第1366回「外国人防災アドバイザー」
オンライン:箕面市国際交流協会 バイサさん
      外国人防災アドバイザー 畢微さん

西村)母国で地震や台風を経験したことがなく、災害への不安も強い外国人に対して、防災の知識を学んでもらい、情報を発信する「外国人防災アドバイザー」という活動が各地で広まっています。
きょうは、大阪で初めてこの取り組みを始めた箕面市国際交流協会のバイサさんと、実際に外国人防災アドバイザーになった中国人の畢微(ひつび)さんにお話を聞きます。
箕面国際交流協会の職員であるバイサさんは、モンゴルから来日したそうですが、来日して何年ですか。
 
バイサ)留学生として来日して10年目、箕面国際交流協会で働いて4年目になります。
 
西村)モンゴルは、地震などの大きな災害はあるのですか。
 
バイサ)モンゴルは大陸国なので、自然現象としての地震はありますが、災害としての地震はあまりありません。ほかの自然災害はありますが地震はあまりない国です。
 
西村)ほかの自然災害とは大雨などでしょうか。
 
バイサ)寒さによって家畜が大量に死んで、人間社会が被害を受ける寒害など、長い期間続く災害が多いです。
 
西村)母国で大きな災害を経験したことがないという、87カ国の国や地域の外国人、約2900人が箕面市で暮らしているとのこと。「外国人防災アドバイザー」とは、どのような活動をしているのですか。
  
バイサ)外国人は母国の国土の特徴、文化的や社会的な背景によって、日本人とは、災害に関する認識や捉え方が異なります。災害のリスクや防災体制の仕組みなどの知識も少ないです。地域との繋がりも希薄な外国人は、言葉の壁などのさまざまな課題を抱えながら暮らしています。日本では、保育園や学校、地域で避難訓練が実施されるので、防災の知識や技術を学ぶことができますし、母語で災害情報にアクセスもしやすい。でも外国人の場合は、避難訓練をする機会が少ないです。災害が起こったときの適切な行動、想定外の事態から自分や家族を守ることができる外国人を増やしていきたいという思いからこの取り組みを初めました。
 
西村)外国人のみなさんは、言葉の壁があるので、近所の人と話をするのも勇気がいるかもしれません。緊急地震速報も何が書いてあるのか、どこに逃げたらいいのかわからないという人も多いでしょう。「外国人防災アドバイザー」は、今何人ぐらいいるのですか。
 
バイサ)この取り組みは、2020年から始まりました。毎年、防災訓練に参加したり、防災研修を受けたりした5人が防災アドバイザーに任命されます。今年で3年目なので3年間で15人の「外国人防災アドバイザー」が活躍しています。
 
西村)具体的にどんな活動を行っているのですか。
 
バイサ)箕面市市民安全施策室の職員や人と未来防災センターの研究員を講師に迎えた、防災研修を受けたり、箕面市の災害リスクや防災体制、情報発信の仕組みについて学んだりします。避難行動のワークショップや避難防災訓練などの研修を受けています。
 
西村)避難行動のワークショップとはどのようなことをするのですか。
 
バイサ)災害発生時の物語を時系列に沿って記述して、災害時のアクションプランを形成するというワークショップです。このワークショップは、具体的にアクションプランを作ることができるので人気があります。
 
西村)実際に体験したことがなければ、大きな地震が起こったときに何をどうしていいかもわからないですよね。それぞれの生活に合わせて考えるというのは、大切なことだなと思いました。「外国人防災アドバイザー」の活動を始めたきっかけの一つとなったのが、2018年の大阪北部地震だったそうですね。
 
バイサ)箕面市国際交流協会は、箕面の小野原という地域にあり、近くには大阪大学の吹田キャンパス、箕面キャンパスがあります。大阪北部地震のときに、近くの小学校の避難所に100人以上外国人市民が避難したことがきっかけの一つになりました。
 
西村)大学があるということは留学生も多かったのですね。同じ小学校に一度に多くの人が避難したのですか。
 
バイサ)留学生だけではなく、100人を超える地域の外国人市民が避難しました。
 
西村)なぜ同じ場所に避難したのでしょうか。
 
バイサ)いろいろ理由が考えられますが、一つは近くに大学のキャンパスがあること、留学生が多いこと。留学生同士やコミュ二ティで情報を交換して、「みんな行っているから私も行かなければ」と集まってきたのだと思います。
 
