第1487回「相次ぐ山林火災」
オンライン:東京理科大学 教授 桑名一徳さん

西村)2月26日に発生した岩手県大船渡市の山林火災。焼失面積は、大船渡市全体の9%にあたる約2900ヘクタールで、平成以降、国内の山林火災では最大となりました。先月は岡山市や愛媛県今治市などでも山林火災が相次いでいます。
きょうは、春に多いと言われる山林火災について東京理科大学教授 桑名一徳さんに聞きます。
 
桑名)よろしくお願いいたします。
 
西村)大船渡市の山林火災は、なぜあんなに燃え広がったのでしょうか。
 
桑名)主な原因は極度な乾燥と強風。2月は、大船渡市は記録的に雨が少なく、18日から乾燥注意報が出されていました。山林の落ち葉や枯れ枝が極度に乾燥していた状況でした。火災が発生した日は、平均風速7.7m、最大瞬間風速が18.1mの強風を観測。この強風で急速に燃え広がったのだと思います。風が強かったのでヘリコプターによる水の空中散布も困難で、飛び火も起きてしまいました。
 
西村)さまざまな要因が重なってあんなにも燃え広がってしまったのですね。この時期は山林火災が多い時期なのでしょうか。
 
桑名)毎年春先は山林火災が多い時期。2~5月は全体の約5割の山林火災が起こるというデータもあります。この時期は山林火災に注意が必要です。
 
西村)山林火災の主な原因は何ですか。
 
桑名)たばこのポイ捨て、焚き火、野焼き、放火など人為的な要因が多いです。
 
西村)大船渡市の山林火災の原因はわかったのでしょうか。
 
桑名)原因は発表されていません。
 
西村)大船渡市は、2月26日に山林火災が発生して、3月初旬にまとまった雨が降りましたよね。その後、3月9日に鎮圧宣言が出ましたが、まだ鎮火には至っていないということ。鎮圧と鎮火の違いはなんでしょうか。
 
桑名)鎮圧は火の勢いが抑えられて延焼する危険性がない状態。一方、鎮火は完全に火が消えて、燃え広がる危険性がない状態です。
 
西村)規模が大きい火災では、鎮火を宣言するのも難しいのでしょうか。
 
桑名)今回のような大規模な山林火災では難しいです。表面の葉っぱを掘ると火種がくすぶっていることも。くすぶっている火を見つけることはほとんど不可能。鎮圧に時間がかかり、鎮火を判断するにはすごく時間がかかります。
 
西村)消火する水を準備するのも大変なのでは。
 
桑名)空中散布で水をたくさんかけるのですが、水を準備するのも大変です。消防隊員や消防団が水をしょって山に登ることもありますが、たくさんは持っていけません。山の奥や葉っぱの下まで水をかけるのは難しいのです。
 
西村)大船渡市の山林火災では、どこから水を用意したのでしょうか。
 
桑名)海水を使っていたかもしれませんが、山の生態系にたくさん塩水をかけるのは良くないという問題も。大規模な山林火災では水をかけてもなかなか火が消えません。
 
西村)今回の山林火災は、平成以降で国内最大規模となりました。今までの山林火災と異なる点は。
 
桑名)今回の山林火災は、通常では考えられないぐらいの延焼速度でした。極度な乾燥などが原因だと考えています。地球温暖化による気候変動も関係しているかもしれません。
 
西村)アメリカのカリフォルニアでも大きな山林火災がありました。カリフォルニアの山林火災も地球温暖化が関係しているのでしょうか。
 
桑名)一般にはそのように理解されています。地球温暖化が起こると気候が極端になります。雨がたくさん降ったり、全然降らなかったり。今までにはなかったような乾燥状態となり、延焼速度が速くなることも。たばこのポイ捨てや野焼きも乾燥がひどいと山火事につながってしまいます。温暖化による異常気象の影響は大きいと思います。風が強いときや乾燥が続いているときは、なるべく野焼きをやらないようにしましょう。どうしても必要なときは、十分注意をして行いましょう。
 
西村)山林火災は、岡山市や愛媛県今治市など各地で発生しています。山林火災は、今後どこの地域でも起こり得ることなのでしょうか。
 
桑名)山林火災はどこでも起こり得ます。乾燥状態なら、ちょっとした火種から山火事になってしまいます。人為的な要因が多いので、山の近くで火を使う場合は確実に消火をすることが大切。
 
西村)具体的にはどのように消火をすれば良いのでしょうか。
 
桑名)水をかけて消したつもりでもくすぶっていて、山火事になることもあります。十分な水を用意して、しっかり濡らして消すこと。周りに水を撒いて延焼を防ぐ対策も重要です。
 
西村)リスナーに改めて伝えたいことはありますか。
 
桑名)極端に乾燥すると火事につながってしまうことがあります。ほんのわずかなことが大変な火災につながってしまうので、「これぐらい大丈夫だろう」と思わないで、十分に注意してほしいです。
 
西村)キャンプに行ってバーベキューや焚き火をすることもあるかもしれません。自然の中での火の取り扱いには、くれぐれも気をつけましょう。
きょうは、春に多いと言われる山林火災について、東京理科大学教授 桑名一徳さんにお話を伺いました。