2024年

12月15日

光の究極の可能性 レーザー核融合に使用する高出力レーザーの応用技術

今週のゲストは、株式会社EX-Fusionの代表取締役社長 松尾一輝さんです。

■株式会社EX-Fusion どんなものを生み出す会社?

「大阪初でレーザー核融合によるエネルギー革命と産業の創出を使命として活動している会社になります。
核融合、いわゆる核融合発電というのは核融合反応を利用した発電方法です。
核融合というのは、原子核と呼ばれる物質の最小単位ですね。
これを外部から圧力を加えてあげることによってぶつけて、そのぶつけたことによってまたエネルギーを発電に利用するというのが核融合発電というものになっています」。

いわゆる原子力発電とは違うものなのでしょうか?

「よく混同されますが、あれは核分裂反応という反応を利用しています。
同じ原子核を対象にしていますが分裂の方は原子核をほっておくと勝手に分裂していく。
その時に生まれるエネルギーを発電に利用していますが、我々の場合はあえてその核同士をぶつけて反応を外部から圧力をかけて反応させているところが大きく違います。
外部から圧力をかけない限り、反応は絶対に起きません。
そういった意味で装置が止まってしまうと反応自体も止まりますので、固有の安全性があると表現されます」。

この研究はいつ頃からされているのでしょうか?

「研究自体は1950年代から始まっています。
元々は核の平和利用っていう観点から研究が始まったので歴史は本当に古いですね。
でも実際にはまだ私たちの生活には生かされていないものなんです。
原子核同士をぶつけるっていうところが非常に難しいので、まだ技術的な成熟度っていう観点では実現はしていません。
今後、いわゆる脱炭素の流れなどで期待をされているエネルギーになります。
様々な方法で核融合を起こす方法がありますが、我々はその中でレーザーという光の力を使って原子核同士をぶつけて反応を起こしてあげようと取り組んでいます。
レーザーで核融合を目指している会社は日本で唯一です」。

核融合エネルギー。実用化されると私たちの生活にどのように関わってきますか?

「核融合というのはこれまでの発電方法とは大きく異なりまして、資源で発電しているのではなくて"技術で発電しているところ"が大きいですね。
燃料が海水から取れる資源で賄えるので例えば海水から核融合反応を使ってエネルギーを生み出そうとすると、 人類が使い切るまでに30億年ぐらいかかると云われています。
もし実現できれば資源に頼らないので例えば電気料金が安定するとか、電気料金が下がっていくみたいな未来があるかもしれません。」。

■核融合エネルギー その安全性とは?

「イメージとして核っていうワードがついていると怖いイメージがあるかと思うんです。
でも核分裂と核融合というのは反応として逆の反応です。
適度に分裂するようにコントロールして発電に利用しているのが原子力。
核融合は起こすのに、ものすごい努力が必要なんですけれども、逆に事故等で装置が止まりましたとなれば、そもそも反応自体が起きません。
暴発させようがないというわけです」。

実はSFの世界では常連のワードなのだとか。

「夢のエネルギーということもあって例えば『機動戦士ガンダム』にも登場します。
1950年代から知られてはいたので、これがエネルギーになれば例えば燃料1gから石油8tに相当するエネルギーが採れるんです。
ガンダムのような大きなものを飛ばしたり動かそうとすると、それぐらいの動力源が必要なんじゃないかっていうところでよく登場しています。
ガンダム世代の方はガンダムを実現したいからこの研究に入ったという方がいらっしゃいます」。

実際に核融合エネルギーの研究はどの段階まできているのでしょうか?

「少なくとも化学実証はできました。核融合によってエネルギーを生み出せるということは分かっています。
今後はそれが十分かっていうところ、あとはいわゆる発電なので安定して供給できるか。
さらに安く供給できるかみたいなところが技術的な開発競争としてあります。
各々の技術で本当に苦戦しているところはたくさんあります。
研究が始まって70年近く実現していないのには、それだけの理由があると思います。
ただ、日本は技術力が高いので材料から製造会社さんから、本当にたくさんの力を持っている方々と一緒になって取り組めば出来ないことはないと思っています。
課題という意味でいうとやっぱり資金力のことは1つありますね。
技術っていう観点では、それを安く製造できるかというところ。
なかなか我々だけでは難しい部分もあります。
1社だけで全て完結する技術ではなくて日本の大企業さんから、中小企業さん、大阪の地場の企業さん、皆さんの協力を持ってして初めて商用化できるものだと思っています」。

