第1481回「能登半島地震 ボランティア不足の原因は?」
オンライン:全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)事務局長 明城徹也さん

西村)能登半島地震では、発生から3ヶ月で集まったボランティアの人数が熊本地震の半分と、ボランティア不足が復興の遅れにもつながりました。ボランティアはなぜ集まらなかったのか。
きょうは、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)事務局長 明星徹也さんにお話を伺います。
 
明星)よろしくお願いいたします。
 
西村)全国災害ボランティア支援団体ネットワークはいつごろ発足したのですか。
 
明星)東日本大震災をきっかけに2016年にNPO法人として設立されました。
 
西村)どんな活動をしているのですか。
 
明星)東日本大震災当時、個人のボランティアに加えて、たくさんのNPOなどの支援団体が現地に駆けつけました。しかし、団体同士や行政、ボランティアとうまく連携ができませんでした。全国災害ボランティア支援団体ネットワークは、そのような団体の受け入れ調整をするためにできた組織です。災害時は現地で調整役を務めています。
 
西村)実際にはどんなことをするのですか。
 
明星)現地に入った団体の活動状況、被災者のニーズを教えてもらって、現地だけでは解決できない問題の解決策を行政とともに考え、支援をつないでいます。
 
西村)例えば「がれきの撤去をしてほしい」という被災者からのお願いがあったら、担当する人を調整するのですか。
 
明星)住民からのニーズにはボランティアセンターが対応します。その中で、なかなか解決できない課題について、県や国と話し合いをしたり、経験のある団体からアドバイスをもらってノウハウを現場に伝えたりしています。
 
西村)大事なお仕事ですね。
 
明星)ボランティアとひとくくりで言っても、個人のボランティアもいれば、災害支援を専門とする団体もあります。JVOADは、主に支援経験のある団体同士の調整と行政との調整をしています
 
西村)専門性のあるボランティアにはどんなものがありますか。
 
明星)重機を使った瓦礫の撤去や床下の泥の撤去、屋根瓦の応急処置などができる団体のほか、避難所運営のノウハウ、子どもやペット、要配慮者への支援などさまざまな得意分野を持った団体があります。
 
西村)さまざまなボランティアが必要だと思うのですが、能登半島地震では、なぜボランティアがなかなか集まらなかったのでしょうか。
 
明星)ひとつは、半島の先端の被害が大きかったという地理的な要因。アクセスの問題のほかに正月休みに地震が起きてしまったという時期的な要因もあります。熊本地震のときは、地震後にすぐにゴールデンウィークに入ったので、たくさんのボランティアを受け入れることができました。現場の被害が大きく、受け入れ態勢を整えるのに時間がかかってしまいましたが、1月2日から奥能登で活動を始めた団体もあります。専門性を持った団体は早く動いていたのです。
 
西村)ボランティアが寝泊まりする場所がなかったのは、受け入れ態勢が整うまでに時間がかかったからですか。
 
明星)行政の職員も宿泊先がないので、役場で雑魚寝せざるを得なかった。支援者は車中泊をする状況が続きました。水も出ない、トイレも不足している、余震が多いという状況だったので、ボランティアは行きたくても行けなかったと思います。企業も社員ボランティアを出したいけど、危険性があるところには出しづらいとう声もありました。
 
西村)能登半島地震の4日後に石川県知事が「一般のボランティアは控えてください」と発信し、SNSでも拡散されました。これも要因のひとつですか。
 
明星)石川県の発信の中には、NPOとの連携を進めることも同時に言っていたので、一概には言えません。専門性を持った団体は初期から活動していました。一般のボランティアが全て止められてしまったと捉えられて自粛ムードになってしまったのだと思います。
 
西村)行政とボランティアの関係はどうでしたか。
 
明星)NPOは、各市町村と情報共有の場が設けられ、行政からの情報も入っていました。徐々に連携体制ができていきました。
 
西村)行政と現地のニーズのギャップを感じることはありましたか。
 
明星)現地のNPOからは「避難所ですぐに食べられるものが届かない」という声が上がっていました。一方で、行政には町各市町に食料が届いていたと報告があり、認識のずれがありました。行政は届けたものは、賞味期限の長いレトルト食品で、すぐに食べられるものではなかったので、NPOが炊き出しを続けていたのです。
 
西村)今後、同じことを繰り返さないためにはどうしたら良いと思いますか。
 
明星)受け入れ体制、連携体制を平時からしっかりと作っておくこと。多様な支援ができる団体が多く集まることで、さまざまな支援が可能になります。受け入れ体制を作っていくこと、支援の担い手を増やしておくことが必要です。
 
西村)能登では、去年の元日に発生した地震の前にも、大きな地震がありましたが、事前の取り決めはしていなかったのでしょうか。
 
明星)1年前の地震で大きな被害があった珠洲市では、NPOとの連携が進められていました。初期から被災家屋の瓦礫の撤去や福祉的な支援ができる団体の連携がスムーズにできていたと思います。
 
西村)事前のつながりや備えが大切なのですね。わたしたちがボランティアにいくときは、どのように行動したら良いですか。
 
明星)まずは現地の情報をしっかりと確認すること。受け入れ体制が整っていない中で行ってしまうと、限られた現地のリソースをつかってしまうことになり、現地のリスクを高めることになります。ボランティアの自主性・自発性を活かすためにも、しっかりと現地の情報を確認することが大事。ボランティアセンターや災害中間支援組織を通すのか、行政と相談しながら進めるのかなど、事前に考えておくことが大事です。
 
西村)現在は、ボランティアの数は足りていますか。
 
明星)地域差があります。時間が経つと進捗に差ができてくるので、事前の確認が必要です。
 
西村)いろんな支援があるということは、自分にもできることがあるということ。情報を集めて、わたしも能登に行きたいと思います。
きょうは、能登のボランティア不足について、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)事務局長 明星徹也さんにお話を伺いました。