第1442回「今年も猛暑!気象情報の活用法」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

西村)きょうは、スタジオにMBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんに来ていただきました。
 
前田)よろしくお願いいたします。
 
西村)台風1号が発生して、先週は大雨が降りましたね。
 
前田)兵庫県・神戸市や京都府・福知山市などでは、5月の観測史上一番多い雨量となり、梅雨のような大雨となりました。
 
西村)台風が遠いのにこんなに降るのか...と思いました。
 
前田)梅雨前線と台風が組み合わさるときは要注意。台風は熱帯生まれの低気圧なので、湿った空気をたくさん持っています。その湿った空気が前線に流れ込んで活動が活発になるのです。
 
西村)大雨を降らせる線状降水帯の発生予測エリアが絞りこまれることになりましたね。
 
前田)これまでは地方ごとに予測がされていたのですが、大阪・奈良・和歌山にというようにエリアが絞られることになりました。
 
西村)今回の大雨でも線状降水帯の予測がエリアごとに出されていましたね。
 
前田)府県単位で、九州南部、四国と東海の8つの県と地域に発表されていました。
 
西村)少し意地悪なこと言いますが、結局外れてしまいましたよね。
 
前田)線状降水帯は結果的に発生しませんでした。気象庁は半日前の予測が的中する確率は4回に1回としています。
 
西村)線状降水帯を予測するのは難しいのですね。
 
前田)線状降水帯の予測を確実に当てるのは今の技術では難しいです。今回は、線状降水帯は発生しませんでしたが、災害に結びつきかねない雨量になりました。線状降水帯が発生する・しないだけの問題ではなく、発生しなくても災害が起きることはあるので、この情報が出されたときは、備えのレベルをあげるきっかけにしてほしいです。
 
西村)身の回りの備えや家の周りや地域の掃除もしっかりしなければなりませんね。気象庁が先月発表した6月から8月の3ヶ月予報では、全国的に平年より気温が高くなる見通しで、今年の夏も猛暑になりそうです。
きょうは、前田さんに今年の猛暑を乗り切るための気象情報の活用法を教えてもらいます。やっぱり今年の夏も暑いですか。
 
前田)猛暑待ったなしです。
 
西村)この春もかなり暑かったですよね。
 
前田)過去で一番気温の高い4月でした。最新の3ヶ月予報では、近畿地方は6月、7月、8月全ての月で平年より気温が高くなりそうです。
 
西村)暑さへの覚悟が必要。熱中症を予防するためには、どんな情報をどのように活用したら良いのでしょうか。
 
前田)日々の天気予報をチェックして暑さを確認してください。日差しの強い日は直射日光を遮る工夫を念入りにしてください。気温だけではなく、暑さ指数にも気を付けてほしいです。
 
西村)暑さ指数はどのように出されるのでしょうか。
 
前田)暑さ指数は気温に加えて、湿度、照り返しの熱の効果も含めて、人間の感じる暑さにできるだけ近い指数を設定しています。暑さ指数に気温の効果は、10段階中2割。10分の7が湿度の割合なのです。
 
西村)10分の7ということは、湿度が大きな割合をしめるのですね。
 
前田)湿度が高いと汗が乾きにくいので、特に暑さを感じやすく、熱中症の危険性が高まります。残りの1が照り返しの熱の効果になります。
 
西村)どんな服装で、どんなものを活用したら良いのでしょうか。
 
前田)暑さ指数の高いときは、水分補給や冷房を使うことも大事。さまざまな冷却グッズもあります。血液を効率的に冷やすこと。首など太い血管が通っているところをうまく冷やすとすごく効果的です。この暑さ指数をもとに発表される気象情報が熱中症警戒アラート。環境省と気象庁が合同で発表している情報で夏になると毎日のように発表されます。
 
西村)熱中症警戒アラートが発表された地域ではどのような行動をとったら良いのでしょうか。
 
前田)熱中症警戒アラートが発表されたときは、かなり危険な状況になっているので、外での運動はできるだけ避けるか中止して、屋内の涼しい環境で過ごしてください。しっかりクーラーも使ってください。水分・塩分の補給をこまめにするなど意識を一段階高めて、身を守る行動をとってください。
 
西村)子どもたちに水分補給を呼びかけるときのポイントはありますか。
 
前田)今から習慣化させることです。子どもは、遊びに夢中になると水分補給を忘れがちに。「これをしたら水を飲みなさい」というように呼びかけて、行動と水分補給をセットにすると良いです。
 
西村)小学校に通っている息子には、「休み時間になったらお茶飲んでね」と伝えます。大人もなにかに夢中になると水分補給を忘れそう。
 
前田)「2時間に1回」「何時になったら飲む」というふうに決めておくと良いと思います。
 
西村)ビールは水分補給にならないですよね。
 
前田)なりません。スポーツ観戦のときなんかは要注意!
 
