「『世話される』という事」
認知症の介護 インタビュー:中西亜紀さん(大阪市立弘済院附属病院・副病院長)
自分の家族が認知症になった場合、あなたはどんな選択をしますか?
厚生労働省によると、認知症になる人の数は、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、700万人前後、65歳以上の高齢者の5人に1人と言われています。今後ますます大きな課題になってくる、認知症の家族の介護。そこで、認知症を専門にされているドクター、大阪市立弘済院附属病院の副病院長・中西亜紀さんに伺いました。
施設サービスを利用せずに一人で介護をしていると、食事ひとつをとっても買い物するところからすべてをやらなければいけません。実際には、介護を直接できる時間よりも裏方的な部分が多くなってしまいます。その上、自分のケアも必要ですから、余裕がなくなって、家族にやさしく接することができなくなるわけです。認知症が進行して排せつの問題も生じてくるかもしれません。そうなってくると、ますます介護する人は追い込まれていきます。
大事な家族を自分で最後までみてあげたいと思う気持ちから、仕事を辞めるのは危険だと中西先生は指摘します。一人で頑張る人が、あるときポキッと折れてしまうのです。中には、定年引退後「これまで家庭を省みなかった」と介護に全力投球する人も注意信号です。
介護には専門的な知識・スキルが重要なのです。認知症の場合、周囲の環境や対応の適切さで、状況は大きく変わるそうです。医学的な点からみれば、脳の収縮を止めることはできませんが、それに伴って現れる様々な症状、たとえば、徘徊したり、暴れたり、眠れなかったりといった、生活に支障をきたす症状を軽減することはできるのだそうです。
医療や介護のチームでの専門的ケアによって、本人も家族もおだやかに暮らしていくマネジメントは可能だということを是非知っておきたいものです。
これを理解した上で、施設の様々なサービスを利用することが肝要だと、中西先生。認知症の症状が出ているから、施設入所は無理だろうと誤解している方がたいへん多いようです。認知症であっても、介護保険で利用できる様々な施設があります。
施設によってどんなケースが得意なのか不得意なのか、はありますので、ケアマネージャーに相談したり、できれば事前に家族が行ってみたり、本人がショートステイなどを体験してみたりするといいですね。
とにかく大切なのは、一人で介護を抱え込まないこと。施設を利用しましょう。
次週は、認知症かな?と思ったとき、どこへどのように相談したらいいか、具体的な方法をお伝えします。