第1448回「防災気象情報をシンプルに!」
ゲスト:京都大学防災研究所 教授 矢守克也さん

河川の氾濫や土砂災害などへの警戒を呼び掛ける「防災気象情報」が見直されることになりました。これまでの「防災気象情報」は名称が複雑で、警戒レベルに統一性がなく"危険がわかりづらい"という声が出ていたためです。
「防災気象情報」は現在、洪水や土砂災害など住民の避難に関わるものだけでも20近くあります。2013年に"特別警報"、2019年には"5段階の警戒レベル"が導入されるなど、大きな災害をきっかけに情報が新設され、乱立気味になっていました。
今回の見直しで、分かりやすい情報提供ができるようになるのでしょうか。番組では、気象庁と国土交通省の有識者検討会の座長を務めた京都大学防災研究所教授の矢守克也さんに、「防災気象情報」がどう変わるのか、また、情報が出た場合に私たちはどんな避難行動をとるべきなのか聞きます。

(番組内容は予告なく変更する場合があります)

第1447回「線状降水帯と土砂災害」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

今年5月から線状降水帯の発生予測が都道府県単位で発表されるようになりました。線状降水帯は発達した積乱雲が次々と発生し同じ場所に連なる現象で、2018年の西日本豪雨や2020年の7月豪雨など、毎年のように日本のどこかで線状降水帯による豪雨が起こっています。
しかし、線状降水帯の予測は非常に難しいのが現状です。気象庁は6月27日~28日に「九州北部と山口県で線状降水帯が発生する恐れがある」と警戒を呼びかけましたが、この地域では発生せず、予測していなかった静岡県で線状降水帯が発生しました。私たちは線状降水帯に関する情報をどう受け止め、備えればよいのでしょうか。
7月1日には滋賀県米原市で土砂崩れが発生し、伊吹地区に「警戒レベル5」の「緊急安全確保」が発令されました。家に土砂が流れ込み、避難生活を余儀なくされている人もいます。土砂崩れが発生した時点での時間雨量はそれほど多くはなかったものの、10日間などの長いスパンで見ると、平年の2倍以上の雨量がありました。長く降り続くことで土壌に含まれる水分量が増え、土砂災害の危険性は高まります。
7月上旬の梅雨末期は、大雨や土砂災害への警戒が特に必要な時期です。
MBSお天気部の気象予報士・前田智宏さんに、線状降水帯や土砂災害について話を聞きます。

西村愛のひとこと
「線状降水帯の発生予測が出ていないから大丈夫」ではないのですね。 線状降水帯が発生しなくても、大雨になることもあります。予測情報が出たら警戒し、防災レベルを一段高めることが必要です。明るい内に早めの避難を!テレビやラジオの日々の天気予報をよく聞いて、早めに情報をキャッチしていきましょう。

第1446回「能登半島地震半年 輪島の今」
オンライン:柚餅子総本家中浦屋 代表 中浦政克さん

元日に発生した能登半島地震から半年が経ちます。災害関連死の認定が増え続けていて、直接死と合わせると、能登半島地震による死者は300人にのぼる見通しです。平成以降の地震災害では、東日本大震災(2011年)、阪神・淡路大震災(1995年)に次ぐ犠牲者数となります。
地元の海産物や野菜が並ぶ観光名所「輪島朝市」は、地震に伴う大規模な火災で壊滅状態になりました。今月初旬から公費解体が始まり、ようやく復旧に向けて第一歩を踏み出しましたが、朝市再開のメドは経っていません。
輪島朝市通りにあった老舗和菓子店「中浦屋」の店舗も火事で全焼し、工場も被災しました。しかし、中浦屋の4代目社長・中浦政克さんは、町の復興を信じて活動を行っています。番組では、輪島の今の様子を中浦さんに聞き、被災地の復興を考えます。
  
