喫茶ラウンジMegビブリオ

12月9日放送分

『お梅は呪いたい / 祥伝社文庫』藤崎翔・著

古民家の解体中に発見された不気味な日本人形。
それはかつて、戦国大名を滅亡させた呪いの人形、お梅だった。
ああ、呪いたい!
500年の眠りから覚めたお梅は、負のエネルギーに満ち溢れ、現代人を呪い殺したくてウズウズしていた。
そんなお梅は、興味本位の底辺YouTuber・松宮悠斗に引き取られることになる。
早速、現代人を呪い殺すチャンスが巡ってきたお梅だったが、現代人の生活や言葉は分からないことばかり。
500年のブランクは長すぎたのか...松宮悠斗を呪うどころか、なんとYouTubeで、お梅の心霊動画がバズってしまうのだった。
更には自分のことを恐れるどころか、「人形さんもっと動いて下さいよ〜」とお願いされる始末。
なんということだ!次こそは...!
しかし、お梅が悠斗を呪おうとすればする程、事態が良い方向へと進んでいくのだった。彼のチャンネル登録者数、動画の再生回数は伸び続け、人気YouTuberとなる悠斗。なぜか、彼を幸せにしてしまったのだ。
これではいけないと、ターゲットとなる持ち主を転々とするお梅。
負の感情を持つ人間たちは呪いやすい。
失恋で自暴自棄になっている女性、引きこもりの男性、老婆と子供、老人ホームの入居者...。次こそは、上手くいくだろう。
しかし。呪うつもりが、全てが裏目に出てしまい、お梅は現代人を次々と幸せにしてしまうのだった。
ああ、くそっ。現代の人間たちめ...!なんとかして呪ってやるからな!

果たしてお梅は、無事に現代人を呪い殺すことができるのか...?!

といったお話。


11月11日放送分

『新・謎解きはディナーのあとで』東川篤哉 (小学館文庫)

宝生麗子は、国立署に勤務する刑事であり、世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様である。
しかしその素性については、署長クラスのトップシークレット。その正体を隠しながら数々の事件に奮闘している。
事件解決後は高級車がお出迎え。そして大豪邸に帰ると、地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しむ麗子。
そんな彼女が難解な事件にぶちあたるたびに、その一部始終を相談するのは"執事兼運転手"の影山である。
麗子の推理の腕前の方はと言うと...影山曰く「お嬢様はアホでございますか?」とのこと。
このように、時には容赦ない暴言を吐きつつも、麗子と影山のコンビは事件の真相を鮮やかに解明していくのだった!
そんな麗子の後輩に、ど天然な新米刑事・若宮愛里が加わり、警視庁に栄転した風祭警部は大きなミスを犯して国立署に舞い戻ってくる。
新たなメンバーで挑むのは、難事件の数々!
富豪の家で"無人だった"はずの部屋から発見された長男の首吊り死体の謎。鍵のかかった土蔵で見つかった骨董好きの老人の遺体と血文字のダイイング・メッセージの謎。雑居ビルの裏で発見された墜落死体とそのポケットに入っていた血の付いたナイフの謎。シェアハウスで殺された看護師と5つの目覚まし時計の謎。アパートで殺害されたイケメン大学生と建設作業員が"煙草を吸っている間に"目撃したという怪しい男の謎。
さて、"迷"推理を繰り広げる風祭警部に、"空気読めない"後輩の愛里ちゃん。2人に振り回されながら、麗子と影山は、5つの謎を解き明かすことが出来るのか...?!


10月14日放送分

『方舟』 夕木春央:著 / 講談社:刊 

主人公の柊一は、大学時代の友達と従兄と一緒に、長野県の別荘に遊びに来ていた。ちょっとした同窓会を満喫する6人。
するとメンバーの1人が「この近くにすごく面白い所があるから行かないか?」と提案する。以前、ソロキャンプをした際に見つけたスポットだという。一行が向かったのは、山奥にある...壮大な地下建築。
マンホールの下に、地下3階に及ぶ施設が広がっており、もともとは過激派か新興宗教が使っていたのではないかという事だった。
拷問器具までが見つかり、どこか不気味な雰囲気が漂っている。しかし、山道に迷ったせいで日が暮れてしまった為、一行はそこで探検がてら夜を過ごすことになるのだった。

そこで更に、きのこ狩りで迷ってしまったと話す3人家族と出会い、彼らも行動を共にする事となる。なりゆきで地下建築で寝泊まりすることになった10人は、日が登ればすぐに帰れる筈であった。
しかし、翌日の明け方に、突如として地震が発生する。
扉は巨大な岩でふさがれ、非常口は土砂で埋もれてしまった。
10人は、日の当たらない地下建築の中に、完全に閉じ込められてしまったのである。それだけではない。

地盤に異変が起きた影響で、地下から水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没するだろう...。水没までのタイムリットは、1週間と思われた。
どうやってこの地下から脱出するべきか?!
必死に考えを巡らす10人であったが、そんな矢先に、殺人事件が起こった。
10人のうち1人が、首をロープで締められ、殺されていたのである。

