ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん
西村)5月17日(水)に大阪では今年初の真夏日を観測しました。5月にも関わらず30度を超える暑さ。熱中症にならないかと心配です。
きょうは、熱中症の予防法についてMBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんにお話を伺います。
前田)よろしくお願いいたします。
西村)この1週間、暑かったですね。
前田)急に暑くなりましたね。5月17日(水)の大阪の最高気温が30.3℃。今年初めての真夏日となったほか、内陸部では35℃近くとなり、近畿地方では猛暑日に迫る暑さのところもありました。
西村)5月なのにこんなに暑いとは。
前田)意外と5月は30℃を超えることがあります。雨が続いて気温が低い中で、急に気温が上がると熱中症のリスクが高くなります。
西村)温度差に体がついていかないですよね。天気予報を見ていると、ここ数年「熱中症警戒アラート」という言葉をよく聞くようになりました。
前田)熱中症警戒アラートは、2021年から発表されるようになりました。近年、過去にない暑さにより、熱中症のリスクは高まってきています。国は危険視して、暑さに対する警報=熱中症警戒アラートを出すようになりました。
西村)熱中症警戒アラートはどんなときに出されるのですか。
前田)熱中症警戒アラートは暑さ指数に基づいて発表されます。気温だけではなく、湿度と輻射熱(照り返しの熱の効果)を加味して、導き出される数値が暑さ指数。暑さ指数はこの3つの割合から算出されるのですが、気温は1割、輻射熱が2割、残りの7割は湿度なんです。
西村)気温よりも湿度が重要なのですね。
前田)湿度が高いと汗が蒸発しにくいので、熱を発散することができません。暑さ指数は湿度が重要なのですが、この時期は空気がカラっとしていますよね。だから熱中症警戒アラートが発表されるまでの暑さ指数には達していないんです。
西村)熱中症警戒アラートが出ていないけど、熱中症には気をつけないといけないですよね。
前田)兵庫医科大学の服部先生のお話では、今年は特に熱中症に注意警戒が必要だということです。この3年間、コロナ禍で自粛生活が続いていた影響で、体の水分を蓄える筋肉量が全世代で落ちています。
西村)ステイホームが続いて、以前にくらべて運動する機会も少なくなっていますよね。わたしも運動不足を感じています。
前田)筋肉量が落ちているということは、汗をかきにくくなっているということ。気温が高くなくても熱中症に注意が必要です。暑さに対応できない体になってしまっている可能性があるからです。晴れて日差しの強い日は、特に熱中症に注意が必要です。強い日差しのもとでは気温がそれほど高くなくても体感温度が上がります。1ヶ月後の6月21日の夏至にむけて太陽のパワーも強くなってきているので、直射日光をいかに避けるかが、この時期の熱中症対策のポイントです。
西村)帽子をかぶる、日傘を使う、日陰を歩くというのも効果的ですか。
前田)はい。木陰に入るだけでも体感温度が変わります。この時期はうまく日差しを避けることを心がけてください。農作業や学校の体育の授業での熱中症も心配されます。体調管理に気を付けましょう。
西村)バーベキューの予定もあります。久しぶりの野外レジャーで気持ちも高まりますけど、そういうときこそしっかりと熱中症対策をしないといけませんね。何かおすすめの予防法はありますか。
前田)暑い時期に向けて、暑さに強い体作りをしていくことが大切です。
西村)コロナ禍で運動不足になっている人も多く、筋肉量が落ちてきているからこそ、暑さに強い体作りをしなければいけませんね。
前田)暑さに対する適応能力を高めていくことを、「暑熱順化」と言います。暑さに慣れていくという意味です。
西村)どんなことをしたら良いのでしょうか。
前田)汗をうまくかけるようになるために、日常に少しずつ運動を取り入れていきましょう。ウォーキング、ジョギング、サイクリング等を暑い昼間に行うのではなく、涼しくて活動しやすい朝や夕方に行うと良いです。
西村)朝焼けや夕焼けも綺麗ですし。夜は月を見ながらランニングやサイクリングをするのも良いですね。
前田)気分転換にもよさそうですよね。もっと手軽なのは、お風呂に浸かることです。
西村)お風呂ならすぐできますね。
