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12月 8日
−生物多様性可視化技術による未来の森林づくり−
今週のゲストは、先週に引き続きサンリットシードリングス株式会社の代表取締役石川聡太さんと株式会社スタジオテックのディレクター大田圭治さんです。
■なぜ万博に出展? 万博の魅力ってなに?
まずは大田さんから伺います。
「世界中からも色んなお客様がお越しになりますので、どんな出会いがあるんだろうっていう、ワクワクしたところからですね。
個人的なことを言いますと1970年6月に生まれているんですね。
前回の大阪万博の開催中に生まれたんです。
実際にはリアルな記憶として何かあるわけでもないですが、自分が生まれた年を境に日本が大きく変化して、万博がその象徴的な存在であったっていうのは自分の中でもすごく強く印象づいていました。
当時と今では万博の意味合いもだいぶ変わってきてると思うんですけども、やっぱり万博って特別なものだと思います。
取引先の皆さんからも"すごいですね"と言ってくださって期待もすごく大きいのですね。、今回、こんな機会をいただいてとても光栄ですし本当に出展してよかったと思えるように、私たちがしっかり楽しんでいくことが大切だと思っています」。
続いて石川さん。
「私は1988年生まれなので前の大阪万博は上の世代の人の物という感じ。
ただ昭和の成長期の象徴っていうイメージはずっと持っていたんですよ。
それをモチーフにした、いろんな作品を見て育ってきた世代なんで。
もう1つあるのは技術の博覧会だっていうイメージがすごくありますね。
次の時代につながる新しい技術がどんどん出てくるような場。
それがこの時代にもう1回開かれるっていうことであれば、新しい技術を謳う会社としては出していかなきゃいけないんじゃないかなと。
次の時代の社会イメージを発信していく場っていうのもあると思います。
それこそが子供の頃にイメージした21世紀の社会。
未来的なヘルメットをかぶって歩いていたり、リニアモーターカーが走っているようなイメージがあったじゃないですか。
あの時と今の21世紀とは違うけど今から見て2050年とか2100年の社会がどうなって行くのか。
自分たちが思っていることを発信していく場にすごく魅力を感じています」。
会社のスタッフさんの反応はいかがですか?
ディレクターの目線として大田さんから。
「今回のプロジェクトのディレクターとして色々伝えています。
ただ、どうしても携わってない人にとっては、なかなか何をやってるか伝わらないんですよね。
特に熱量みたいなものってなかなか伝わらなくて。
もっと共有したいということからSNSを立ち上げてプロジェクトチームで発信するようにしたんです。
7月に岡山県西粟倉村へ視察に伺った時に役場の人とか林業をされてる人、お店をされている人、色んな人にお会いしたんですけど、皆さん本当に素敵な方ばかりでプラスの空気に満ち溢れていたんです。
スタッフ全員が西粟倉村に魅了されてしまった感じなんですよね。
私たちが展示で伝える森林の未来っていうのは人の暮らしに紐づいたところにあるんだろうと思っていまして。
この森の村の人たちの素晴らしさっていうのも一緒に伝えていきたいと思いました。
そうするとこれは展示だけでは無理だろうなと思ってSNSを立ち上げたんです。
SNSで発信をしていくことで社内外の人にも一緒に万博を作り上げていく雰囲気を作れたらいいなと思っています。
だから私たちの万博はもう始まっています」。
石川さんはいかがでしょうか?