■中浦屋クラウドファンディング
https://nakauraya.shop/?mode=f35

西村愛のひとこと
輪島朝市周辺の公費解体が始まりましたが、中浦屋さんの店舗の解体はいつになるかわからないとのこと。中浦さんは「2007年の能登半島地震で学んだことを生かせなかった。行政だけでなく民間と連携して『やれる人がやる』という姿勢で平時から動いていくことが大切」と話します。日ごろからの連携が大きな備えになりますね。

第1445回「災害関連死を防ぐための高齢者ケア」
オンライン:東洋大学 教授(社会福祉学科)高野龍昭さん

能登半島地震では、石川県の審査会が今週、新たに22人を「災害関連死」と認定するよう答申を出し、関連死が52人にのぼる見通しとなりました。家屋の下敷きになるなどの直接死と合わせると、能登半島地震の犠牲者は282人にのぼることになり、2016年の熊本地震を上回ります。災害関連死の多くは高齢者で、高齢者ケアは重要なテーマです。
高齢者は環境の変化に脆弱な存在と言われています。避難先の不慣れな環境下で転倒・骨折が生じやすくなるほか、親しく話せる人がいないなどの"孤立"により、普段出来ていたことが出来なくなってしまうこともあります。肺炎や食事量の低下による尿路感染症のリスクも高くなります。
介護業界ではこうした移住によるストレスを「リロケーションダメージ」と呼び、さまざまな対策を考えています。趣味や運動などを通した交流、孤独を防ぐ見守りなどのケアが必要とされます。また、避難先でも普段の食器を使うなど、愛着を持つ日用品を置くことも大切です。
能登半島地震の被災地で今後の関連死を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。高齢者福祉や介護に詳しい東洋大学の高野龍昭教授に聞きます。
  
【能登半島地震支援】
学生・若者による足湯ボランティアを応援して下さい!

https://congrant.com/project/ngokobe/10525
  
西村愛のひとこと
生活環境が変わって不安を感じていたり、落ち着きを失ってしまったら‥。よく着ていた服を着るなど日常生活に馴染みのあるものを取り入れると、不安が軽減されて元の状態に戻ることも。周囲の人が認知症の症状を感じても、違うこともあるとのことです。昔の楽しかった頃の写真をみることも良いそうですよ!

第1444回「人はなぜ逃げないの?災害時の心理学」
オンライン:常葉大学 教授 河本尋子さん

もしも学校や職場、外出先などで"非常ベル"が鳴ったら、みなさんはどうしますか?すぐに安全な場所へ避難できますか?人間には、非常事態が迫っていても「大したことじゃない」「きっと大丈夫だろう」と思い込む心の安定機能「正常性バイアス」が備わっています。
「正常性バイアス」には、日常生活の不安や心配を減らすという大切な役割があります。しかし一方で、災害時の逃げ遅れにつながる恐れもあるそうです。津波や水害など、状況が少しずつ変化し目の前に大きな変化が見えにくいような災害時に「正常性バイアス」は働きやすく、注意が必要です。
ほかに、周囲にいる人たちに自分の行動を合わせてしまう「同調性バイアス」も、災害時の避難の妨げになりうる心の動きです。常葉大学・社会環境学部教授の河本尋子さんに、災害時に注意しなければならない2つの心の動きについて聞きます。
  
西村愛のひとこと
"正常性バイアス"は心の安定を保つための大事な機能。"同調性バイアス"の『みんなと同じ行動をしたくなる』こともわかります!それが誰にでもある心理だと言うことを知っておくことが大切ですね。災害時には『あ、今、バイアスがかかってるんじゃない?』と考えて、勇気を出して周りの人に避難の声かけをしましょう!

