電話:危機管理教育研究所 代表 国崎信江さん
西村)今月7日、首都圏で発生した震度5強の地震では多くの帰宅困難者が出ました。仕事先だけではなく、買い物や遠方に出かけた際など、もし外出先で災害に見舞われたら。慣れない土地で、どのような防災対策が求められるのでしょうか。
きょうは、危機管理教育研究所代表 国崎信江さんに電話でお話を伺います。国崎さんよろしくお願いします。
国崎)よろしくお願いします。
西村)外出先で大きな地震に遭遇したら、どのような行動をとるべきなのでしょうか。
国崎)なによりも命が大切です。まずは安全な場所に移動してください。飲食店や百貨店など室内にいたら飛んでくるものから離れて、かばんを持っていたら頭を守りながら開けたところに行ってください。
西村)開けたところというのは具体的にはどのような場所ですか。
国崎)百貨店ならエレベーターの周りは物が少なくて広いですよね。日頃から地震が来たらどこが安全かを意識していると、いざというときに探すことができると思います。通行中も公園や駐車スペースなど、より広い場所に移動することを心がけてください。
西村)横がビルだった場合、窓ガラスが落ちてくるかもしれません。上もきちんと確認しなければいけませんね。
国崎)日中でビルの中に入れるようなら、新しくて丈夫そうなビルに中に入るのも安全です。
西村)百貨店などにいた場合、自分の判断で行動しても良いのでしょうか。
国崎)職員の指示に従って行動してください。
西村)誘導してくれる人がいる場所では、指示に従わないと混乱が起きてしまいそう。
国崎)大阪市内は津波の危険性がある場所も。施設内にいる場合には、できる限り従業員の指示に従うこと。従業員がいない場合は、丈夫そうな建物の上の階に避難しましょう。
西村)津波が襲ってきた場合、地下にいると浸水してしまいます。なるべく丈夫な建物で高い場所に逃げるのですね。
国崎)安全な場所に避難したら、災害の規模や交通機関の運行状況、津波の危険性などの情報収集をしてください。しっかりと情報収集をして、家に帰ることができる状況なのかを落ち着いて判断してください。
西村)落ち着いて情報を得ると何をすべきかがわかりますね。10月7日に首都圏で大きな地震が発生したとき、タクシー乗り場に行列ができている報道をよく見かけました。あわてて帰ろうとする人が多かったのでしょうか。
国崎)大阪北部地震のときもそうでした。早く家に帰りたいという思いが強いと思うのですが、あわてて帰ろうとしないことが大切です。
西村)なぜでしょうか。
国崎)政府も原則としてむやみに移動開始しないということを推奨しています。二次災害に巻き込まれる可能性が高いからです。オフィス街を歩いていて余震が起きた場合、ビルの上からコンクリート片などが落ちてくるかもしれせん。人があふれて押し倒されてしまうこともあるかもしれません。明石の花火大会の歩道橋事故のようなことが起こり得ると思います。人が車道に出て、緊急車両が通れなくなり、救助活動の妨げになる恐れもあるのです。駅に行く人が多いのですが、駅員さんに情報を聞こうとしても、直後は駅員さんも十分な情報を持ち合わせているとは限りません。運行状況はネットでも見られるかもしれないので、無理に駅に行く必要はありません。通信状況が機能していなくても大きな地震なら、列車は動いていないだろうと理解をして、まずは安全なところでしばらく様子を見ることを心がけてほしいです。
西村)安全なところで様子を見ていても、動きたくなる人もいると思うんです。お腹もすいてくるかもしれないし。
国崎)わたしなら駅に行くぐらいなら先を見越して、ホームセンターなどが空いていたら買い物に行きます。
西村)なぜホームセンターなのですか。
国崎)スーパーやコンビニについ駆け寄ってしまいがちなのですが、ホームセンターなら食料・水以外にもブランケットや懐中電灯などの防災用品も売っています。コンビニ、スーパー、ホームセンターが並んでいたら、私はホームセンターに行きます。コンビニエンスストアのATMが使えるようなら、早めに現金を引き出しておきましょう。現金は1万円札ではなく、4000円、9000円というふうに、細かいお金が出る設定にしておくと、買い物でつり銭がないとき、1人1本までしかペットボトルを買えないときなどに役立ちます。1本のペットボトルを1万円で買わなくて済みます。
西村)公衆電話を使うことになるかもしれないので、10円玉や100円玉も要りますよね。充電がきれて、携帯電話が使えなくなるかもしれませんし。
国崎)日頃から小銭は使い切らないようにしておくと良いと思います。
西村)携帯電話の電子決済やクレジットカードがメインで買い物をすることが多くて、現金はあまり持っていないです。
国崎)かばんの中に小銭入れを入れておいて、普段は使わずに、念のためのお金として取っておくのも良いです。
西村)私の場合、仕事中に大きな地震に遭遇すると、1歳と5歳の子どもが別々の保育園にいるので、お迎えに行かなければ!とまず思います。どうやって連絡を取れば良いのでしょう。
国崎)保育園で決められた方法で連絡を取りましょう。一斉配信メールや親同志のネットワークでLINEグループなどがあれば、先生に伝えてもらうこともできるかもしれません。災害時も使い慣れたSNSを活用すると良いと思います。
