要です。
西村)携帯電話の充電は一番気になるところですね。モバイルバッテリーはいろいろな種類がありますが、どのようなポイントに気をつけて選べば良いですか。
釜石)まず、自分が使っているスマホのバッテリー容量を知ることです、これは製品名をネットで調べればすぐわかります。私のスマホのバッテリー容量は4500mAなのですが、フル充電しておけば、約1日使えます。私が持ち歩いているモバイルバッテリーは、5000mAなので、ほぼ1回フル充電できます。夕方に電池がなくなってきたときに、災害が起きて充電ができなくなると困りますが、モバイルバッテリーを持っておけば、さらに1日使えますよね。まず自分が使っているスマホのバッテリー容量を調べて、フル充電で何時間ぐらい持つのかを調べてみてください。
西村)何気なくスマホを使っていたら、いつの間にか充電が切れていることがあります。ついつい動画を見てしまうとすぐ減ってしまいますよね。
釜石)災害時に充電ができなくなってしまったら、動画やFacebookやインスタグラム、ネット検索などはやらないようにしましょう。
西村)周りの友人や親戚にSNSで状況を知らせたり、近所に住んでいる友人とメールで連絡を取ったり。子どもは大好きなアニメの動画を見ると落ち着くのでスマホはかかせません。
釜石)充電を十分にするための大きなモバイルバッテリーは値段も高く、持ち運びも難しい。1日分の充電ができるモバイルバッテリーを携帯しましょう。災害時の連絡方法は、携帯電話の番号にメールをするショートメッセージにすると良いです。ショートメールなら充電もあまり減りません。
大きな地震があったときは、広域停電になる可能性があります。都市部では、各携帯電話会社やNTTの中継所に災害用の予備バッテリーが24時間分用意されています。地方でも、少なくとも6時間分は用意されています。広域停電になっても、ショートメッセージは利用できるのです。
西村)中継基地のバッテリーが持っている間はショートメールが使えるのですね。
釜石)もちろん通話もできますが、たくさんの方が使うので電話はつながりにくくなります。LINEなどのインターネットアプリが使えるかは、運営している会社の予備電源の有無によります。
都市部の中継所の予備電源は24時間使えるので、その間にショートメールで連絡を取り合えるので、覚えておくと良いと思います。
ショートメッセージでまず連絡を取り合って、その後繋がらなくなったら、NTTの「災害伝言ダイヤル171」で家族間の連絡を取るようにしましょう。
西村)私も実際に「災害伝言ダイヤル171」を使ってみたことがあります。電話をするとまず音声案内が流れます。音声案内に従って自分の電話番号を入力して、その後自分のメッセージを録音。人のメッセージを聞きたいときは、同じく171に電話して、安否を知りたい人の番号を入力して、メッセージを聞くというものですね。
先日、体験利用の日(1日・15日)にスタッフと利用してみました。ディレクターが録音したメッセージを聞くために電話をしたのですが、ディレクターが自宅の電話番号で録音したのか、携帯番号(会社用・プライベート用の2台)で録音したのかがわからず、つまずいてしまったんです。
釜石)「災害伝言ダイヤル171」は、いろいろな人と連絡をとるために使うほどの容量はないので、家族間の連絡用とされています。
西村)家族用なのですね。伝言が積み重なっていくので、誰のメッセージかわからなくなると思いました。
釜石)家族でも固定電話や各自の携帯電話があるので、あらかじめ誰の携帯電話の番号にするのかを決めて、その番号を頭で覚えるのではなく、紙に書いて持ち歩くと良いと思います。子どもにも教えておきましょう。
西村)確かに番号って覚えられないですよね。紙に書いてなくさないようにしなければいけませんね。
釜石)身分証明書や子どもの生徒手帳、大事な写真などと一緒に番号を控えると良いですね。さらに伝言に「1時間後にまた連絡します」と付け加えると良いです。1時間後にまた安否を確認することができます。
西村)別の場所に避難することもあるかもしれませんし、なにより安心しますね。
釜石)遠方の親戚がすぐに連絡を取りたいときでも番号を教えておけば、安否を確認できます。いざというときに使えるように、練習することも必要。毎月1日・15日は「災害伝言ダイヤル171」が24時間使えるので、ゲーム感覚で使ってみると良いと思います。
西村)「災害伝言ダイヤル171」は、無料で使うことができて、携帯電話だけではなく公衆電話でも繋がります。電話ボックス内には、「災害伝言ダイヤル171」の案内パネルもあります。10円玉をいれずに、受話器をあげて171を押せばつながるのですね。
釜石)110番、119番と同じです。子どもも1度教えてあげたら良いと思います。最近は公衆電話が少なく、テレフォンカードや10円玉を入れることも知らないと思います。電話の使い方を教える意味でもぜひ。
西村)停電となるとエレベーターが止まりますよね。どのような備えをしたら良いですか。
釜石)エレベーターが使えなくなり、階段の昇り降りが大変になります。物も運べなくなります。階段の昇り降りをしなくてもいいように、会社や買い物に行く回数を減らせばよいわけです。おうちで過ごすとことがベストです。1回もドアから出ずに、1週間ぐらい過ごすことを目指して備えましょう。
西村)1週間一歩も外に出ないということは、水も食料も必要ですよね。
釜石)トイレ対策も必要。ただ単にたくさん買い揃える方法ではなく、災害時しか食べない食料は備蓄をしないなどいろんな対策があります。
エレベーターの閉じ込めにも気をつけなければなりません。マンションやビルの管理者は救出方法なども対策をしておかなければならない。1~4階の人は普段からエレベーターを使わずに階段を使うことも防災対策になります。
西村)体力作りにもなりますね。
釜石)健康のためにも良いですし、危険も回避できます。上の階の人はエレベーター内に閉じ込められることを覚悟して、早く救出されるようにマンションで体制を整える。物の運び入れをできるだけ少なくするように、籠城をする覚悟で普段から食材を多めに買い込んでおきましょう。
西村)おうち時間が長い今、家族で考えておきたいですね。
きょうは、災害時の停電対策について、マンション防災士の釜石徹さんにお話を伺いました。