05月31日(日)
第1231回「感染症まん延の夏~熱中症対策は」
電話:済生会横浜市東部病院 患者支援センター長
「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長 医師 谷口英喜さん
全国で最高気温が夏日を記録する日が増えてきました。新型コロナウイルス感染予防でマスク着用を求められる中、初めての夏を迎えます。これからの季節で心配されるのが熱中症ですが、感染予防を行いながらの熱中症対策とはどのようなものなのでしょうか。
今月26日、厚生労働省は「新しい生活様式」における熱中症予防策を公表しました。予防策では、気温と湿度が高い中でマスクをつけると熱中症の恐れが高まるとして、屋外で人と2メートル以上の距離が確保できる場合は、マスクを外すよう促しています。また、熱中症予防を呼びかける医療専門家団体『教えて!「かくれ脱水」委員会』は、今月1日に緊急提言を発表。熱中症の搬送者が例年なみの人数になると医療現場が崩壊する恐れがあることから、ひとりひとりができる熱中症予防対策を示し、実践を呼びかけています。
外出自粛がつづいて多くの人の体力がおち、体が暑さに慣れていない状態であることから、今年は例年以上に熱中症に注意が必要です。番組では、『教えて!「かくれ脱水」委員会』副委員長で済生会横浜市東部病院・患者支援センター長の谷口英喜さんに電話をつなぎ、今夏の熱中症対策についてお話をうかがいます。
『教えて!「かくれ脱水」委員会』
https://www.kakuredassui.jp/
きょうのポイント
●例年通りの熱中症患者が搬送されると、医療現場が崩壊する恐れがある。
(昨年の搬送者は7万人以上)
●コロナと熱中症の症状は似ていて、見極めに時間を要する。
●外出自粛が続いて、暑さに体が慣れていないうえ、体に水分を蓄える筋肉の量が減っているため、熱中症のリスクが高まっている。
●暑い屋外でマスクをつけていると、湿気がこもり熱源ができて危険。人と距離を保ってマスクをはずす。
●熱中症予防には、3度の食事とこまめな水分補給を。食事から1500ミリリットル、水分で1500ミリリットル摂取して、1日約3000ミリリットルの水分摂取を目標に。
●水分摂取は屋内なら1時間に1回、屋外で活動する時は30分に1回を目安に。
●水分摂取は、水やお茶でよい。スポーツドリンクは糖分が多いので注意。アルコールは、逆に脱水になりやすい。脱水が疑われる時は「経口補水液」を。
●エアコンで温度と湿気の調節を。
●体が熱い時は、太い血管のある首の左右、脇の下、足の付け根を冷やすと体温が下がる。
●環境省発表の「暑さ指数」を、夏場の行動指標にする。
●熱中症は各々が対策をすれば防げる。
千葉猛のひとこと
1日3回、規則正しく食事をとることが熱中症の予防につながるというお話は、目からウロコでした。マスクも屋外で他の人と一定の距離が保てる場合は、はずしても大丈夫。「経口補水液」も買っておくつもりです。熱中症にならないように私たちが充分に気をつけることで、医療崩壊を防げるのですものね。
05月24日(日)
第1230回「新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック」
ゲスト:認定NPO法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
避難生活改善に関する専門委員会 浦野愛さん
新型コロナウイルスがまん延する中で避難所を開設する際の参考になる冊子「新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック」が完成しました。「認定NPO法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」の「避難生活改善に関する専門委員会」がまとめたもので、全国各地の被災地で避難所運営にたずさわってきたメンバーならではの実践的なアドバイスが、たくさん掲載されています。
たとえば、断水していたり、石鹸や消毒液がなかったりしても、ペットボトルの水で指先を洗う、ウエットティッシュを使う、あるいは食べ物を包装やラップフィルムの上からつかむなど、さまざまな感染防止の工夫ができるといいます。また、感染者やその濃厚接触者、発熱などの症状のある人も、その場で受け入れ拒否するのではなく、なるべく早く医療機関や宿泊療養施設に移送できるよう支援を依頼しながら、個別の部屋を用意して暫定的に受け入れ、一般の避難者との接触がないようゾーン分けをすることなどを求めています。
感染の懸念がある状況では、外部からの支援者が被災地に行きにくくなるので、その場にいて動ける人で対処することが必要です。「たいへんだけれど、感染防止のポイントはある程度明確になっているので、この冊子に書かれていることを一つでも実践できる人を、地域の中に増やしてほしい」と話すJVOAD専門委員の浦野愛さんに、電話で話を聞きます。
●「新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック」
