第1485回「災害とコンビニ」
オンライン:国立研究開発法人 防災科学技術研究所 宇田川真之さん

西村)新生活が始まります。新居での災害への備えはできていますか。今、コンビニ各社が「ローリングストック啓発キャンペーン」を行っています。災害への備えとして、災害時にコンビニはわたしたちを支えてくれるそうです。
きょうは、民間と行政の連携に詳しい国立研究開発法人 防災科学技術研究所 宇田川真之さんとオンラインでつながっています。
 
宇田川)よろしくお願いいたします。
 
西村)コンビニ各社が行っている「ローリングストック啓発キャンペーン」とはどんなキャンペーンですか。
 
宇田川)ローリングストックとは、普段わたしたちがお店で買うお気に入りの商品を少し多めに買って、使った分を買い足すことで、普段よりも少し多めにストックをする方法です。ローリングストックをすることで災害時も安心できます。「ローリングストックの啓発キャンペーン」は、各社それぞれではなく、コンビニ全体で実施しているキャンペーンです。各社が競い合うのではなく、連携して災害対策をした方がみなさんに届くからです。
 
西村)何社のコンビニが連携して、いつからこの活動をスタートさせたのでしょうか。
 
宇田川)「日本フランチャイズチェーン協会」がホームページを作り、今年の1月からはじめました。コンビニ全7社が連携して行っています。
 
西村)コンビニに寄ったついでに、いつもの商品をひとつ多めに買うことが災害への備えになるのですね。
 
宇田川)備蓄にもいろんなやり方があります。企業や行政による備蓄品は、災害が起きたときに持ち出すので、普通の商品より保管が長いものが多いです。みなさんが行うローリングストックは、自宅に置いておくものなので、長く保管できるものではなく、普段買っている商品でかまいません。それぞれにお気に入りの味や柔らかさがあると思いますし、カロリーや栄養素に配慮する場合もあると思います。自分が普段買っているものを1~2つ多めに買って自宅に置いておくだけで良いです。
 
西村)どんなものを備蓄したら良いのか、コンビニ各社から発信していますか。
 
宇田川)各社のホームページで発信しています。「日本フランチャイズチェーン協会」のホームページには各社へのリンクもあります。コンビニにおいてある商品のメーカーのリンクもあるので、どんなものを買おうか探すときに、参考になりますよ。
 
西村)食べ慣れたもの、お気に入りのお菓子やコーヒーなど、ホっと一息つけるものを多めに買っておくのも良いですね。今回の啓発活動では、何日分の備蓄を推奨していますか。
 
宇田川)目安は7日分。でも、それ以上買ってはいけないということではないので、自宅のスペースに応じて備蓄しましょう。
 
西村)緊急物資はすぐに届かないので、各家庭での備えが大切です。災害が起こった後は、どのようにコンビニを活用することができますか。
 
宇田川)コンビニは地域に根ざしたものなので、可能な範囲で協力ができるように取り組んでいます。地震などがあると、電車が止まって、多くの人が歩いて帰ったり、出社したりしなければならないことも。長い距離を歩いて家や勤務先に向かわなければならないとき、関西広域連合との協定に参加しているコンビニが水道水やトイレの提供、道路状況の情報提供をしてくれます。
 
西村)コンビニと自治体との間に協定が取り決められているのですね。
 
宇田川)災害時における「帰宅困難者支援協定」に協力している店舗には、ステッカーが貼ってあります。黄色ベースに青いハートマークが描いてあります。
 
西村)青いハートマークに足がついたキャラクターが描かれているステッカーですね。見たことがあります!このステッカーが貼ってあるコンビニエンスストアは、災害時にわたしたちを支援してくれるのですね。
 
宇田川)可能な範囲で、水やトイレ、道路情報の提供をしてくれます。
 
西村)「災害時には、徒歩帰宅する皆様を支援します」という文字も書かれています。新しく通う職場や学校の近くのコンビニにこのステッカーが貼ってあるかをチェックしておくと良いですね。
 
宇田川)1~3時間の距離なら、一度歩いてみることをオススメします。普段歩いて会社に行くことはないと思うのですが、道中のどこにコンビニがあるかを確認しておくと、より良いと思います。
 
西村)暖かくなってきましたし、散歩がてら、コンビニの「災害時帰宅支援ステーション」の黄色いステッカーが貼られているお店がどこにあるかチェックしてみたいと思います。災害時にはコンビニは心強い存在ですが、大きな地震や災害が起きると、コンビニ自体も被災するのではないですか。
 
宇田川)店自体が壊れてしまうこともありますし、働いている人が怪我をすることも。工場や道路の被災により、商品が届かないこともあります。普段からローリングストックをすることが大事です。
 
西村)従業員も出社できないかもしれません。
 
宇田川)コンビニ業界は、わたしたちと同じような一般市民がオーナーになっています。5~6年前にコンビニのオーナーの負担が大きいことが社会的にも問題になりました。ほかにも食品ロスの問題などさまざまな問題をコンビニ業界全体で取り組んできた経緯があり、一環で防災対策にも取り組んでいます。そこには、地域に貢献していきたいという業界の想いがあります。
 
西村)わたしたちにとって、日頃の生活に欠かせないコンビニ。旅行に行ったときでも、いつものコンビニがあると安心します。トイレに行きたくなったら、コンビニに駆け込むこともありますが、災害時には使えなくなるかもしれないということも覚えておきましょう。災害時は、自治体と企業が連携して対策していくのですね。
 
宇田川)一番大事なことは、行政や企業に頼らずに、わたしたち1人1人が対策して備えておくということ。商品を自分で買って備えなければ、防災にはなりません。災害対策は、誰かがやってくれるものではありません。「普段買っているお気に入りの商品をもう少し買っておこうかな」と意識することが、防災を考えるきっかけになればと思います。
 
西村)きょうは、国立研究開発法人 防災科学技術研究所 宇田川真之さんにお話を伺いました。