西村)同じ小学校に一気に100人以上の人が来ると、受け入れる方も戸惑いますね。大阪北部地震のときは、みなさん、地震が起こったらどうすれば良いのかを全く知らなかったのでしょうか。
 
バイサ)はい。いろんなことがわからないのでとりあえず避難所に行くという感じです。避難所に行ったらなにか情報が得られるのではないかと。
 
西村)実際に避難したみなさんは、どんなことに困ったのでしょうか。
 
バイサ)避難所がどのように運営されているのかもわからない人が多かったと思います。言葉が通じない人や避難所での過ごし方がわからないという人もいました。
 
西村)わたしたちは、炊き出しのご飯がもらえることなどいろいろわかりますが。
 
バイサ)あまり日本語ができない人もいます。パンなどの食べ物を「ご自由にどうぞ」と張り紙がしてあったら、何個でも取って良いと理解する人も。避難所での過ごし方を知っている人は、「ご自由にどうぞ」の意味はわかると思うのですが、言葉の壁を感じている人にとっては、「ご自由にどうぞ」の捉え方が異なります。
 
西村)災害時だし...ほかにもたくさん人がいるから1人1個ずつかなとわたしだったら思いますが、国それぞれの感覚の違いもあるでしょう。余計に不安になったり、疎外感を感じてしまったりということもあるでしょうね。同じ外国から日本に来た「外国人防災アドバイザー」が親身になって、それぞれの困りごとを聞いて、伝えていくことはとても大切だと思います。ここからは実際に「外国人防災アドバイザー」として活動している中国から来日した畢微さんに話を聞いていきたいと思います。
 
畢微)よろしくお願いいたします。
 
西村)畢微さんは2000年に留学生として来日して、2010年から高齢者施設でフードマネージャー管理栄養士として勤務する中で、「外国人防災アドバイザー」になったそうですね。実際に活動してみていかがですか。新たな発見はありましたか。
 
畢微)箕面市の「外国人防災アドバイザー」の取り込みにとても魅力感じています。参加することで、災害のことをもっと知ることができ、アドバイザーという形でたくさんの外国人を助けることできるのはすごく有意義なことです。
 
西村)中国といえば、2008年に中国・四川で大きな地震がありました。今年9月にも地震がありましたし、中国は地震が多いイメージがあります。畢微さんは、実際にこの中国にいるときに地震に遭ったことはありますか。
 
畢微)わたしの住んでいる地域は、全く地震がなかったので、自然災害を経験したことはありません。
 
西村)2000年に来日したということは、大阪北部地震のときは、大阪で地震を経験したのでしょうか。
 
畢微)一番大きい自然災害の経験は、2018年の大阪北部地震でした。言葉もわかるし、地震が頻繁におこるという認識はしていたつもりだったのですが、「ちょっと揺れるくらいだろう」と怖さを知らなかったんです。どこに逃げたら良いのか、自分の家族にどう連絡をしたら良いのか、安否の確認どうすれば良いのか...すごくパニックになりました。勉強不足だとすごく感じました。職場で火災の避難訓練は経験はしたことがあったのですが、地震の避難訓練の経験はなくて。保育園に通う子どもの方が避難訓練の経験があって、地震が起きたとき、「ママ!机の下に隠れて!」と一緒に隠れたんです。日々の避難訓練、小さい頃からの意識付けはとても大事だとしみじみ感じました。
 
西村)「外国人防災アドバイザー」としてみなさんの困りごとをどのように解決に導いているのですか。
 
畢微)研修で感じたことは、防災意識を高めることがとても大事だということ。災害は怖いということを知ることが非常に大事だと思いました。災害時の対応方法を勉強する必要があります。災害はつおこるかわからないので、食料や生活用品の備蓄の知識も身につけた方がいいと思いました。
 
西村)宗教で食べられるものも異なり、避難所の食料だけでは困るかもしれません。避難所に行かずに自宅で待機できることも知って、食品を備蓄しておくなど、防災の備えはたくさんあります。畢微さんのように、外国人だからこそわかり合える、コミュニティで伝えていくことは、大切なことだと思いました。
きょうは、外国人防災アドバイザーについて、箕面市国際交流協会のバイサさんと外国人防災アドバイザーの畢微(ひつび)さんにお話を伺いました。