西村)水分補給におすすめの飲み物はありますか。
 
前田)イオン飲料などスポーツ飲料などがオススメですが、あまり飲みすぎると糖分の取りすぎになります。基本的には水やお茶で大丈夫。塩分は、3食の食事で取ることができます。激しい運動をするとき以外はスポーツ飲料を積極的にとらなくても構いません。
 
西村)熱中症におすすめの食事メニューはありますか。
 
前田)やはり塩分を取ることが大事。和食がオススメです。味噌汁は、水分も塩分も一緒に補給できます。ご飯も水を入れて炊くので、水分をしっかりと含んでいます。ご飯をきちんと食べるだけで水分補給になります。朝食には和食がオススメですね。
 
西村)4月24日から新たに熱中症特別警戒アラートの運用がスタートしました。特別ということは、暑さのランクが上がったということですか。
 
前田)今年から新しく発表されるようになりました。熱中症特別警戒アラートは暑さの特別警報と思ってください。
 
西村)暑さ指数はどれぐらいになりますか。
 
前田)熱中症警戒アラートは、暑さ指数が33。都道府県の中のどこかの地点で33以上になりそうなときに熱中症警戒アラートが発表されます。一方、熱中症特別警戒アラートは、暑さ指数が35以上になったときに出されます。熱中症特別警戒アラートは、都道府県の中の全ての観測地点で過去に例のないような危険な暑さになると予想されたときに出されます。
 
西村)もし発表されたら、どれぐらいの暑さになるのでしょうか...。
 
前田)過去に例のない暑さです。熱波のようなイメージ。
 
西村)インドで、暑さで人が亡くなったニュースを聞くことがありますが。
 
前田)それぐらいの暑さだと思ってください。日本では、これまでに熱中症特別警戒アラートが発表される状況になったことは一度もありません
 
西村)特別警戒アラートが作られたということは、今後さらに日本も暑くなっていくと予想されているからですか。
 
前田)特別警戒アラートが出される状況が近い未来に出てきてもおかしくないということです。もし発表されたら本当に危険な状況だと認識してください。家から出ないくらいの心構えが必要。
 
西村)熱中症にならないようにエアコンが自宅にあるなら必ずエアコンをつけましょう。ほかにも何か自治体で取り組んでいることはありますか。
 
前田)熱中症特別警戒アラートが出たときは、自治体が暑熱避難施設(クーリングシェルター)を設置することが義務付けられています。
 
西村)それはどんな場所ですか。
 
前田)指定する公民館や図書館、ショッピングセンターなどエアコンがある施設で暑さをしのげる場所です。
 
西村)涼しい場所なら買い物も休憩もできるし、家の電気代の節約にもなりますね。そこまで行くのが遠い場合は...。
 
前田)必ずこのシェルターに行かなければならないわけではありません。エアコンがない人は施設をうまく活用してください。
 
西村)梅雨が明けると、熱中症で搬送されるニュースも多く聞きます。今、できることはありますか。
 
前田)暑さに体を慣らすこと=暑熱順化、暑さに強い体作りをしておきましょう。暑さに慣れていない人は、少しずつ汗をかく練習を今のうちにしておきましょう。
 
西村)どんな練習をしたら良いですか。
 
前田)ウォーキングやジョギングなど軽い運動が効果的です。ジョギングなら1日約15分。ウォーキングなら約30分を週5日ぐらい続けると2~3週間ほどで暑さに強い体作りができると言われています。サイクリングもいいですね。買い物ついでに30分ほど自転車を漕げば、週3回程度でOKです。
 
西村)それならできそうな気がしますね。
 
前田)これからは、カラっとした暑さからムシムシした暑さに変わっていきます。日中はなるべく無理をしないようにしてください。運動が難しい人は、お風呂に浸かるだけでも汗をかく練習になります。2日に1回はお湯に浸かることを心がけると暑熱順化につながります。
 
西村)お風呂の温度はどれぐらいが良いですか。
 
前田)少し低めの40度か、40度より少し低いくらいが良いです。少し長めに10~15分は入浴しましょう。体を洗う前、洗った後などに分けてもOK。肩まで浸かってしっかりと温まりましょう。
 
西村)今のうちからしっかりと対策していきましょう。きょうは、MBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんに教えていただきました。