第1443回「内水氾濫の危険性」
オンライン:山口大学 特命教授(環境防災学)山本晴彦さん

大雨により下水道などから水が市街地にあふれる「内水氾濫」。その対策やインフラ整備はあまり進んでいません。内水氾濫は、市街地に短時間で局地的な大雨が降り、下水道などの排水能力が追いつかないときに発生します。洪水の可能性がある大規模河川は、堤防を高くして水位を上げる対策が取られているのですが、その結果、大雨が降ると、中小の河川に水が逆流してしまい、下水道や用水路などから水があふれることになるのです。
福岡県久留米市では、毎年のように内水氾濫が発生しています。筑後川流域で大雨が降ると、支流の水位が上昇し、深い所で1m50cmほど浸水してしまいます。都市部ではアスファルト舗装で水が地面に浸透せず、大きな被害になりやすいと指摘されています。
ただ、浸水可能性や下水道の排水能力などを計算するには時間もコストもかかるため、内水氾濫のハザードマップを整備している自治体は多くありません。どんな対策が必要で、私たちは何に気を付ければよいのか、山口大学特命教授の山本晴彦さんに聞きます。
   
西村愛のひとこと
都市部で特に注意が必要な"内水氾濫"。地下街で内水氾濫に巻き込まれたら、上の階へ垂直避難!山本さんは、土地の名前からも歴史をたどると、どんな場所かわかるとのこと。ハザードマップも活用して自分の住むところ、学校、職場がどんな場所で、どんな災害のリスクがあるのか調べて、対策・備えを進めておくことが大切ですね。

第1442回「今年も猛暑!気象情報の活用法」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

気象庁が今夏の3か月予報(6月~8月)を発表しました。今年の夏は、暖かく湿った空気が流れ込みやすく、全国的に気温が平年より高くなる見通しで、厳しい暑さが予測されています。熱中症対策が重要です。
熱中症を防ぐためには、気象情報を活用し、暑さから身を守る行動をとらなければなりません。今年4月から新たに運用がはじまった「熱中症特別警戒アラート」は、暑さ指数35以上の極めて危険な暑さが予測されたときに発表されます。通常の熱中症対策では不十分かもしれません。もし、「熱中症特別警戒アラート」が発表されたら、私たちはどのような行動をとればよいのでしょうか。MBSお天気部の気象予報士・前田智宏さんに解説してもらいます。さらに、暑さから身を守る気象情報の活用法と、本格的な夏に向けて今からでも間に合う熱中症対策について聞きます。

西村愛のひとこと
熱中症警戒情報が出たら、予定を変更して涼しい場所にいる判断が大切ですね。 暑さに強い身体づくりもしておきましょう!→涼しい時間帯にジョギング(1日15分ぐらい)ウォーキング(1回30分ぐらい)を週5回。サイクリング(1日30分)を週3回!2〜3週間ぐらい続けると暑さに強い身体づくりが進むとのこと。2日に1回は、ぬるめのお湯に浸かるのも◎汗をかいて体力をつけていきましょう!

第1441回「能登の被災地で進まない公費解体」
オンライン:東京都立大学名誉教授(災害復興学)中林一樹さん

元日の能登半島地震により、石川県内では住居や店舗など約4万8000棟が全半壊しました。そのうち2万2000棟が公費解体の対象になると推計されていますが、実際に解体されたのは100棟にも及ばず、復興が進まない要因ともなっています。なぜ解体が遅れているのでしょうか。
公費解体を申請するには、「罹災証明書」など多くの書類が必要です。土地や建物の相続登記をしていない人も多く、所有者の名義が2~3代前となると、関係する兄弟や子どもなど全員の同意が必要となり、その作業は膨大となります。
県外など遠方へ避難した被災者も多く、書類の不備などで何度も市町村の窓口に来るのはたいへんです。例えば金沢市から珠洲市は、バスで往復7000円程度かかり、時間的にも金銭的にも負担になります。
解体作業は地元企業が請け負う仕事にもなるはずですが、解体が進まなければ、働き口がないために人が被災地に戻ってこないという悪循環にもつながります。どうすれば解体が進むのか?課題はどこにあるのか?災害復興学が専門で東京都立大学名誉教授の中林一樹さんに聞きます。
 