前田)暑くなってくるとシャワーで済ませてしまいがちですが、しっかり湯船にお湯をはって入浴することが大事。10~15分ほど浸かって体を温めれば、汗をかく練習になります。
西村)お湯の温度は何℃ぐらいが良いですか。
前田)40度くらいが良いです。肩までしっかり浸かりましょう。入浴の前後には、コップ一杯のお水、スポーツドリンクなどで水分補給を忘れずに。
西村)入浴の後だけではなく、前後に水分補給をするのですね。
前田)入浴前に水分をとっておくと、汗をかくための水分が補われます。
西村)熱中症は、室内にいるときも注意が必要と聞きます。
前田)熱中症は外でバタっと倒れるイメージがありますが、室内で静かに体調が悪くなっていくパターンが多いです。高齢者に多いので、周りの人も気をつけてあげることが大事です。気温の高い時期は、エアコンなどをうまく使って室内の温度を下げましょう。
西村)室温は何度ぐらいがちょうど良いですか。
前田)25~28℃ぐらいが適温です。28℃だと高すぎる場合は、自分の体温と相談しながら調節してください。これからエアコンを使う頻度が増えてくると思うので、今のうちに正常に動くか確認をしておいてください。
西村)いざ使わないといけないときに動かない、掃除をしていなくてカビが充満...なんていうことも。
前田)今は、エアコンの試運転にオススメの時期です。少し低めの16~18℃に温度設定をして、10分ほど運転してみてください。きちんと冷たい風が出ているか、異常を示すランプが点滅していないか等を確認しましょう。気になる場合は、さらに30分ほど運転し続けて、室外機から水漏れがしていないか、変な臭いや異音がしないかも確認。6月になるとエアコンの点検や修理がすごく増えるそうです。暑いシーズンに間に合わない、なんてことにならないように早めにエアコンを動かしておきましょう。
西村)これを機にエアコンの掃除もして、室外機もきちんと動くかチェックしておこうと思います。高齢者以外にも熱中症に注意するべき年代はありますか。
前田)子どもは地面からの熱を受け取りやすいので十分に注意が必要。ペットも散歩のタイミングを考えて、熱中症に注意をしましょう。肉球を火傷してしまう例もあるようです。
西村)外にいるとき以外でも、室内で集中してパソコンに向かっているときなどついつい水分補給を忘れることがあります。
前田)作業に没頭してしまって午前中1度も水を飲んでない、ということもよくあると思います。そんなときこそ、意識的に時間を決めて水分補給をしてください。アラームを1時間おきに設定して、鳴ったらコップ一杯の水分をとる。自分が忘れないための工夫をしましょう。
西村)水分補給のためにアラームを設定する方法は、おじいちゃんやおばあちゃんにも伝えたいですね。
前田)1リットルのボトルを用意して、仕事を始めてから帰るまでに飲みきることを心がけるという方法もオススメです。
西村)今の時期、紫外線にも注意が必要ですか。
前田)地上に届いている紫外線にはUVA(紫外線A波)とUVB(紫外線B波)の2種類があります。しわやたるみの原因になるのが、UVA。5月は真夏と変わらないぐらいのUVAが地上に届いています。紫外線量が増えるのが4~5月。初夏の紫外線対策のポイントは、室内でもなるべく日焼け止め対策をすること。太陽の高度が完全に高くなっていないので、西日など横から入り込んでくる光が多いです。
西村)オフィスや教室、車の中でも油断できませんね。
前田)しわやたるみの原因になるUVAは、窓ガラスを通り抜けて入ってきます。ちょっと油断していたら肌が真っ赤になることもあるので要注意です。日やけ止めは去年のものが残っている人も多いのではないでしょうか。
西村)去年のものは使っても良いのですか。
前田)変な匂いがしたり、変色したりしていなければ使っても大丈夫。目安として、未開封でも3年以内には使い切ってください。開封したものは、なるべく早めに使い切りましょう。
西村)3年以上経っているものは、肌トラブルにもつながるということで注意が必要ですね。
前田)これから梅雨シーズンになりますが、曇りでも6割くらい、雨でも2~3割の紫外線が地上に届いています。晴れていなくても、紫外線対策・UV対策は心がけてくださいね。
西村)紫外線対策、熱中症対策に気をつけていきましょう。美味しいものをしっかり食べて、お風呂にもゆったり浸かって、暑さに強い体を作っていきたいと思います。
きょうは、MBSお天気部 気象予報士の前田智宏さんにお話しを伺いました。