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3月30日
今週のゲストは株式会社Lean on Meの代表取締役 志村駿介さんです。
■株式会社Lean on me その仕事とは
「障がい者支援者向けに『Special Learning』というオンライン研修のサービスを提供しております。
実は僕の弟がダウン症という知的障がいがあります。
母親が障がい者施設の現場で勤めていまして、僕もそこを手伝いにいった時にダウン症の方との接し方のイメージは持っていましたが、その中で自閉症スペクトラム障がいとか他の知的障がいなど発達障がいがある方との接し方に非常に困ったという経験がありました。
そういう方々の特性を理解する方法やコミュニケーションの取り方を学べるようなものがないかなと思って色々調べたんですけどなかったのです。
そこで立ち上げたサービスが、こちらのサービスです。
最初は全国でセミナーなどを開いて伝えようかと思ったのですが、たくさんの方に知っていただきたいという思いがありましたので動画という形にしています」。
具体的にどんな動画なのでしょう。
「1本あたりおよそ3分の短い動画です。
隙間時間にご覧いただけます。
動画数は1800本ほどあります。
基礎的な自閉症スペクトラムの特性という内容から言葉でのコミュニケーションが難しい方との接し方、フレームワークのコンテンツまで。
外出する際に気をつけた方がいいことなどの動画もあります。
障がい福祉サービス事業所をはじめ、最近では障がい者雇用をされている企業などにも使われています。
ITツールって高額のイメージがあるかもと思いますが、お得なサブスクリプションシステムも導入しています」。
創業はいつですか?
「2014年4月です。
当時、24歳でした。
スタートアップやベンチャーなど知らずに障がい者施設でアルバイトをして生活費を稼ぎながら、eラーニングの知識などを勉強して立ち上げました。
福祉の領域でスタートアップはまだ"はしり"の方だったと思います。
そういった点で評価をいただき受賞もさせていただきました。
日本の人口は減少傾向にありますが、障がいのある方の人口は増えていっています。
その点でも度外視できない領域として経済界の皆さんも認知されていたのかもしれません」。
■寄りかかれる優しい世界を作る
出展される大阪・関西万博ではどのような形をイメージされているのでしょうか?
「自閉症のある方が外出する時、目から入ってくる情報が多くてそれがストレスになります。
それが原因で心を乱してしまうことがあるんです。
そういったところに直面した場合、現状だとトイレの個室などに入って落ち着かせます。
しかし、実際にトイレは不衛生ですし、トイレを使いたい方も困ってしまいます。
その場にいる支援者としても肩身が狭いような思いをしてしまいます。
そこで外出しやすいように『センサリールーム』を開発しました。
ブースボックス型のもので人が落ち着ける光の色合いや音を調整したものです。
街なかへの普及を目的にしています。
それを今回の万博に展示させていただこうと思っています。
実際に数分、体験していただけます。
ヨーロッパには普及しはじめていまして、サッカーのプレミアリーグの全てのスタジアムや動物園などの観光地にも設置されています。
海外は土地自体が広いので部屋を一室、センサリールームにしているところもあります。
日本ではまだまだ普及していないのが現状です」。
開発にご苦労があったのでは?
「実証実験を繰り返しました。
障がいのある方の事業所や空港に置いたこともありました。
形は最初、プラネタリウムのようなドーム型でした。
そうすると知的障がいの重い方は中に入ってくれませんでした。
いつもと違う空間になるということ、入るところを見られるストレスもあったようです。
こちらが"リラックスしてね"と伝えても、どうしていいか分からないと逆に落ち着かなかったり...。
そういった課題をクリアしていって、形もドーム型からボックス型に。
使ってもらう時に利用の仕方を具体的にしました。
万博をきっかけに広がればいいと思います
そうすることで障がいを持つ方も社会参加する機会が増えてきます。
知的障がいがあると障がいのない方が当たり前に受けられるサービスを受けられないケースが多くあります。
障がいのある方々も使えるサービスを作るきっかけになれば良いなと思っています」。
大手企業からの関心も高そうです。
「eラーニングはテーマパークにも導入されています。
現場ではニーズが顕在化していますが、経営層が気づけていないケースもあります。
現場の声を聞きながら整備して頂けると嬉しいです」。
■障がい福祉 目指すべき未来の姿
「障がい福祉サービス事業所は全国に17万箇所ほどありますが、人手不足の影響を受けています。
一方で障がいのある方の増加に伴い事業所の運営方法が課題となります。
そこにテクノロジー、障がい福祉サービス事業所のDX化が1つの課題です。
日本のように障がいのある方の増加が目立つ国は珍しいことです。
海外では出生前診断で障がいのある方が取り除かれるケースもあります。
重度の知的障がいのある方の自立支援では、日本ほどノウハウが溜まっている国はないと思います。
日本の社会福祉法人が築き上げてきた支援を動画などで可視化し、海外に発信することで適切な支援を受けられるようにしたいですね。
これまで制作した動画ですが業界を牽引してこられた80名以上の先生のお力添えを得て作成しました。
これは日本のトップ水準のコンテンツです。
これを翻訳して海外に発信もできますね。
アジア諸国では障がい福祉が遅れているため、日本のノウハウを提供したいです。
韓国語への翻訳を進めておりサービスを紹介して頂いています。
タイの団体とも連携しサービスを提供していけたらと思います。
対人援助は人とのコミュニケーションが重要ですし、命に関わることもあるため、慎重に進めたいですね」。
聞けば志村さんは大阪体育大学卒業だそうですね。
「母が元々テニスをしていたこともあって、小学6年生からテニスを始め、中学・高校・大学もテニス部でした。
全国大会出場や錦織圭選手と同じアカデミーも経験させていただきました。
実はそのテニスを通じて関西や東京の経営者の方々と繋がり、経営のノウハウを学ぶことができたんです。
コミュニティーに参加させていただいてテニスは僕が教えて経営は教えていただく(笑)。
全く経営の知識がなかった中で起業しましたが、多くの方々に教えていただきながら事業を成長させることができました」。
最後に大阪・関西万博への意気込みをお願いします。
「万博は全世界からお客様がお越しになります。
そこで日本の障がい者支援について知ってもらう良い機会になります。
これをきっかけにインクルーシブな社会を目指して万博を盛り上げていきたいです」。
6月3日から6月9日に大阪ヘルスケアパビリオンのリボーンチャレンジ内での出展となります。
実際に障がい者施設でアルバイトをしながらeラーニングを学んでここまで進化させる。
思いの強さが形になって世界へ羽ばたいていますね!