何故このタイミングで、殺人が起こったのか。動機が全く分からず、残された9人に動揺が広がる。
そして、地下建築を探索してみると、構造上、誰か1人を犠牲にすれば、残り全員が脱出できることが判明した。
その生贄には、誰がなるのか。誰か1人を選択しなければならない。
そうだ。生贄には、その犯人がなるべきだ。犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ一週間。
それまでに、殺人犯を見つけなければならない。
極限状態での心理戦と推理戦が、今開幕する。
果たして、犯人の動機とは一体なんなのか。そして、選ばれる生贄となるのは一体、誰か。
そして、彼らは無事に脱出できるのか...?!
といった、お話。


8月12日放送分

「夏休みの空欄探し」似鳥鶏・著 / ポプラ文庫

会員が2名しかいないクイズ研究会・会長の高校2年生・成田頼伸(ライ)は、クラス内で「じゃない方」と呼ばれている。
ライと同じ姓で、ダンス同好会に所属する人気者・成田清春(キヨ)がいるからだ。クラスで「成田君」といえば、キヨのことを指すのだった。
「役立たたない」ことが好きなライと、大学受験に向けて効率重視で「役立つこと」が好きなキヨ。性格も対照的で、クラスでは決して交わることのなかった二人に、運命的な出会いが訪れる。

夏休みのある日。
ふと訪れたファミリーレストランで、ライは謎解きをしているらしい姉妹に遭遇する。
高校生と、大学生の姉妹だった。かなり難解な暗号のようだ。
そこで思わず彼女たちの謎解きを手伝ってあげたライ。すると、
「実は、暗号はあれだけではないんですよ」と更なる暗号を手渡される。
その暗号は、姉妹が古本屋で購入した本の中に、手紙として挟まっていたらしい。
暗号を残したのは、板橋省造という、とある企業の創業者だった。彼は遺産の一部を、暗号が示す場所に残したのだという。しかし、親戚や友人知人でも謎をとくことができず、手紙に託したということだった。知恵を貸して欲しい。

姉妹に頼まれ、この謎解きを手伝うことになったライ。途中、偶然でくわしたキヨを巻き込んで、四人は遺産をめぐり全国に散らばる暗号に挑むこととなる...。

謎解きの先に、また新たな暗号。そしてまた謎解きへ。
味わったことのないひと夏の冒険に、心躍るライとキヨ。
しかし、冒険が終わりに近づくにつれ、2人はどこか違和感を覚えるのだった。
そもそも暗号が本に挟まれていた事には、何か別の意図があるのではないか...?
誰かに見られているような感覚も、勘違いではないのではないか...?
謎解きの先に4人を待ち受けるものとは、一体...。
すべての謎が明かされた時、切なさと温かさが、胸を満たしていく。


7月15日放送分

今回紹介した本は、道尾秀介:著 /『きこえる・死者の耳』/ 講談社

Megビブリオでは、ジュンク堂書店の佐々木さんとお話をしながら、選書しているのですが、
今回は新しい形の本を見つけました。
各章には2次元コードがあって、それを読み取るとリアルな音声が聴こえてきます。
音を聞きながらストーリーを読むという立体的な形のサスペンスです。

刑事の美浜は、タワーマンションの一室で事情聴取を行っていた。ICレコーダーに録音された、4分間ほどの音声。
それを再生し終えた後、桂木美歩は「このあとのことは、何も分からなくて...」と目を伏せた。

リビングの床には、この部屋の主である瀧沢鐘一の遺体が横たわっている。著名な画家を父に持ち、美術界では
有名な人物であった。
事の始まりは、美歩が友人に電話の録音を頼まれたことだ。
友人というのは、亡くなった瀧澤鐘一の妻・瀧沢怜那である。
″夫のDVの証拠を残したい。その為にはこっそり録音する必要があるが、バレたら音声を消されてしまうかもしれない。
美歩に電話するから、スピーカーホンにして、録音して欲しい″と。
それを実行にうつしたのが、今日だった。

怜那はバッグに携帯電話を忍ばせて、部屋のドアをあけ...美歩は自分の家でレコーダーを回す。
しかし聞こえてきたのは、怜那の取り乱した声だった。
死んでる!あの人死んでる!と...。
ビニール袋をかぶり、そこにガスボンベに繋げられたチューブを取り付けた状態で、瀧沢鐘一は亡くなっている、と。
しかも、両手を挙げ、自分の手と手をシャツのボタンで留めて拘束するような状態で。
混乱する怜那と美歩であったが、警察に通報する為に、そこで通話は終わる。 
事情聴取の際に再生されたのは、まさにその時の音声だった。
そして「怜那を殺したのは、私なんです」と美歩は告げる。電話口で、貴女が不倫なんかするから鐘一が自殺したに
違いないと、責めた為である。そう、実は、電話を終えたあとすぐに、怜那も亡くなっていたのだ。
この部屋のベランダから飛び降りる形で。

現場の様子から、おそらく2人とも自殺であろうと判断された。事件性はほぼないと、捜査も打ち切られてしまう。
しかし刑事の美浜は、怜那がそんな事で自殺なんてするだろうかと、疑問が残った。
そして何度も電話の音声を再生するうち、ある違和感に気づく。
何か、怜那と美歩の会話とは別の″音″が聞こえるのだ。その音の、正体とは...?
鐘一と怜那夫妻は、本当に自殺なのだろうか。
果たして、真相は...?音の中に隠された秘密とは、一体...。


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