西村愛のひとこと
罹災証明も、公費解体の申請も、その前にやっておかないといけない建物や土地の相続登記も、手続きが大変!二次避難で金沢や県外に滞在している方も多いようなので、中林さんからの提案にあった"交通費を一部負担する。手続きを簡素化して申請しやすくする"と公費解体や復興が進んでいくのでは、と感じました。

第1440回「被災者の心とからだを癒す足湯ボランティア」
ゲスト:CODE 海外災害援助市民センター 山村太一さん
    やさしや足湯隊 兵庫県立大学大学院1年生 南太賀さん

元日に発生した能登半島地震の被災地で、学生や若者たちが「足湯ボランティア」を続けています。足湯ボランティアは、1995年に発生した阪神・淡路大震災の被災地・神戸で始まり、東日本大震災など数々の被災地で続けられてきた支援活動です。被災した人たちは、たらいやフットバスに張ったお湯に足を浸すことでリラックスでき、心とからだを癒すことができます。
能登半島で活動を行っている足湯ボランティア"やさしや足湯隊"は、避難所や公民館などで足湯を提供し、手を揉みながら被災者の話に耳を傾けます。また、時には被災家屋の片付けや思い出の品の捜索など、被災者の要望に応じた支援も行っているそうです。
人々はいま、どんな思いで暮らし、何を必要としているのでしょうか。番組では、能登半島で足湯ボランティアを続けているCODE海外災害援助市民センターの山村太一さんと、兵庫県立大学大学院1年生の南太賀さんに被災地での活動について話を聞きます。

CODE海外災害援助市民センター
「やさしや足湯隊」クラウドファンディング

https://code-jp.org/2024/05/01/%e5%ad%a6%e7%94%9f%e3%83%bb%e8%8b%a5%e8%80%85%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e3%80%8c%e3%82%84%e3%81%95%e3%81%97%e3%82%84%e8%b6%b3%e6%b9%af%e9%9a%8a%e3%80%8d%e3%82%92%e5%bf%9c%e6%8f%b4%e3%81%97%e3%81%a6/
 
西村愛のひとこと
被災した皆さんは、日々大変で、今の困りごとが何なのか、わからない方もいるかもしれません。リラックスしてお話をすると気持ちが整理されて、今の困りごとに気づくきっかけになるかも。お話して仲良くなったからこそ、頼めることもありますね。ボランティアの中には、このプロジェクトをキッカケに能登に移住した方もいるそうですよ!

第1439回「現物主義が支援の壁に? 『災害救助法』の課題」
オンライン:日本弁護士連合会 災害復興支援委員会 副委員長 永野海さん

能登半島地震で課題が浮き彫りになっている「災害救助法」について考えます。「災害救助法」は被災地で応急的な救助や支援を行う法律です。避難所の設置や生活必需品の支給、家屋の応急修理、仮設住宅の設置など広い範囲で適用されます。
しかし、支援の多くは物資や住宅の提供など、いわゆる"現物主義"であり、迅速な救助のためには現金で支給すべきと指摘する声もあります。
例えば避難所での食事は、同じおにぎりや菓子パンが続くこともあり、自分たちが食べたいものを自由に選べません。仮設住宅も、行政が借り上げて提供しますが、地方では確保が難しいのが現状です。被災者自身が物件を選び、その家賃を補助すれば契約もスムーズになります。
災害時にお金があっても役に立たないということで現物支給が続けられてきましたが、今はすぐにコンビニやスーパーが開き、インターネットでも物が買える時代です。さらに現物給付は手続きが複雑で、管理する行政の負担も増えます。「災害救助法」の課題について、日本弁護士連合会の災害復興支援委員会 副委員長 永野海さんに聞きます。
  
西村愛のひとこと
災害救助法は、1947年(昭和22年)戦後間もない頃にできた法律。だから現物主義だったそう。現在は被災後、何日かしたらお店が再開して好きなものを、買うことができる。地元のお店も売り上げが上がり復興につながる!"現金で渡すか、被災者だけが使えるクーポン券はどうかな?"など、今の時代にあった支援に変えていくことが必要ですね。