http://jvoad.jp/wp-content/uploads/2020/05/acaeac91791746611926b34af7d61c4d.pdf
きょうのポイント
●コロナ禍での災害は、ボランティアや医療支援者がすぐに避難所にかけつけられない可能性も。
地元行政や住民が協力して乗り切る。
●断水や物資不足で十分に手洗いができなくても、ラップを使うなど、その場にある物で工夫して感染予防対策を行う
●食器や洗面用具などは他の人と共有しない
●携帯電話などの端末は、ビニルなどの密閉袋に入れて使用し、袋を消毒する
●使い捨て容器、ラップ、ポリ袋等は非常袋に準備しておく
●感染者、症状のある人、濃厚接触者、症状のない人のゾーン分けを行う
●感染者や症状のある人も拒否せず、次の受け入れ先を探すなどの対処を
●感染防止のポイントを知っていれば、できることは多い
●アイデアの引き出しを増やして、各々が避難所で命を守る
千葉猛のひとこと
細かい図入りで書かれている「新型コロナウイルス避難生活お役立ちサポートブック」外国の方向けの電話相談番号も載っていますし「ハンカチ折るだけマスク」の作り方もあります。「次亜塩素酸ってなに」という項目もあります。読みやすいので、ぜひダウンロードしてお使いくださいね。
05月23日(土)
第1229回「ネットワーク1・17スペシャル~新型コロナと防災」
ゲスト:兵庫県立大学 減災復興政策研究科 教授 室崎益輝さん
番組ではこれまで、新型コロナウイルスの感染拡大と災害避難について、シリーズで伝えてきました。その内容を再構成し、ゲストに兵庫県立大学減災復興政策研究科教授の室崎益輝さんを迎えて、5月23日(土)よる7時~9時に、特別番組「ネットワーク1・17スペシャル~新型コロナと防災」を放送します。
感染防止のために考えられる避難の選択肢としては、①少人数で広く使えて個別空間のある避難所、②在宅避難、③テント避難、④車中泊、⑤疎開避難(知人・親戚宅やホテルなど)が考えられます。少人数で広く使える避難所をつくるためには、避難所に行かずに生活できる人は、なるべくそれでがんばってもらう必要があります。
特別番組では、コロナ禍で避難所を開設した自治体の経験を踏まえ、感染防止のためにできる消毒の仕方、役に立つ物品などを紹介します。また、在宅避難や車中泊のために必要な備えについて考えます。多くの専門家が指摘したのは、「携帯トイレ」を備蓄しておくこと、そして災害に備えてそれを使ってみることの大切さでした。さらに、外出自粛で生じる不安や恐怖、怒りなどの心の問題は、災害時と非常によく似ていて、それをどう受け止めて生きていくか、災害精神医学の専門家からのアドバイスも、番組の中でお伝えします。
24日(日)の通常放送では、「新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック」を発表した「認定NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」専門委員の浦野愛さんに、避難所での感染防止のためにだれでもできるさまざまな工夫を聞きます。
千葉猛のひとこと
私たちはいまコロナウィルスまん延のさなかにいます。「避難所」に対する考え方の変革は決して将来の課題などではなく、ただちに取り組み前進させるべき問題であることを痛感します。番組中にリスナーの方からいただいたメッセージの、コロナによって浮き出た「差別の不安」への思いが鋭く心に刺さりました。
05月17日(日)
第1228回「巣ごもりの今、在宅避難の訓練を」
電話:株式会社 危機管理教育研究所 代表 国崎信江さん
新型コロナウイルスの感染が広がる中、災害が起きると、密集した避難所では感染リスクがあるため「在宅避難」が選択肢のひとつになると考えられます。日本列島は出水期を間近に控え、対策は喫緊の課題です。コロナ禍におけるさらなる災害を想定して、自宅ではどんな備えをしておけばよいのでしょうか。
危機管理アドバイザーの国崎信江さんが提唱しているのが『おうちDEキャンプ』。ある一定時間、電気・水道・ガスなどのライフラインを使わずに自宅で過ごし、被災の疑似体験をするという取り組みです。カセットコンロを使った調理、携帯用トイレでの排泄、暗闇の中での雑魚寝などを体験してみると、必要な防災用品の見直しや使い方の確認ができます。何より災害に対しての心構えができるといいます。
なかなか外出できない今は、自宅の防災対策を見直すのに最適な時間です。番組では、国崎信江さんに電話をつないで『おうちDEキャンプ』の実践法や大切な確認点を聞き、自宅の防災対策を考えます。
きょうのポイント
●在宅避難に備えて「耐震性チェックリスト」で、耐震性の簡易チェックを行う
●家具の固定を確認する
●一定時間ライフラインを全て止めて自宅で過ごす「おうちDEキャンプ」を実践
●携帯用トイレを使ってみる
●カセットコンロで調理
・具材を選ばない「鍋料理」がおすすめ
・調理用水を節約できる豆乳鍋は、カレー粉や味噌で味の変化もつけられる
・調理用ビニール手袋やキッチンペーパーで衛生を保つ
