第1401回「災害時のトイレ対策」
オンライン:チーム・トイレの自由 代表 長谷川高士さん

西村)1995年の阪神・淡路大震災では、断水によって水洗トイレが長時間に渡って使用できなくなり、避難所や公衆トイレは瞬く間に不衛生な状態になりました。その上、バキュームカーも不足して、"トイレパニック"という言葉が生まれたそうです。
きょうは、災害時のトイレ対策について、全国で講演活動などを行っている「チーム・トイレの自由」代表 長谷川高士さんにお話を伺います。
 
長谷川)よろしくお願いいたします。
 
西村)過去の災害では、どのようなトイレ問題がありましたか。
 
長谷川)断水で水洗トイレがいつも通りに使えなくなりました。水洗トイレが使えなくなるととても困ります。28年前の阪神・淡路大震災以来、水洗トイレが使えなくなったときのための災害用トイレがいくつも開発されました。30年近くたって、種類が増え、品質も良くなっています。ところが実際は、災害用トイレが十分に備えられてないことが多く、災害時のトイレは不便なままです。
 
西村)2016年の熊本地震でもトイレ問題が発生していたそうです。
 
長谷川)建設現場や大きなイベントで使われる箱型の仮設トイレは段差があり、大きな障害になります。足腰が丈夫な人ばかりではありません。そのようなトイレは入りづらく、綺麗ではなので、トイレに行きたくないという気持ちにさせてしまいます。
 
西村)わたしたちは、どのようなトイレ対策をすればよいのでしょうか。
 
長谷川)みなさんに覚えておいてほしいことがひとつあります。「災害時に出た排泄物はゴミに出すことができる」とうこと。ただし、「水気は吸わせきる」ということが大事です。
 
西村)排泄物はゴミに出すことができるのですね。具体的にどのように捨てたら良いのでしょうか。
 
長谷川)水洗トイレの便器に袋をかぶせて、そこに用をたしたあと、その水気を吸わせる何かが必要になります。まずは袋と水気を吸わせる何かを用意してください。
 
西村)袋は何でも良いですか。
 
長谷川)何でも良いですが便器にかぶせるために、45Lサイズの袋をおすすめします。袋は二重にしてください。便器には水がたまっていますね。この水は理由があってたまっているので抜かないでください。便器にかぶせた袋を引き上げると外側が濡れてしまうので、水に濡れないようにするための袋をかぶせておいて、その上に袋をかぶせるとゴミに出すときに濡れなくて済みます。
 
西村)水に接している袋はそのまま置いておいて、上の袋だけ捨てるのですね。水気を吸わせるものはどんなものが良いでしょうか。
 
長谷川)水気を吸うために作られたものが家の中に一つ二つあると思います。紙おむつや尿取りパッドなどです。水気を吸うために作られたものなら何でも良いです。猫砂(猫用のトイレ)も良いですね。
 
西村)ペットシーツも使えますか。
 
長谷川)はい、使えます。水気を吸う目的で作られたものではないですが、新聞紙も良いですね。本来の用途が終われば古新聞となり、水を吸ってくれます。
 
西村)新聞紙は4つ折りにして保管していますがそのまま入れても良いですか。
 
長谷川)そのままでの良いですが、細かくちぎった方が紙の表面積が増えて水気を吸わせやすくなります。
 
西村)災害時、避難所や家で何もやることがないときに家族で新聞紙をちぎったら、ストレス発散になって良いかもしれないですね。とにかく用意しておくことが大事ですね。非常用トイレも買っておいた方が良いですか。
  
長谷川)非常用トイレ、携帯トイレ、簡易トイレと呼ばれるものはすべてゴミに出せます。中には、水気を吸わせる凝固剤(吸水性樹脂)が入っています。それらは水気を吸わせるもののうちのひとつ。最善というわけではないので、何か変わりになるものがあれば良いです。
 
西村)想像以上にいろんなものがトイレとして使えるということがわかりました。普段、燃やせるゴミの日に捨てる子どものオムツは、ゴミ袋3分の1ぐらいの量ですが、災害時に家族分の排泄物をゴミに出すと、かなりの量になるのでは。臭いも心配になります。排泄物は本当にゴミとして出しても大丈夫なのでしょうか。
 
長谷川)大丈夫です。元々ゴミは臭いもの。臭いゴミは出せないということはありません。ゴミに出すまでの間、しばらく家の中で保管をしておかなければならないことに抵抗がある人が多いです。
 
西村)置いておく場所に困りますね。どんなところに置くと良いですか。
 
長谷川)外に置くのが一番外良いですが、雨ざらしになるのも困りますね。
 
西村)我が家では、蓋付きの大きめのクーラーボックスにゴミを入れて保管しています。蓋付きの容器を用意しておいたら良いですか。使わなくなった衣装ケースも利用できそうですね。
 
長谷川)良いと思います。蓋があった方が良いですね。
 
西村)排泄物を捨てるときのポイントはありますか。
 
長谷川)「水気を吸わせきること」これが最大のポイントです。
 
西村)水気があると万が一、袋が破れたときに大変なことになりますね。
 
長谷川)オムツなどに水気を吸わせたら、そのような心配はなく安心できますよね。それ以外にやってほしいことが3つあります。まず一つは、空気を抜くこと。袋に空気が入ってしまうと破れやすくなり、かさが増えてしまうので、なるべく空気を抜いて結んでください。2つ目は、袋に何が入っているかを書くこと。ゴミの量は増えると思いますが、収集してくれる人はプロなので信頼してください。でも何が入っているかが一目でわかった方が良いです。排泄物が入ったゴミとそれ以外のゴミを分けてください。排泄物が入った袋には、「トイレゴミ」と書くとわかりやすいと思います。3つ目は臭いについて。蓋付きの容器があれば臭いを抑えることができますが、毎回開けるのはストレスだと思います。最近は、ドラッグストアやベビー用品店で防臭袋が売られているので活用してみてください。
 
西村)ピンク色の少し分厚めの袋ですよね。子どものオムツを入れると臭いがしなくなります。
 
長谷川)知らない人も多いと思います。防臭袋を余分に備えておくと臭いのストレスを軽減することができます。
 
西村)ゴミ収集者への配慮も忘れずにしたいですね。「災害時に出た排泄物はゴミに出すことができる」「水気はしっかり吸わせる」というということを覚えておきたいと思います。
 
長谷川)「排泄物をゴミに出す」という方法は、これまでの災害で多くの人が思いつかなかったこと。「知っていれば、つらい思いをしなくて済んだ」というお話をたくさん聞きました。このような方法を知っていただけるように活動しています。
 
西村)しっかり備えて、体験しておくことが大事ですね。
きょうは、災害時のトイレ対策について「チーム・トイレの自由」代表 長谷川高士さんにお話を伺いました。