第831回 「混乱を避け、住民の命を守るためにどうすべきか〜中央防災会議の中間報告を受けて」 2012.08.06
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先月19日、中央防災会議が南海トラフ巨大地震について、当面取り組むべき対策をまとめ、中間報告を公表しました。
内容は、津波への対策が中心ですが、昨年の東日本大震災を受け、「リアス式海岸部」と「平野部」と、地形によって対策の内容を変えて打ち出すなど、これまでには無かった視点で書かれています。リアス式海岸部だと、高台が近くにあるので、避難路をきちんと確保する。平野部だと、海から離れる避難ではなく、垂直避難=高いところに逃げられるように、一定の間隔でビルを建てたり、幹線道路や鉄道の線路を盛り土の上に設置して、陸上の防波堤のような役割を持たせたり、といった対策が挙げられると言う事です。
また今回、例外的に車での避難を容認する内容も盛り込まれました。徒歩での避難が原則と言われますが、高齢者・体が不自由な人などには、車での避難が有効とのこと。ただ、これには、「ルール作りが必要だ」と河田先生。「地域の誰が、誰を乗せるのか」「どの道を通って高台に向かうのか」「車は高台のどこに停めるか」などといったことを細かく決めておかないと、高台へ向かう狭い道路で渋滞がおきてしまうからです。このほか、地域で防災のリーダーを担う防災コーディネーター育成の重要性も語られました。これらは全て時間もかかることですし、出来るだけ早く対策に取りかかるスピード感が必要になってきます。
今月22日には、10メートル間隔という従来の5倍細かい津波想定や、人的被害の想定が発表され、今年の冬には対策の最終報告も出される予定です。他人事と思わず、自分に関わる事と自覚するためにも、新しい発表があるたび、河田先生には解説していただき理解を深めたいと思います。 (河本光正)
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ゲスト:関西大学社会安全学部教授、南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ主査 河田惠昭さん
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