ゲスト:一般社団法人「応援カレンダープロジェクト」 代表 水戸晶子さん
電話:一般社団法人「リボーン」代表 後藤由美子さん
西村)きょうは来年のカレンダーのお話です。
ご紹介するのは「12人の絵本作家が描く応援カレンダー2021」。
長谷川義史さんや、田島征彦さん、はたこうしろうさんら第一線で活躍している絵本作家12人が描いた絵がカレンダーになっています。
このカレンダーは、原発事故の影響を受けやすい子どもたちを応援するためのもので、カレンダーの収益は毎年、原発事故から子どもたちを守るグループに寄付されています。
私たちが笑顔になるだけではなく、その先の子どもたちの笑顔につながるという素敵なプロジェクトです。
今日はこのカレンダープロジェクトの仕掛人「一般社団法人 応援カレンダープロジェクト」代表理事 水戸晶子さんをスタジオにお迎えしました。
水戸)よろしくお願いします。
西村)「12人の絵本作家が描く応援カレンダー」のプロジェクトを、なぜ始めようと思われたんですか。
水戸)このカレンダーに毎年参加してくださっている絵本作家の市居みかさんが、2011年の原発事故直後に手描きのかわいいイラストのチラシを作って、それがいろいろな人の手に渡って、縁があって私の手元にもまわってきたんです。
その1枚のチラシがきっかけで、一居みかさんと知り合えました。
絵本作家さんたちは何かしたいという気持ちがあったと思うんです。
なぜかというと、絵本というのは、子どもと深いつながりがあって、動物が必ず出てきますよね。
子どもと動物は、原発事故のいちばんの被害者だと思うんです。
絵本作家さんたちは「なんとかしたい」という思いが強かったんだと思います。
2012年にヨーロッパ在住の絵本作家、降矢ななさんが、いち早くヨーロッパの絵本作家を集めて原画を売って、福島の子どもたちに寄付をするという活動を始められました。
「手から手へ展」というタイトルで、イタリアのボローニャから始まって、ヨーロッパを巡回して日本にも来たんです。
私はその当時知らなかったんですけど感動して。
その活動は、1年限りだったんですけど、なんとかその形を続けられたらという思いがあり、市居さんにカレンダーをつくるアイデアを持ちかけたんです。
そうしたら快諾いただきまして、7月頃に来年のカレンダーを作りたいという話をして、10月頃に販売というすごいスピードで完成したんです。市居さんが短期間の間に素晴らしい12人の作家さんを集めてくださって。
これは市居さんがいなかったら実現しなかったプロジェクトです。
西村)みなさんの想いが集まって、そのパワーがスピード感につながったんですね。
水戸)このカレンダーに参加されている絵本作家のふしはらのじこさんに、想いを聞いたんですけど、
絵本作家さんは、みなさん何かしたいという想いでいらっしゃるということです。
カレンダーを買ってくださる方も「何かしたいけどどうしたらいいかわからない、カレンダーを買うことでそれが福島の支援につながるなら」という想いなのだと思います。
1年目はどれだけ売れるか分からなかったので、2000部ぐらいしか作らなかったんです。
ですが、10月に作ったものが11月中に売り切れてしまいました。
すぐに追加で2000部作ったのですが、また12月中旬に売り切れて。想像していなかったスピードでした。
やはり、みなさんも絵本作家さんと同じように、何かしたいという気持ちがずっとあったんだなと感じました。
西村)カレンダーを通して、みなさんの気持ちが輪になっていくシーンをお話いただきました。
原発事故で子どもたちの生活が一変してしまったと思います。
原発事故は、子どもたちにどんな影響を与えたと感じていらっしゃいますか。
水戸)細胞分裂がさかんな時期ほど放射能の影響を受けやすいんです。子どもは小さければ小さいほど影響を受けやすい。
福島には当時18歳以下の子どもが38万人いたんですが、実際に甲状腺の手術をした子どもが今年3月の時点で200人もいるんです。これは紛れもない健康被害。
そして、健康被害だけではなく、子どもたちに精神的なダメージも与えています。
保養キャンプや避難という言葉自体が、分断を生んでしまうということを考えなければなりません。
簡単ではない問題が福島にはあります。その地域に住む人たち全員が移住できればいいのですが、残る人と出る人、子どもの中にも亀裂が生じてしまって、精神的に傷ついている状態があるのではと想像しています。
健康被害以外にも原発が与えた影響は大きいと思います。
西村)「12人の絵本作家が描く応援カレンダー」の収益は、原発事故の影響から逃れるための避難や移住を支援する兵庫県の一般社団法人「リボーン」に寄付されます。
今、「リボーン」代表の後藤由美子さんと電話がつながっています。
後藤さん、よろしくお願いします。
後藤)よろしくお願いします
西村)「リボーン」はどのような団体なんでしょうか。ご紹介いただけますか。
後藤)2016年に避難者自身の手によって立ち上げられた避難移住支援(避難移住のための資金の提供や生活費の貸与など)を行う一般社団法人です。
長崎の被爆者の方から、福島の放射線から逃げてほしいという願いとともに大きな資金を提供したいという申し出を受け、それを必要な人たちに届けるために一般社団法人を設立しました。
避難移住された当事者の方と、福島で被ばく防護の拠点を持っている方のご協力を頂いて、活動を続けています。
西村)被爆者の方の想いがこの団体をつくった。
そしてその想いに、支援されているみなさんのあたたかな気持ちが乗せられて、どんどん輪が広がっているんですね。
さて、避難移住したいという方は多いんでしょうか。
