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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサープロフィール
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2024年7月6日 放送分】
【2024年6月29日 放送分】
【2024年6月22日 放送分】
【2024年6月15日 放送分】
【2024年6月8日 放送分】
【2024年6月1日 放送分】
【2024年5月25日 放送分】
【2024年5月18日 放送分】
【2024年5月11日 放送分】
【2024年5月4日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年7月6日 放送分】
2024年7月6日
【巻】…10・1957

【歌】…卯の花の散らまく惜しみ 霍公鳥野に出(で)山に入り 来鳴き響(とよも)す

【訳】…卯の花が散るのを惜しんで、ホトトギスは野に出、山に入り、やって来ては声を響かせる

【解】…万葉歌では、ホトトギスと卯の花の取り合わせがよく登場しますが、この歌もそのひとつ。描いているのは、山にいるホトトギスが里に出てきて、また山に戻るというのを繰り返している様子です。里に下りてきた時のホトトギスは、あたりに声を響き渡らせていたに違いありません。ホトトギスがなぜそんな行動をするのかは「卯の花の散らまく惜しみ」と作者は分析しています。つまり、卯の花が散ってゆくのが惜しいので、少しでも多く花を見ようと何度も里に来るのだと。ホトトギスが本当にそう思っていたのかは分かりませんが、自然をよく観察していた人ならではのイメージですね。現代は、日常の忙しさで自然に注意を向ける機会が少なくなりがちですが、例えば自然の音に耳をすませてみれば、この歌のように色々なイメージが浮かんでくるかもしれません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月29日 放送分】
2024年6月29日
【巻】…10・1951

【歌】…うれたきや 醜霍公鳥(しこほととぎす) 今こそは声の涸(か)るがに来鳴き響(とよ)めめ

【訳】…腹立たしいバカなホトトギスさんよ、今こそやって来て、声が涸れるほどに鳴いて欲しいのに

【解】…「うれたし」は、腹立たしいとか嫌な奴だなあ、といった表現で、醜霍公鳥の「醜」も悪いものや嫌なものにつける接頭語。ホトトギスにこれほどマイナスな言葉を投げかけるのには、理由があるようです。それをうかがわせるのが歌の後半。今こそやって来て、声が涸れるほどに声を響かせて欲しいのに、とのこと。どういう事情があるのか分かりませんが、まさに声が聞きたいタイミングに鳴いてくれないホトトギスに、いらだちや失望を感じているようです。ホトトギスにすれば、人間の都合だけで嫌な言葉を向けられるのは迷惑千万な話ですが、裏返して考えると、作者はそれほどホトトギスの声を愛しているということなのでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月22日 放送分】
2024年6月22日
【巻】…10・1947

【歌】…会ひ難き君に会へる夜(よ) 霍公鳥 他(あた)し時ゆは今こそ鳴かめ

【訳】…会い難いあなたに会った夜は、ホトトギスさんよ、他の時よりは今鳴いてくださいな

【解】…「会ひ難き君」は、なかなか会えない人のことですが、その人と一緒にいられる機会が訪れたようです。作者は、ホトトギスに呼びかけます、「他の時はいいけれど、今こそ鳴いておくれ」。大切な人が来ることが分かって、お酒やご馳走など、迎える準備を万全に整えたのに、これだけが足りないと思ったのが、ホトトギスの声。一緒にいる時にホトトギスの声が聞こえたら最高だと思いながら、相手は鳥ですので、自分の力ではどうにもできません。ですので、「他の時はいいから、この時だけは鳴いておくれ」と切に訴えているのです。実現の可能性は極めて低いでしょうが、こう歌うことで、「これだけあなたのことを大切に思っています」というメッセージは「会ひ難き君」に伝わることでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月15日 放送分】
2024年6月15日
【巻】…10・1940

【歌】…朝霞たなびく野辺に あしひきの山霍公鳥(やまほととぎす)いつか来鳴かむ

【訳】…朝霞たなびく野辺に、山ホトトギスは、いったいいつやって来て鳴いてくれるのかなあ

【解】…万葉集には夏真っ盛りの歌はなく、夏がやってきた喜びを歌にしたものが多く掲載されています。夏を代表するものは、花なら卯の花や葛の花ですが、鳥はホトトギス。今回ご紹介する歌も、ホトトギスが早くやって来てくれないかなあ、と夏の到来を待ちわびている内容です。山ホトトギスは、種類の名前ではなく、山にいるホトトギスのこと。古代では、季節も鳥も花も山からやって来ると思われていたので、歌の作者は、山からホトトギスが降りて来るのを待っているのでしょう。ところで、万葉歌に出て来る「霍公鳥」は、現代のホトトギスと同じ鳥を指しているかどうか分かりません。カッコウのことであるという説や、いくつかの鳥が交じった分類であるという説もあります。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月8日 放送分】
2024年6月8日
【巻】…10・1926

【歌】…春山の馬酔木(あしび)の花の 悪(あ)しからぬ君にはしゑや寄さゆともよし

【訳】…春山のアシビの花のように、悪くは思わないあなたのことは、えいままよ、悪い噂があってもかまわない
【解】…「春の山に咲くアシビの花」と始まるので、春を詠んだ歌かと思いそうですが、実は、次に続く「悪しからず」の「悪し」を起こすために、アシビを持ってきているだけなのです。「悪しからぬ」は、悪くは思わないという意味ですから、愛おしい人のこと。「しゑや」は、捨てばちな気持ちを表現するので、ここでは「えいままよ!」と訳しています。「寄さゆともよし」は、悪い噂が寄ってきてもいいということ。この歌の作者は女性で、交際している男性に悪い噂が流れたようですが、それでも「何を言われても私は構わない」と歌っているのです。これは問答歌で、次の1927番の歌で相手の男性は、「私は年をとって恋をすることがないと思っていたが、今は夢中だ」と返しています。

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