「最近、展示会など外に出展する機会が多くなってきたんですよ。
その中で研究、産学民の中の学の立場として一般の人向けにどういう発信をしていくか。
どういう風に見せたら皆さんに興味を持ってもらえるか、わかってもらえるか。
うちの社員は研究出身が多いんですよ。
色んな大学出身の人とか研究出身の方が抱えている問題だと思うんですけど、世間の人たちとのギャップがあります。
自分たちが面白いと思っているものを面白いと思ってもらえない。
でもそれって見せ方の問題や認識が少しずつ育ってきたかなっていうのはあります。
うちは菌を扱っていますけど、その菌をデフォルメして、それこそ漫画みたいな、ちょっと可愛いイラストにして、自治体さんのイベントに出していただいて子ども向けにシールを配ったり。
そんな風にして外に出していくことをやり始めているんですね。
化学の正確さは大事だけどそれをそのままやっちゃうと学会発表になってしまいます。
その正確さは失わずデフォルメして1番伝えたいことを単純化していく。
伝えやすさをどうしていくかっていうところで、社内の人間もすごく考え始めていますね。
その積み重ねが万博っていう場で発揮されるとすごくいいなと思っています。
スタジオテックさんは見せ方のプロフェッショナルなんで勉強になりますね。
プロモーションムービーなど、うちだと絶対ああいうのは作れないです(笑)」。
■深刻化する地球環境問題 立ち向かう人類の英知は
大田さんから伺っていきましょう。
「今回の展示のテーマが"サイエンス×アート"。
科学とアートの力によって未来の森林と暮らしのあり方について考える。
そんなきっかけになるような展示を目指しているんです。
私たちスタジオテックはアートの部分を表現しますが、アートにはやっぱり見えないものを見せる力があるんじゃないかなと思っています。
誰も見たことのない微生物の世界を描くことで体験する人の想像力を掻き立てるような展示にしたいんです。
この生物多様性の理解っていうのは結局やっぱり人間以外の視点をいかに持つかっていう想像力がベースなんじゃないかなと思います。
展示の体験をすることによって、ひとりひとりが生物や自然に対して親しみを抱くような、
そんな小さな体験が大きなスケールに広がっていくといいなっていう風に思いますね」。
石川さんはどう思われているのでしょう。
「私はどちらかというと地球環境問題をあんまり大きなスケールで語りたくないんですよ。スケールが大きい話になっちゃうと自分事から離れていくじゃないですか。
スケールを小さくして身近な問題として話したいんですね。
地球環境問題、今のその抱えている問題ってなんですかっていうと、やっぱりその身近な環境が消えていってるっていうことだと思ってます。
例えば田んぼや森ってどんどん無くなっていますよね。
私は趣味で生き物を探しに森に1人で入っていきますが、これまで水が溜まっていたところが土地で埋まって、水が全然溜まらないようなとこになったりとか、木は生えているけれど葉を鹿に全部食われて森としてはもう砂漠みたいな感じになっちゃってるとか。
良かった環境が消えていっているっていうのがすごく身近な問題で。
田んぼが消えると起こることの1つは水害。
最近、大雨とか多いですよね。
大雨になった時に水を蓄えてくれるとこが全くなくなってすぐ水害が起こってしまう。
豊かな森が消えていくと土砂崩れが多くなったり。
雨が降った後に森が1度、水を蓄えてくれる機能がなくなるので水温にも影響します。
今年すごく暑かったじゃないですか。
川へ魚を捕りに行くのですが、9月ぐらいにアユやヤマメが泳ぐ川の中流より上の方へ行ったんですけど水温が30数度くらいあるんです。
そうすると結局魚も住めなくなっちゃうんですよね。
身近な環境が消えていくと。地球環境問題って最終的には自分事になるんです。
要は食べたいものが食べられないとか、そういうところに繋がってくるわけです。
知恵とか技術がどういう風に対抗できるかっていう時にもスケールを落とした話をしたくて。
今自分たちが持っている技術は身近な環境を新しく作ることができるんですよ。
超未来的技術ではなくて田んぼを再生するとか。
身近な技術を使っていくことが本当に地球環境問題に身近なスケールから対抗していく術だと思っていますし、それって人間しかできないんですよ。
研究者の中には、放っておけばいいという意見もあります。
人間が手を入れず放っておけば100年、200年後には自然は元に戻ると。
でも私はそうは思わないです。
人間がしっかり手を入れて管理していかないと、消えていく環境ってのは確実にあるわけです。
100年、200年なんて今生きている我々がいないじゃないですか。
我々の子供もいない。
そういうスケールで語っちゃうと、じゃあ興味ないですわ...という話になる。
今生きている我々にとって何が大事かって考えたら、やっぱり積極的に環境に手を入れるような技術を使っていくべきだっていうことになっていくと思います。
結局、1番大事なことって興味なんですよね」。
万博に向けての意気込みを聞かせてください。
まずは石川さんから。
「学会発表にならないように多くの人に楽しんでもらいつつ、未来社会のイメージを伝えるものを作りたいと思って頑張ります」。
そして大田さん。
「スタジオテックっていう会社はプレイヤーでありながら本質的なところはサポーターなんですよね。
ビジュアルを作るっていう意味では表現者なんですけども、その表現っていうのは、クライアントの魅力を最大限に伝えてサポートしていくための手段なんですよね。
この展示が終わった時に成功したかは一緒に共創してくださるサンリットシードリングスさんや西粟倉村の未来に貢献できたかどうかっていうのが1番重要だと思っています。
それが実現できたら、スタジオテックも新しい世界が見えてくると思っています。
サンリットシードリングス株式会社と株式会社スタジオテックは2025年5月20日から26日まで出展されます。
万博ならではの世界を見据えた表現。
それも地球環境問題をとても身近に感じられるような展示です。
ここからみんなの意識に変化があれば良いですね。