後藤)最初の頃は、自主避難した方にも公的な住宅支援があったんです。
それが2017年の3月には打ち切られるということになったので、私たちは、避難移住を続けられるように生活費の貸与など当面の住宅費用を提供できるように支援の形を整えて、たくさんの方に受けていただきました。
西村)実際に支援を受けられた方は、どんな風におっしゃっていましたか。
後藤)二重生活など経済的に苦しい中で、子どもを守ろうという想いで慣れない土地で頑張っておられる方がいらっしゃいます。そんな方たちの唯一の支援であった公的な住宅支援が打ち切られるということは、どういうことなのかというのは想像できることだと思います。
そうなると帰らざるを得なかったり、厳しい状況になって、家族同士でも考えが違ってしまったりする中で、これ以上お金が出ないとなれば、当然、避難生活を続けられません。
ですから、大きな支援になったと喜んでいただきました。
西村)水戸さん、今のお話を聞いていかがですか。
水戸)政府から助成がされなくなってしまったというのは、見捨てられたとしか思えないですよね。
実際、線量としては下がってきているけれど、セシウム137の半減期まで30年かかるんです。
溶けない放射性物質というのもかなりたくさんあって、風の強い日なんかは空気中に舞っています。
それを吸い込むと体内に入って取れなかったりするんです。
そんなホットスポットがまだいっぱいあるのに、帰ってくれっていうのはありえない話だと思います。
そんな中で、このような民間の団体からしか援助がないというのは、そもそもおかしい。
国が責任をとるべきだとは思っています。
西村)ご家族の中でも考え方が違うという話がありました。
避難移住したとしても、家族が離れ離れになってしまったという話は母親としても心が痛いです。
後藤さんは、原発事故は子どもたちにどんな影響を与えていると感じていらっしゃいますか。
後藤)避難移住した子どもたちの中には、大人社会の歪みから、友達と引き裂かれたり、お父さんとお母さんが対立したり、避難移住したことによって体は守られたけれど、心の面でふるさとのことをずっと気にしながら罪悪感みたいなものを逆に感じたり。
友達はそのままなのに自分だけ...と苦しんでいる子どももいました。
西村)その中で、この応援カレンダーのプロジェクトの話を聞いた時は、後藤さんはどんな風に思われましたか。
後藤)水戸さんが言われた「何かできないか」という想いは、小さなことかもしれないけれどみんな感じていると思います。
その想いと「避難移住したい、子どもを守りたい」というお母さんの気持ちが呼応し合って、一緒に子どもを守っていこうという環境が、子どもたちにもお母さんにも必要だと思うんです。
これから先、一人一人の命を守る願いをつないでいくものとして、このカレンダープロジェクトは素晴らしいアイテムだと思います。
西村)私も一人の母親として、今お二人の話を聞いていて何かしたいと思いました。
でもまだ小さい赤ちゃんがいるから、活動をする余裕もないし...と思ったりするんですけど、そんなお母さんも、この応援カレンダーだったら気軽に支援ができますよね。
このプロジェクトが、一人でも多くの方にこのラジオをきっかけに広まっていったらうれしいです。
後藤)子育てされているお母さんたちは、被ばくについて自分でしっかり調べて子どもを守ってもらえたらと思います。
今は福島の問題になっていますが、そうではなく、日本全国、世界にも広がるこの汚染問題というのは、私たちの日常の問題なんです。
自分が命を守る生き方をすることが支援につながり、被害を受けている方と同じ想いを共有することになります。
西村)私は、応援カレンダーを友人や親戚にクリスマスプレゼントとして送ろうかなと思っているんですが、カレンダーを入口にそんな話をするのもいいですよね。
水戸)実は、このカレンダー、クリスマスプレゼントに買っていただく例がいちばん多いんです。5部~10部買われる方が多くて。
最初はプレゼントとしてもらった方が、翌年に「去年はプレゼントでいただきましたが、今年は自分でプレゼント用に買います」とオンラインぺージにメッセージを書いて広めてくださったり。
これがまさに「手から手へ」だなと思っています。
「手から手へ展」発起人の降矢ななさんが1年目のカレンダーで描いてくださった絵は、狼に小さな女の子が何かを手渡している絵なんです。
これは、カレンダーの象徴になる絵。
怖い狼を恐れずに、温かい気持ちが少しずつ広がって、大きなものを溶かす力になっていくというのは、私たちの目標でもあります。
是非みなさん、プレゼント用に使っていただけたら。
西村)水戸さん、後藤さん、きょうはありがとうございました。
この時間は、一般社団法人「応援カレンダープロジェクト」代表理事 水戸晶子さんと、一般社団法人「リボーン」代表 後藤由美子さんにお話を伺いました。
<エンディング>
「12人の絵本作家が描く応援カレンダー」は、ホームページから注文することができます。
書店でも買うことができます。一部1000円+消費税となります。
年会費1万円の応援カレンダーサポーターも募集中。こちらはカレンダー11部がプレゼントされます。1冊分お得になりますね。
今年は、新型コロナウイルスの影響で毎年行われている原画展やイベントができないということですが、オンラインでの原画販売があり、絵本作家の方々が出演するオンラインイベントが12月20日に開催されます。
詳しくは下記リンクをご覧ください。
一般社団法人 応援カレンダープロジェクト
https://12ehoncalendar.com/