第1321回「トンガ海底火山噴火1か月」
オンライン:日本トンガ友好協会 ラトゥ・ウィリアム志南利さん 
オンライン:VFCP(ババウ未来創造プロジェクト)理事長 安川 貴さん

西村)トンガで起きた海底火山噴火の発生からまもなく1ヶ月。トンガは、オーストラリアの東、ニュージーランドの北側にあります。南太平洋にあるトンガは、日本から約8000km離れた場所にあり、170の島、4つの諸島から構成された国で、約10万人が暮らしています。日本とも交流があり、東日本大震災のときには義援金とともに里芋などを届けて支援してくれました。被災した人々が今どんな様子で暮らしているのか心配です。
きょうは、現地とやりとりを続ける支援団体の2人にお話を伺います。はじめに日本トンガ友好協会 ラトゥ・ウィリアム志南利さんにお話を伺います。ラトゥさんよろしくお願いいたします。

ラトゥ)よろしくお願いします。

西村)ラトゥさんは1985年にトンガから来日し、ラグビーの日本代表として活躍し、1987年から3大会連続でワールドカップに出場。現在はトンガと日本の交流を深める団体を立ち上げて活動しています。ラトゥさんの家族は、トンガで一番大きい首都のある本島に住んでいるのですね。

ラトゥ)はい、そうです。

西村)発生当初、ラトゥさんはどこにいて、どんな状況だったのですか。

ラトゥ)わたしは埼玉に住んでいて、その日、奥さんといつも聴いているトンガのインターネットラジオを聴いていました。すごい爆発音がした、政府から「津波の危険があるから海に近くにいる人は逃げて」と伝えられたと知りました。

西村)それを聞いたときはどんなふうに思いましたか。

ラトゥ)コロナ禍で、2年ほど家族に会えていないのですが、Facebookでトンガにいる家族から状況が伝えられました。すごい音がして、あたり一面煙で真っ黒になって、黒い石が降って来たと。

西村)ラトゥさんにトンガの状況がわかる写真を送っていただいたのですが、その中に手のひらに小さな小石がのっている写真がありました。これが降ってきたのですね。

ラトゥ)逃げている人がパニックになっている写真もありました。

西村)心配ですよね。

ラトゥ)津波が来た写真が何枚か送られてきた後に、通信が切れて連絡がとれなくなりました。

西村)黄緑色の建物に津波が押し寄せて、地面が見えなくなって水浸しになっている写真があります。この写真を最後に連絡が途絶えたら本当に心配ですよね。家族の無事は確認できたのですか。

ラトゥ)確認しました。ニュージーランドの兄弟から連絡が来て、無事という連絡をもらいました。

西村)現在のトンガはどんな様子なのでしょうか。

ラトゥ)トンガは、各家庭でタンクを持っていて、雨水をためて飲み水にしています。それが灰で真っ黒になって飲めなくなっていると聞いています。先週大雨が降って、少しは大丈夫になりました。海外からの支援もあります。ニュージーランドや日本が水をたくさん持ってきてくれたそうです。

