「医師と患者」
介護と後見人 ゲスト:八十祐治弁護士
今日は、八十(やそ)祐治弁護士にお越し頂きました。現在50歳の八十さんは、20代の五年間をJリーガーとして過ごしました。足の怪我で手術を余儀なくされたとき、早く復帰したいと焦る気持ちにうまくブレーキをかけてくれたのが、お医者さんだったそうです。身体の医療以上に、精神的なサポートの意味が大きかったと感じるといいます。
そんな時代を経て弁護士となった八十さん。その仕事の一つに後見人としての立場があります。
私たちが、もし認知症などで判断能力が落ちてしまった場合、介護保険制度でサービスを受けようとしても、介護施設に入ろうとしても、契約行為を自分で結ぶことができなくなっているケースが考えられます。
例えば、夫が亡くなり、妻がひとり暮らしをしているうちに、判断能力が落ちたとしましょう。自宅も老朽化しているために、息子や娘が家を売却して、母親が介護施設に入るための資金を捻出しようとする場合、家の名義が母親であれば、いくら子どもであっても売却はできません。あるいは、息子や娘の家に母親を転居させて一緒に暮らそうとして、老朽化した家を処分しようと思っても、名義が母親であれば不可能です。
つまり、安定した介護生活への第一歩が踏み出せないという事態が起きます。
そこで成年後見制度です。認知症などで判断能力が衰えてしまった場合に、周囲の方が制度を用いて後見人となることで、その方の財産を守ったり、代わって契約をすることができる制度です。
これまでは一部のお金持ちだけのための制度かと思っていましたが、長寿社会で誰もが認知症になるリスクを抱えている時代、安心して介護を受けるためにも知っておいて損はない制度だと感じます。