●災害時は自宅でもいつもの布団で寝られるとは限らない。床に寝袋やクッションマットを敷いて寝てみる経験を
●被災の疑似体験をして、必要な防災用品の確認と災害への心構えを
千葉猛のひとこと
国崎さんのお話を聞いて「豆乳」買っておこうと思いました。保存もきくし、鍋のだしにして豆乳鍋もできる。カレールーを入れたらカレー鍋になるというのはうれしい話です。災害時でもおいしいものを食べると元気が出ます。「おうちDEキャンプ」実際にやってみたら、いろんな発見がありそうですね。
05月10日(日)
第1227回「長引く自粛生活で生じる心の問題」
ゲスト:筑波大学 准教授 高橋晶さん
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言は、今月31日まで延長されました。自粛生活が続く中、不安やストレスを感じている人も少なくありません。
感染症の集団発生は、災害時と同様に心の問題を引き起こします。感染に対する恐怖、行動制限がもたらすストレス、情報を追い続けることで膨らむ不安などさまざまです。また、不安や恐怖は怒りに変わり、攻撃的になることもあります。こうした心理反応は、誰にでも起こりうる自然なものですが、長引く場合は日常生活に影響を及ぼすほど心や体に不調をきたすこともあるので注意が必要です。
筑波大学の高橋晶准教授(災害精神医学)は、「これまでのよい習慣は崩さずに規則正しい生活を送って、心の回復力=レジリエンスを最大限に発揮できるようにしましょう」と話します。
高橋准教授と電話をつなぎ、感染拡大の中で起こりうる心の問題と、そのケアについて聞きます。
きょうのポイント
●コロナ禍の心の問題は、災害時と非常に似ている
●不安を感じることは人間の正常反応。しかし、感じ続けることでつらくなる
●不安と恐怖は、怒りの感情や他者への攻撃に変わることもある
●短距離走ではなく、マラソンだと考えて心の中をシフトチェンジすると現状を受け入れやすくなる
●情報から離れる時間をつくる
●栄養と睡眠をとり、適度な運動をして健康を保つ
●自分にごほうびタイムやサプライズを行う
●昔好きだったことや集中できる作業を行う
(例:楽器の演奏、絵を描く、茶道・華道、写経、土にふれる等)
●いつもと様子がちがう人には声をかけて孤独にさせない。行政の相談窓口も活用して援助を求める
●コロナ禍はいつか必ず終わると希望を持つ
千葉猛のひとこと
コロナ問題へのココロの対応は「短距離走」ではなく「マラソン」と考えること。それも時々休みながら無理のないように、暮らしの中の「ごほうびタイム」で楽しんで、何かに熱中する「不安がない時間」を作ること。コロナはいつか必ず収束します。自分自身の「心の回復力」を最大限発揮しましょうね。
05月03日(日)
第1226回「新型コロナ感染拡大に災害法制の適用を」
ゲスト:弁護士 津久井進さん
新型コロナウイルスの感染拡大を「災害」ととらえ、災害法制を適用することで住民の生命と生活を守ろうと、全国の弁護士らが政府への緊急提言をまとめました。その中心となったのが、阪神・淡路大震災以来、被災者の支援にたずさわってきた津久井進弁護士(日弁連災害復興支援委員会委員長)です。津久井さんは、「今こそ災害で培ってきた仕組みやノウハウをフル活用すべき」と話します。
たとえば、激甚災害制度を活用すれば、休業している会社の従業員は、会社を辞めなくても失業保険をもらうことができます。いわゆる「みなし失業保険」の制度で、東日本大震災や去年の台風19号でも使われました。また、災害対策基本法を使えば、市民に自宅待機を指示したり、指定した警戒区域への立ち入りを制限・禁止したりするなど、強制力をもった感染防止措置をとることができます。さらに、災害救助法を応用すれば、食料品・飲料水・生活必需品の提供、宿泊場所の供与なども可能になるといいます。「使える災害法制はいくらでもある」と語る津久井さんに話を聞きます。
きょうのポイント
●災害法制を適用して新型コロナの感染拡大を防止
・避難指示で自宅待機を指示
・警戒区域を設けて立ち入り制限
・災害救助法で、食料や生活必需品の提供、避難所(宿泊所)の供与
●市町村が権限をもつ災害対策基本法で現場が判断できる
●経済・雇用問題にも災害法制で対応できる
・激甚法の「みなし失業給付」で雇用を守りながら失業保険を給付
・中小企業への持続化給付金には、災害時と同様に差し押さえ禁止の法律が必要
●災害ケースマネジメントでひとりひとりに寄り添った支援を
【参考】津久井さんの著書「災害ケースマネジメント◎ガイドブック」
https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b498063.html
●災害で培った知恵を生かして市民の生活を支えるべき
千葉猛のひとこと
会社を解雇されなくても、失業保険を受け取れるシステムがあるのは初めて知りました。コロナで災害法制が使えれば会社も従業員も救われます。あなたはコロナを「災害」だと思いませんか。自衛隊が「災害派遣」されているわけですし。国は布マスク2枚配るより、速やかに災害法制の適用を決めてほしいと私は思います。