オーストラリアに子会社、東京工業大学と連携も。

「オーストラリアの子会社はレーザー核融合から生まれる派生技術が結構たくさんあるんです。
レーザー加工、いわゆる溶接とか切断とか。
あとはレーザーを使って距離を測る技術。
ビジネスになりそうなところも事業化していくイメージ。
将来という意味で言うと、オーストラリアは水素製造にかなり力を入れている国でして。
実は核融合っていうのは電気だけではなくて水素も製造できるんですね。
電気も水素も熱から作りますが核融合は熱源を提供するようなものなので。
その熱をどういう風に利用していただくかっていうのは事業者さんや国によるっていうところです。
東京工業大学さんとは『ブランケット』という壁の技術開発をしていまして。
この壁っていうのがかなり特殊で核融合反応させた後に中性子と呼ばれる粒子が飛び出てくるんですね。
これを受け止めてあげて熱に変換して発電するのが核融合。
これを受け止めるのに結構特殊な材料が必要になってくるんです。
中性子はすぐ壁を抜けちゃうので、抜けないように特殊な材料でできた壁が必要なんです。
その壁を一緒に共同研究させていただいています」。

■未来のエネルギー 大阪・関西万博でどう見せる?

「2つの展示を予定しております。
1つは核融合による発電機のモデル。
核融合自体を展示させていただくっていうところと、この核融合から生まれる派生技術のレーザー加工などですね。
エネルギーは産業の基盤だと思うんですけれども産業自体を創出することもできるのがレーザー化の魅力だと思います。
その両方をお見せしたいですね。
あとは動画で説明をしたり。
イメージ的に"核"というワードを丁寧に説明させていただきたいです。
分かりやすいモデルを作って皆さんにお見せしたいなと思っています。

どういう業種の方やどういう人に観てほしいという希望は?

「どっちの展示にも通ずるんですけれども、我々の技術は広い範囲に影響があると思うんですね。
エネルギーって産業の基盤なので全てだと思いますし、その応用も光の技術を使ったものがたくさんあります。
今回、池田泉州銀行さんの『GUTSU GUTSU』のテーマでもありますが、色んな企業さんを合わせて何が生まれるかを見てみましょう、と。
我々のそのレーザー核融合や派生技術を入れてみて、どういうものが生まれるのかっていうのは見せられるんじゃないかなと思います。
特徴としては高出力のレーザーを扱えるというところ。
既存製品にはないような出力の高いレーザーでより早く切ってみましょうとか。
これまで切れなかった材料が切れるんじゃないか、とか。
まさに『GUTSU GUTSU』のテーマに沿うんじゃないかなと思っています」。
池田泉州銀行さんは創業期に初めて銀行口座を作ったんです。
オフィスが隣にあったこともあってです。
普通だとスタートアップですし自分で言うのもなんですけれども、核を目指した会社って怪しいと思うんですよ(笑)。
ただ、池田泉州銀行さんはそこの部分に逆に魅力を感じていただいて、大阪初の技術もあるしということで初めて口座を作っていただきました」。

最後に大阪・関西万博への意気込みをお願いします。

「国産のエネルギーを作りたいとかですね。
エネルギーの基盤とか産業創出を掲げた会社なので、今回、万博という機会を通じて色んな方にこの技術を見ていただいて、理解していただいて1人でも多くこういうものもあるんだなとか、将来そういった業界に飛び込んでくれる人が増えたらいいなという風に思っております。
全ての人類に必要な技術だと思っているので、老若男女、国も関係なく皆さんに来ていただきたいですね」。

2025年の5月13日〜19日までが核融合の発電機モデルを、そして5月20日〜26日まではそのレーザー技術を応用した切断技術。
ともに大阪ヘルスケアパビリオンのリボーンチャレンジ内での出展となります。

竹原編集長のひとこと

核というと、とっつきにくい、怖いなどのイメージがありますが、それを払拭して未来のエネルギーへと繋げる。
これからさらに期待が膨らみますね。