西村)我が家は、実家のおじいちゃんおばあちゃんと一緒にLINEグループを作っています。LINEが繋がらない場合は、「災害用伝言ダイヤル171」に公衆電話から電話してみる方法もありますね。いくつかの手段を普段から相談して練習しておくことも大事ですね。
国崎)ところが最近、公衆電話の使い方を知らない子どもが増えているんです。
西村)確かに子どもと一緒に公衆電話を使う機会はなかなかないですよね。一緒にシミュレーションすることは大事ですね。
国崎)自分が迎えに行けないかもしれないと見越して、近くに住んでいるママ友に引き取ってもらうことをあらかじめ決めておくのも良いと思います。
西村)同じクラスのママさんにお迎えをお願いしても良いのかと保育園に聞いてみたのですが、原則家族でなければ引き渡しできないそうです。ママ友と引き渡すことをお互いに決めておいて、証明カードに名前を書いておけば、ママ友にお願いしてもOKとのこと。保育園、幼稚園、学校によってやり方が違うと思うので、あらかじめ調べて備えておくことも大事だと思いました。
国崎)代理人の引き受け者のところに、おじいちゃん・おばあちゃんやママ友さんなどの名前を事前に相談して書いておけば、園としても安心して引き渡しすることができると思います、事前に最悪を考えて相談しておく、助けてもらえる人を見つけておきましょう。
西村)お子さんと同じくお年寄りのことも対策しておかなければいけませんね。
国崎)支援が必要な人は、助けてもらえる人を家族で考えておくと良いと思います。
西村)日頃から家族の行動ごとにシミュレーションしておくことが大事。思い切って会社や学校に戻るというも良いのですか。
国崎)生きていれば必ず会えるということ忘れないでください。無理して帰ろうとして途中で命を落とさないように。心理的に前に進みたい気持ちになると思いますが、勇気を持って、会社や学校に戻ることも判断として持っておいてください。
西村)外出先で、学校や会社など戻る場所がない場合、どうしたら良いのでしょう。
国崎)最寄りの身を寄せることができる場所を探してください。そんなとき、「全国避難所ガイドアプリ」が役立ちます。自分がいる場所から一番近い避難所を教えてくれて、さらにそこまでの道順を教えてくれる頼れるアプリです。さらに自治体によっては、Jアラートで避難所の混雑状況を知ることができます。オプションで、避難所の混雑状況(混雑・空いている・不明)を教えてくれるのですが、このサービスは自治体によって異なるので、あらかじめ確認しておいてください。避難所の場所がわからない場合は、駅の近くなら周辺地図の立て看板があるので、そこに小学校・中学校などの避難所が書いてあります。
西村)避難所は地元の住民が優先なので、一時避難の場合、帰宅困難者が行ってはいけないのでは。
国崎)都市部は、昼間の人口の方が多い。どこに避難するのかが大きな課題ですよね。自治体では、企業や大学に帰宅困難者の受け入れを働きかけています。そのような場所が近くにないかを確認しておくと良いと思います。
西村)どうしても歩いて帰らなければならない場合もあると思います。
国崎)そんなときは、「災害時帰宅支援ステーション」というものがあります。ご存知ですか。
西村)コンビニに黄色いステッカーが貼られているのを見かけたことがあります。
国崎)ガソリンスタンドやコンビニなどが登録していて、トイレや水道水、情報を提供してくれます。ただ、ここに行けば何とかなると思っても、アルバイトさんが知らない場合、売り物がなくなった場合は閉めてしまうことも。日ごろから自分のカバンに最小限の防災用品を入れておきましょう。
西村)どんなものを入れておけば良いですか。
国崎)私は最悪を考えて、自分が怪我をする前提で応急手当用品として止血パッドを入れています
西村)絆創膏ではダメですか。
国崎)絆創膏程度の傷なら放っておいても良いかもしれませんが、出血してしまった場合には命に関わることになるので、止血パッドを常に携帯しています。携帯電話がいつでも使えるようにフル充電できるモバイルバッテリーも持っています。
西村)どこかで買えばいいかと思っていても、売り切れている可能性もありますよね。
国崎)さらにヘッドライト、携帯トイレ、ゼリー飲料をあわせた5つを常に持っています。これらを参考に、自分なら何が必要を考えて、用意しておくと良いと思います。
西村)今だったらマスクの替えや除菌のスプレーなども必要ですね。
国崎)よく車を使う人は、車に寝袋や折り畳みのウォータータンク、レジャーシートなどを入れておくと安心です。
西村)レジャーシートは何に使うのですか。
国崎)車内で寝るときの目隠しにもなります。レジャーシートはあると便利ですよ。
西村)改めて最後に、外出先で災害に遭遇した場合、どんな備えが一番大事でしょうか。
国崎)一言で言うとシミュレーションです。想像することはお金がかかりません。一番の災害対策と言っても過言ではありません。行政や自治体の対応ももちろん大切ですが、私たちもいつ地震が起きるかわからないと考えて、日頃から行動や対応を考えて話し合っておくことが大事ですね。
西村)家族で考えを共有して、対策しておくと安心に繋がりますね。シミュレーションは本当に大切だなと改めて感じました。きょうは、危機管理教育研究所 代表 国崎信江さんにお話を伺いました。