西村)海外からの支援が少しずつ届いているのですね。

ラトゥ)トンガは自分たちで畑をもっている人が多いのですが、畑も火山灰でやられていると聞いています。

西村)野菜を作ることができないのですね。子どもたちもお腹をすかせているでしょうね。

ラトゥ)心配です。

西村)ラトゥさんの家族が住んでいた本島の家は無事だったのですか。

ラトゥ)僕たちの家は海から離れているので大丈夫です。海から遠いので避難所になっているみたいです。

西村)写真の中には、木が倒れて津波の被害を受けたような写真もたくさんありました。沿岸部はかなり被害を受けたのでしょうか。

ラトゥ)海に近いところは、結構被害がありました。トンガには170ぐらいの小さな島があるのですが、小さい離島では、家がほとんど流されてしまいました。

西村)家を失った人はどこで生活しているのですか。

ラトゥ)大きい島に移住して生活しています。多くの人は自分の島に帰りたいと言っているそう。今後、トンガ政府と話し合って残るのか戻るのか決めていくということです。

西村)もともと暮らしていた島に帰るのか、引き続き大きな島で安全に暮らすのかは悩ましい選択ですよね。ライフラインはどうですか。電気は来ているのでしょうか。

ラトゥ)大きい島には電気はきています。でも海底ケーブルが切れていて、ネットや電話はまだ全然つながらない状況です。
 
西村)復旧はいつ頃になりそうでしょうか。
 
ラトゥ)最初2~3週間といわれていたのですが、切れている箇所が多くて、いつになるかわからないということです。
 
西村)早くなんとか復旧してほしいですね...。ラトゥさん、貴重なお話をどうもありがとうございました。日本トンガ友好協会 ラトゥ・ウィリアム志南利さんにお話しを伺いました。
 
西村)続いてはVFCP(ババウ未来創造プロジェクト)理事長 安川貴さんにお話を伺います。
安川さんおはようございます。
 
安川)よろしくお願いいたします。
 
西村)安川さんは日本にお住まいですか。
 
安川)はい。神奈川県に住んでいます。
 
西村)安川さんは、トンガで暮らしている日本人のルイ敬子さんらとともに、トンガのレインタンクの設置や衛生環境の改善について活動しています。ルイ敬子さんは、本島から300km離れたババウ島在住。VFCPのFacebookページを見たのですが、とても海がきれいで自然が溢れる場所ですね。
 
安川)はい。ババウ島はトンガ本島・ヌクアロファからプロペラ機で1時間半ぐらい300km北上したところにあるトンガで2番目に大きい島です。そうは言っても小さい島で、人口は15000~16000人。海はとてもきれいです。私が今まで人生で見てきた中で、石垣島以上か同じくらいきれいです。
 
西村)豊かな自然があるところなのですね。今、ルイ敬子さんとはどのように連絡を取っているのですか。
 
安川)町に衛星電話が1台しかなくて、みんなで順番で使っています。通話料がものすごく高く、頻繁に連絡が取れないので、こちらからルイ敬子の兄が連絡を取るようにしています。2日に1回ぐらいの連絡頻度です。
 
西村)なぜ衛星電話で連絡を取っているのですか。
 
安川)海底ケーブルが壊れてしまって、携帯電話やFacebookなどSNSでの連絡が取れない状況です。頼りにできるのは衛星電話だけです。
 
西村)島に唯一ある衛星電話に順番待ちで行列を作っているのですね。通信料がかかるから短い時間で早口になって伝えて...。
 
安川)聞きたいことを最後まで聞くことができなかったりするそうです。
 
西村)ルイさんは、発生当時どこにいて、どんな様子だったのでしょうか。
 
安川)ルイ敬子は、ホエールウォッチングの観光をするコテージをやっていて海岸沿いにいました。ババウ島からさらにボートで渡ったところです。そこでものすごい爆風・爆音に襲われ、子ども2人を連れて、急いで高台に避難しました。無事だったのですが、小学校6年生と4年生くらいの子どもは泣いてしまって。命の危険を感じたようです。ものすごく怖かったと思います。
  
ルイ敬子は、東日本大震災のときは岩手県に住んでいて、津波を目の当たりにしました。その時も海岸から離れたところにいたので家族はみんな無事でしたが、その経験が活かされたのだと思います。

  
西村)そうだったのですね、ババウ島では、食べるものには困っていないのでしょうか。支援は行き届いているのでしょうか。
  
安川)食べ物は畑や家畜があります。でも、トンガ政府から今は、火山灰の影響で安全が確保されてないので食べないようにといわれています。そうは言っても背に腹は代えられない。野生の感性で、家畜や魚も食べているそうです。
 
西村)お腹がすいたら、生きていくために食べなければなりませんよね。
 
安川)中には、食料がなくてパニック状態に陥っている人も。そうすると食べずにはいられないので食べてしまう状況です。水は最近、大雨が降ったので多少しのげていると思います。
 
