MENU
12月22日
今週のゲストは、マッスル株式会社の代表取締役 玉井博文さんです。
■万博にどんなロボットが出てくるの?
マッスル株式会社といえば、2010年の上海万博にもロボットを出展されました。
「歴史上最大、万博の日本のパビリオンにロボットを出したいというお話をいただきました。
もうめっちゃ急な話で(笑)。
実は我々はロボットの部品を作っていました。
それをロボット屋さんに供給していたんです。
有名な会社がありますので、この話を持っていったら、うちの部品を使ってロボットを作ってくれるに違いないと思ってお話を受けたんです。
ところが話を持っていくと現場の担当者は大喜びするんですが、上役に話が進むほど難しくなる。
最後は計画が上手くいかないと会社の名前に傷がつく...と。
結局断られましたが、僕も話を受けた以上、男としてやらなあかん。
社員に話すとびっくりしていましたね。
"やる方法は考える"と伝えて社員を説得したんです。
このプロジェクト、依頼主は堺屋太一さんでした」。
実際にどうやってロボットを作られたのでしょう。
「大阪っていうのは財産があるんです。
それは"中小企業の底力"。
この底力を使わせていただこうと思ったんです。
知り合いから知り合いに紹介してもらって、その知り合いから知り合いに。
もういっぱい頼みに行ったんですよ。
そうすると、すごい勢いで賛同してくれたんです。
僕もちょっと口説き文句がありまして、"削ったこの部品がここに使われてるってみんなに自慢してええから、やって"。
その後、お仕事のお金を支払う訳ですが受け取ってくれないです。
そういう方もおられました。
協力してくださった皆さんの一生の記念事業になったんです」。
上海万博から15年経ちました。
「15年前は床を歩くロボットがありまして、30年間の研究成果と何百億円の研究費を使ってやっと床を歩けるところまで来ていました。
ところが今はスタスタ歩いたり宙返りしたり、進歩しました。
僕たちは中小企業なので何百億、何千億も投資するわけにはいきません。
僕たちは人の役に立つ、皆さんが喜んでもらうロボットをということで出展します。
世界中でお年寄りが増えてくるに伴って問題が起きてるんですね。
長生きしていただくのは本当に嬉しいことだと思うんですけど、病気になって体が不自由な中で長生きするのは本人も周りも大変なんです。
健康である時間が長くて、病気はほんのわずかで、あとはもう実際に、もう寿命が来るという生き方、健康寿命が長い方がいい。
これがお年寄りにとっては幸せだということなんです。
健康だとか半分健康だとかいう時期をどれだけ伸ばせるかということについて、お手伝いをしたいなと思っているんです。
歳を重ねると多少、身体能力が落ちるんです。
そこをロボットの技術で補って今まで通りの生活ができる。
これを目指して今、ロボット開発をしています」。
具体的にどんなロボットなんですか?
「お年寄りが朝、目覚めて夜寝るまでの生活の中で色んな種類のことをしてるんですよ。
朝起きて、洗面、それから朝食を摂って散歩をする。
午後からは買い物へ...みたいな。
その中で例えば足が不自由になったら出来ないことが増えるんですね。
不自由になった時にその部分をロボットが手伝って今まで通りの生活を送ることができる。
寝ている時にトイレに行きたい。
体が不自由だと家族を起こさないとトイレに行けない。
そんな時に運んでくれるロボットがあったらいいなっていうことで発想して作りました。
『介護ロボット』という呼び方をするんですけども、ちょっと話題になりましてね。
今も売っているんですけども本格的に世界の人が使えるように値段も安くして、機能も上げて色んなことを向上させたものを万博でお見せしようと思っています」。
■これからの社会 人とロボットの共存
「私たちの仕事が取られるんじゃないか...というご心配をされる方がたくさんおられますよね。
AIは万能だと思っておられる方が多いですが、今まで人がやってきた色んな仕事、書物、言動などの中から今のシーンに最適なものを引っ張ってくる技術がAIなんです。
簡単に言うと、0から作り出したものじゃない。
取ってくる技術が素晴らしいんです。
AIができないことというのは、0から1を作ることです。
あるものを集めてくるのはAIが得意です。
人は0から1が作れるんですよ。
アイデア、感情、とっさの判断とか。
そしてロボットが得意なことっていうのは簡単にいったら力仕事。
繰り返しの仕事ですね。
24時間使っても疲れない、文句言わない。
こういうのがロボットの良いところですね。
私もロボットを開発する時に1番注意していることは、このお互いの得意なことを持ってくる。
逆に苦手なことをしない。
これが私のロボット作りの基本方針です。
ベッドから車椅子に移すロボットを作る時のことです。
僕は技術屋なんでね、自分の技術を見せびらかしたいわけです。
ロボットを呼ぶと自分を抱え上げて車椅子に移してもらえる。
こんなロボットができたらええやろなぁと思っていたんです。
ところがその案を持って介護現場でお話しするとアホかと言われました。
そんなもん、なんでいるんや、と。
それは現場がやる、と。
ただ、人を抱え上げる時に腰が痛い。
そこだけ代わってくれないか、ということだったんです。
つまり力仕事だけ。
一生懸命、介護してあげたいけれど自分の力では持ち上がらない。
女性は大変だと思います。
そこだけでロボットが手伝って欲しいということで今の形になったんです。
人が得意なこと、ロボットが得意なこと。
うまくミックスしてやれば、いいものができます。
啓蒙活動の先頭に僕らがなったらいいと思うんですよ」。
■ロボットって儲かりまんの?
「これが大変なんです(笑)。
儲かるのは随分、後なんです。
目の先ですごい投資がいるんですよ。
機械を作るのに樹脂を形成したりする金型がいるんです。
これが家1軒建つぐらいかかります。
その家1軒分のお金を中小企業が思い切って売れるか売れないか分からないものに出せるか...という勇気がいるんですよ。
10軒分投資して、1つ2つが当たったら良い方。
その資金負担に耐えられますか?
なかなか厳しいですね。
ただしそれが本当に世界の人が共感を持ってくれると世界消費になります。
そうするとやがて儲かる時は来るかもしれない...我々もちょっと分からないですけどね(笑)。
うちの場合は池田泉州銀行さんがついてくださっているので、思い切ってできるということですね。
大阪・関西万博への出展、どんな方にご覧いただきたいですか?
「やっぱり実物にタッチして、自分の手で感じていただくっていうのが1番ですね。
生で見てほしいし、生で触ってほしいです」。
2025年の5月20日〜5月26日と10月7日〜10月13日。
どちらも大阪ヘルスケアパビリオンのリボーンチャレンジ内での出展です。
写真1−3
あの上海万博の世界的評価から15年。
玉井社長の情熱が込められたロボットがどんな進化をしたのか楽しみですね!