2025年

1月12日

祈り・願い・平和を届ける紙製品 ~デジタル技術と人の技の融合 100年続くものづくり~

今週のゲストは、株式会社羽車の代表取締役 杉浦正樹さんです。

■株式会社羽車 どんなものを作っているの?

「私たちは紙製品の製造と販売をしている会社です。
封筒や便箋、手紙用品をはじめ、ビジネスに使う名刺やカード、挨拶状などを印刷している会社です。
紙は人の手に触れますので風合いや表情を一緒に届けたい。
内容と一緒に届けたい。
そういう思いで紙製品作りをしています。
紙製品っていうのは、その人の分身という側面もあります。
名刺は自分の分身としてお客さんが相手に渡すものですから、やはり大切な表情を持った方がいいと思います」。

スタジオにもいくつか製品をお持ちいただきました。
「手紙用の封筒とカードです。
カードは少し表情がありましてコットンペーパーというものを使っています。
普通の紙は木材のパルプから生まれますが、これはコットンですから少し柔らかい。
触った表情も少し柔らかいんですね。
それに表面がポコンと膨れたデザインをしています。
彫刻版を使って膨らませています」。

松川アナウンサーは自身の結婚式の招待状を作る際、羽車さんに依頼したことがあったそうです。
「本業の方はビジネスとかが多いんですけども個人向けの商品もありまして、結婚式の招待状などパーソナルユースのものを多く取り揃えております」。

そして封筒は...
「大切に中を保管するために、二重封筒になっています。
製品にはいろんな歴史があります。
カードの縁にも印刷のようなものを施していますが、実は印刷ではなくて手作業で全部色付けをしていく加工なんです。
これもかなり古い加工法でして、こういった味のある加工もできます。
最近ではラッピングの用品や商品タグ、ワインのラベルやパッケージですね。
大切にものを包んで渡すものですからお客様からリクエストがあって展開しております」。

■万博での展示 老舗封筒メーカーの挑戦とは?

「印刷の技術はたくさんあるのですが、今回の万博ではその中でも一番古い活版印刷という技術を使ったアート作品を展示します。
15世紀ぐらいにグーテンベルグが活版印刷を発明した頃からあまり原理は変わっていません。
いわゆる、版にインクを乗せて、それを紙に押し当てるという印刷方式なんです。
活版印刷というものは機械に1回通す1色しか印刷できないんです。
今日、スタジオにお持ちしたものは12色の印刷でして活版印刷機に12回通しています。
そこに金箔を乗せて、かなり時間をかけて完成させています。
どういうモチーフにしようかと考えた時に、やはり世界からお客様にお越しいただけますので私たちが古来、親しんできたモチーフ、あとはお守りとしてのモチーフとか。
いわゆる縁起物ですね。
身近にある素敵なものを表現することに決めました。
これら72種類のモチーフを展示しようと考えていまして、現在、10数種類出来上がっていまして、さらに作っている最中です」。

そもそも万博に出展しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
「世界的な大きな国際イベントに私たちのような中小企業でも携わることができる。
このことを社員の皆さんやその家族にも体験してほしいと思ったんです。
私も5歳か6歳の時に大阪万博に行きまして、その時の未来の街のことが頭にずっと残っていたんですよね。
今回の万博でも最新のテクノロジーが多く展示されるんですけども、私たちは忘れてはいけないその感覚的なものを展示したい。
未来だからこそ必要ではないかと思っています」。

■アナログから見える未来像

「手紙というのは物を書いて封筒に入れて、封をして送る...。
今のコミュニケーションっていうのはすごく簡単なコミュニケーションですよね。
すぐに連絡が取れます。
ですが、人と人のコミュニケーションっていうのはイージーなものだけではなくて、"スローなコミュニケーション"も欠かせないだろうと思っています。
例えばスローフードとかスローライフとかっていうような言葉に近いかもしれないです。
届けるものはそのデジタルな情報だけではなくて、やはりそこに時間をかけたことであるとか、物質的な存在感。
アナログなものっていうのは受け取った人は多分喜んでくれると思いますので、そのことを思い浮かべながら準備をする。
その時間がその人と人との間のコミュニケーションにはすごく大切ではないかなと。
それを、私たちの未来に対するメッセージにしたいと思っています。
"間"っていうのはとても大切です。
生産性ばかり追い求めてもコミュニケーションはやっぱり成り立ちません。
環境の中で"今回はこの紙で、こう伝えたい"、"今回はデジタルでさっとメールで..."など2つあって成り立つものだと思います」。

環境に配慮した取り組みもされていらっしゃるそうですね。
「私たちは主原料で紙を使っていますので森林の伐採という問題と絡みます。
そこでやはり森林はちゃんと管理された植林、木を中心にそういう認証を取っています。
本社工場のエネルギーは全て再生エネルギーを使おうということを決めています。
ちょっと違う角度なんですけど、私たちには50年前や70年前の古い印刷機械があるんですね。
そういう機械をずっと使っていくことが最新の機械を5年ごとに更新していくよりは、ものを大切に長く使っていくという意味で環境にも貢献できているかと思います。
手紙というものは人の手元に渡って長年保管されるものでもあります。
やはり作り方もゆっくりときちんと作って、環境にもやさしく。
サスティナブルなものはこういった歩み方が必要ですね」。

今回の万博で発信したいメッセージとは。
「古来、愛されてきたモチーフをぜひ世界の方に見ていただきたいことはもちろん、私たちのものづくりの現場も見ていただきたいです。
ビデオ撮影をしていまして、今回の展示物がいかにして生まれてきたか、どんな風に向き合ってゆっくりと作られたのかという工程を全部お見せする予定です。
ものづくりの奥深さ、美しさを発信したいと思っています」。

大阪・関西万博への意気込みを聞かせてください。
「池田泉州銀行さんにサポートいただきまして、今回展示させていただく機会を得ました。
これをきっかけに私たちはさらにもっと成長したいと思っています。
これから必要とされるアナログっていうものがさらに成長して、温かみのある製品を作り出せる企業に成長したいと思っています。
全社一丸で取り組んでいきたいです」。

5月27日から6月2日に大阪ヘルスケアパビリオンのリボーンチャレンジ内での出展となります。

竹原編集長のひとこと

100年企業が培ってきた印刷技術、製品。
未来はアナログな製品から生まれるスローなコミュニケーションが大切になりそうです。