第1479回「危険な豪雪をもたらす"線状降雪帯"」
オンライン:三重大学大学院 教授 立花義裕さん

西村)先週、今シーズン最強で最長の寒波が日本列島を襲いました。北日本から西日本の日本海側を中心に記録的な大雪が続き、空の便をはじめ、多くの交通網に影響が出ました。この大雪をもたらしたのは、線状降雪帯とみられています。
きょうは、気象に詳しい三重大学大学院 教授 立花義裕さんとオンラインでつながっています。
 
立花)よろしくお願いいたします。
 
西村)線状降雪帯とはどのような現象ですか。
 
立花)夏によく聞く線状降水帯は、強い雨がずっと同じ場所に降る現象です。冬の線状降雪帯は、朝鮮半島から日本列島に向かって、日本海上に線状に強い雪雲が伸びる現象で、非常に長い間雪が降ります。雪雲が線状になっていて、集中豪雨をもたらす線状降水帯と形が似ているので、線状降雪帯と名付けて注意喚起をしています。
 
西村)線状降雪帯は、危険な雪をもたらすのですね。昔からこのような現象はあったのでしょうか。
 
立花)昔もありましたが、今の方が雪雲の強度が強くなっています。今年は観測史上一番の雪が降っています。
 
西村)30~40年ぐらい昔の方が、雪がたくさん降って寒かった記憶があるのですが...。
 
立花)昔の方が寒かったです。でも今は寒くなくてもドカ雪が降ります。
 
西村)なぜですか。
 
立花)背景には地球の温暖化があります。
 
西村)地球温暖化は、夏が暑くなるだけではないのですね。
 
立花)冬の豪雪も地球温暖化がかかわっています。冬も日本海の海面水温が異常に高くなっています。猛暑によって水温が高いまま冬になったことにより、高い水温の海から水蒸気がたくさん蒸発して強い雲になります。冬になって寒くなったらそれが雪雲になる。しかし、あたたかかったら、雪ではなく雨になるはずですよね。なぜ雪が降るかというと、温暖化に伴って寒気が来るからです。それは偏西風という風の激しい蛇行が原因なんです。
 
西村)偏西風は西から東へ穏やかに流れていくイメージですが。
 
立花)偏西風が温暖化に伴って激しく南北に蛇行することによって、寒気が北から南にさがってくる。偏西風の北側には寒気、南側には暖気があります。偏西風が南に蛇行すると寒気が北極から日本付近に降りてくるんです。温暖化になればなるほど、編成風は激しく蛇行して、寒気が日本付近にきやすくなります。地球全体では温かいのですが、冬は激しく偏西風が蛇行して、日本付近は特に寒気がおりてきやすい。上空の寒気で雪雲が発達し、海水が暖かいから降水量が増える。両方の影響が相まって、ドカ雪が降るというわけです。
 
西村)まさかそんなことになっているなんて...。
 
立花)ドカ雪が降る背景には温暖化があるのです。夏は非常に暑く、冬は雪がたくさん降る。春夏秋冬の四季ではなく、夏と冬だけの二季になる時代が来るかもしれません。
 
西村)過ごしやすい春や秋がなくなるかもしれないのですね...。
 
立花)夏は猛暑で豪雨が降って、冬は寒波で豪雪が降ります。春と秋がどんどん減っていくでしょう。
  
西村)雪の降る量は昔とは変わっているのでしょうか。
 
立花)ひと冬を通して降る雪の量は減っていますが、1回で振る雪の量は増えています。昔はじわじわと雪が降って、いつの間にか雪が積もっていました。最近は、いきなり雪が降ってきます。運転しているときになどに急に雪が降ってくると危険です。
 
西村)線状降水帯のように、線状降雪帯の予測はできるのですか。
 
立花)ある程度できますが、線状なので、どこに雪雲がくるかを予測するのは難しいです。雪が降っていても隣の町では晴れていることも。車を運転する人は注意が必要です。気象情報に気をつけましょう。
 
西村)急に線状降雪帯の雪雲の中に入ってしまって、雪が降ってきたらタイヤのチェーンをつけていなかった...ということもありそうですね。
 
立花)気象情報はきちんと見て、雪対策をして車を運転しましょう。
 
西村)豪雪の対策について教えてください。
 
立花)最近の気象予報は2日後ぐらいまでは結構当たります。気象予報を確認して、雪が降りそうな場所に行くときはあらかじめ対策をしましょう。ただし、線状降雪帯のような小さな現象は、予測が難しいので直前の気象情報も確認しましょう。
 
西村)将来は、線状降雪帯の的確な予測を出せるようになるのでしょうか。
 
立花)海面水温の高さが雪の量に影響するので、海面水温がわかれば雪の量もわかります。観測船が日本海に行って装置で海水温度を測ります。
 
西村)地球温暖化になる前は、海面水温は何度ぐらいだったのすか。
 
立花)場所によって違いますが、地球温暖化になる前に比べて今は約2~3度上がっています。4度くらい高い場所も。これは異常です。夏の間は平年よりも5度くらい高かったです。
 
西村)何年前から海水温度が上昇しているのですか。
 
立花)約2年前からです。急に海面水温が2~3度上がって、場所によっては4~5度ぐらい高い。こんなことは今までありませんでした。海水温が高いので、寒気が来なければ日本列島は暖冬になる。でも偏西風が激しく蛇行して、北極の寒気が日本に来ることで豪雪になる。これからの冬は、温かいか豪雪というふうに極端化するでしょう。これが温暖化時代の冬です。
 
西村)わたしたちは、しっかりと備えなければいけませんね。
 
立花)世界の中でもこれだけドカ雪が降る場所は日本以外にありません。日本のみなさんは、地球温暖化に対してもっと敏感になってほしいですね。
 
西村)温暖化に対して敏感になって、備えるにはどうしていったらいいですか。
 
立花)四季から二季からなるのは嫌ですよね。日頃から温暖化の原因である二酸化炭素を減らすような行動をしてほしいです。
 
西村)きょうは、線状降雪帯について、三重大学大学院 教授 立花義裕さんにお話を伺いました。