西村)雨をどう活用しているのですか。
 
安川)トンガは、各家庭にあるレインタンクに雨をためて使っています。ここに火山灰がたまっているので、水が流れてきてもかなり汚染されている状態。決して安全とは言い切れません。ルイは、ババウ島に数台しかない高圧洗浄機で、まず学校の施設にあるレインタンクの洗浄をしました。約30個ある内の9個をきれいにしました。近隣の人々がきれいな水を求めて最寄りの学校に行って、急場を凌いでいます。
 
西村)最寄りの学校に行って、飲み水や暮らしに必要な水を確保しているのですね。
 
安川)水の酸性やアルカリ性を調べる検査キットが必要なのですが、ないので、勘できれいな水とそうでない水を分けて生活用水として使っています。仕方なく飲んでしまうこともあります。
 
西村)食べ物も水も野生の勘に頼っているのですね。
 
安川)不十分な状態です。今日明日につきてしまうことはないが、長くは持たないということです。支援が送られる状況になっても、そこからさらに20日ぐらいかかってしまうので。
 
西村)8000km離れていますもんね。
 
安川)こちらからお金を送って、ルイが現地かヌクアロファから物資を手配できるようになればいいのですが、お金も送ることができません。
 
西村)銀行はストップしているのですか。
 
安川)ルイがお金を引き出すことはできるようになったのですが、我々の方から送金ができないのです。蓄えで何とかしている状況です。市場も完全に閉鎖しているので、お金を使うことはあまりないと思うのですが。
 
西村)市場は閉鎖しているのですね。
 
安川)品切れで在庫もない状態です。
 
西村)海外からの支援が徐々に届き始めているという話がありましたが、ババウ島にそのような支援物資は届いているのですか。
 
安川)首都ヌクアロファに送られて、ほとんどがそこで消費されてしまっています。ババウ島は人口15000~16000人なので後回しになってしまうのはしかたないのですが。ほとんど物資は来ていないと思います。
 
西村)新型コロナウイルスが日本でも蔓延していて世界中に広がっています。トンガはロックダウンしているのですよね。
 
安川)トンガ政府としてはコロナを増やしたくないので仕方ない措置だとは思いますが、物資の滞りという影響が出ています。
 
西村)ババウ島は、医療体制は整っているのでしょうか。診療所はあるのでしょうか。
 
安川)診療所は一つだけあります。島一周は5~60kmなので、1ヶ所あれば何とかなります。わたしたちが活動を始めたきっかけは、レインタンクの水の食あたり。日本なら抗生物質などの薬がありますがトンガにはないので、亡くなる子どももいます。それで、レインタンクをきれいにしたり、新しくしたりする活動をはじめたんです。
 
西村)薬も限られているのですね。
 
安川)痛み止めしかありません。
 
西村)熱が出てもお腹をくだしても、なんでも痛み止めが処方されるのですね。
 
安川)基本は痛み止めです。菌に侵されたら痛み止めでは治らない。抗生物質があればいいのですが。医療はまったく不十分。今後、体調を崩す人たちが出てくると思います。
 
西村)水も心配ですし、火山灰が入っているかもしれない食べ物も危険ですね。
 
安川)体力も消耗していると思いますし。
 
西村)まだまだ心配が続く状況ですが、安川さんはVFCP(ババウ未来創造プロジェクト)の理事長として、これからトンガにどんな支援をしていきたいと思っていますか。
 
安川)もちろん、噴火に関する支援はしばらくの間続けます。さらに、日本のみなさんにトンガのことをもっと知ってもらいたい。そこにも力を入れて、レインタンクの設置なども続けていきたいと思っています。
ホームページに活動の趣旨がのっているので参考にしてください。Facebookもあります。トンガの最新情報を得たい場合は、ルイ敬子の「Cocokara beach」というYouTubeをぜひ見てください。無人島だった島を開拓して住んでいます。

 
西村)きょうは、お忙しい中、ありがとうございました。VFCP(ババウ未来創造プロジェクト)理事長 安川貴さんにお話を伺いました。日本トンガ友好協会、そしてVFCP(ババウ未来創造プロジェクト)ともに、義援金を募集しています。
 
「日本トンガ友好協会」
https://www.tonga-japan-friendship.net
 
「VFCP」
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