2024年

12月 1日

「微生物になって50年後の未来へ時間旅行!」
−生物多様性可視化技術による未来の森林づくり−

今週のゲストは、サンリットシードリングス株式会社の代表取締役 石川聡太さん、そして株式会社スタジオテックのディレクター大田圭治さんです。

■異ジャンルなコラボ その出会いは?

まずはサンリット・シードリングス株式会社の石川さんにお仕事の内容から伺っていきましょう。
「京都大学が作ったスタートアップ企業で京都大学がやっている研究成果を社会に役立てるために作った会社です。
以前、この番組に出演させていただいた時は、森の菌を農業へというテーマで池田泉州銀行さんの研究助成の大賞をいただきました。
ずっと農業の土壌改良などを生態系や微生物を使って改善することをやってきた会社なんですが、色々と業務が拡大しました。
今は建築関係、不動産関係のお仕事が多くなってきました。
先日も都内を歩き回って土壌を採取して、どういう微生物がいるかなどを調査をしてきました。
農業だけじゃなく公園やビルの屋上に緑地を作る時も、微生物に着目して生態系をきちんと考えてから景観を作りたいっていう要望が強くなってきています。
その中で科学的根拠をアドバイス、コンサルティングに近いような形で環境分析、環境設計をしています」。

そして株式会社スタジオテックの大田さん。
「僕らは撮影とか3DCGで写真や動画を作っているビジュアルの制作会社です。
サンリットシードリングスさんとは全然カテゴリーが違うんですけども、普段はインテリアメーカーを中心にアパレルや小物などのカタログや広告のビジュアルを作っています。
今年38年目の会社です。
当初はインテリアの写真撮影スタジオとして設立しました。
そこからデジタル合成や3DCGを早い段階で取り入れながら、現在では写真や映像のアナログの良さと3DCGのデジタル技術を組み合わせたり使い分けたりしながら最適な制作方法を提案しています。
商品をいかに魅力的に表現するかというところが私たちの仕事です。
スタジオは東京と大阪を拠点にやっておりまして、特にフォトグラファーとCGクリエイターが連携をとってお互いディレクションし合いながらクオリティを高めていく。
特に、この実写みたいな指示表現などは得意としています」。

この2社はどうやって出逢われたのでしょう?
石川さんに伺います。
「ちょうど1年ぐらい前に池田泉州銀行さんが万博のヘルスケアパビリオンの中の展示企業を公募されていました。
我々はお互い全く知らない状態で別々にそこに申請しました。
そこから去年の夏頃にプレゼン審査がありまして、私の2つ3つ前ぐらいで発表されてるところが、スタジオテックさんでした。
その時に生き物のことの展示企画を発表されて、我々以外にも生き物のことを考えている企業がいるんだなと思った記憶がありますね」。

大田さんはいかがだったのでしょうか?
「そのプレゼン審査の時の交流会で同じテーブルの隣同士だったんですよね。
それも偶然? 偶然だったんですかね(笑)。
生物繋がりで色々お話をして盛り上がって、その場でなんか一緒にやっていけるといいですね、みたいな感じになったんですよね」。
「我々がビジュアルを表現すると学会発表のポスターになるんですよ。
すごく説明的で一般の方が見た時に素通りされる。
そこは我々の弱点だったんで、どう見せるかというころで、スタジオテックさんと組ませてもらうと、すごくいいものが出来上がりそうだなと思ったんですよね」と石川さん。
「微生物って目に見えないし微生物も周りが見えてはいない。
誰も見たことのない世界を表現することをやったことがない。
新しいチャレンジになると思いましたね」と大田さんも続きます。

まさに万博のテーマのひとつである『共創』。
「普段お会いするような機会のない方々とお会いできてすごい刺激をいただいています。
今回題材にしている岡山県の西粟倉村も知らないでいました。
石川さんとお会いして色んな歯車が回り出した感じですね。
西粟倉村には7月に行きました。
3日間ぐらい滞在しまして、林業をされている人のお仕事を見させていただいたり、役場の方とお話をしたり、お店をされている人のお話を聞いたり。
お会いする人、お会いする人、すごいいい人ばっかりで。
村に魅了されて帰ってきました」と大田さん。
2社の共創、村との共創ですね。

■森の菌の専門家と映像のスペシャリスト 万博で何を魅せる?

大田さんに伺います。
「タイトルは『微生物になって50年後の未来へ』です。
岡山県の西粟倉村っていう山を舞台にしておりまして、村が山を育てていく100年の森構想というプロジェクトをやられているんですけども、村の人たちが山を育てていく様を微生物の視点になって追っていく展示になっています。
基本的には体験ブースがありまして、そこで微生物になりきって来場者に体験していただく。
別のモニターで人の視点や空から見た森の状態を一緒に流すことによって、地上の様子、土の中の様子が一緒にわかる展示にしたいと思っています。

石川さんにも伺います。
「50年かけて森林が育っていく様子を色んな視点から没入感を持って体験してもらうために小さな映画館みたいなものを作るんですよ。
映画館といっても前面に大きなスクリーンがあるわけじゃなくて立体的なもの。
ここでは育っている森が見える、こっち側では別の視点で育っていく森が見える...みたいに。
森林の中にいるんだけど自分が神様になったような視点で上から森林を見たり、微生物になって下から見たり。
環境の中に溶け込んでいくようなブースにしています。
プロジェクトの発足当時から色々話してたことなんですけど、どういう視点が未来に育っていく森林なのか。
1つは上から見た衛星画像など上から見た視点。
もう1つは普通に森に入った時に、我々の目の高さで森の中の景色がどう変わっていくのか。
さらにもう1つは、その化学の視点。
ちゃんとデータ化された森林の中の生き物の関係性などです。
いわゆる生物多様性の視点です。
イメージしやすいのは自分の健康を立体的に見るような展示です。
体型がどう変わったとか、お肌がつやつやだなとか、そういう視点と診断カルテのような視点ですね。
最後の微生物は、例えば腸内細菌みたい感じです」
人間も50歳になった自分はこれだけ健康なんだというイメージを持ちやすいじゃないですか。
それを森林という大きな舞台でお見せするのがこのブースの狙いです」。

大田さんは映像表現としてご苦労されたのでは?
「まだ苦労している途中なんです(笑)。
今いわれたような人と森と微生物の関係みたいなものがうまく体感として感じられるような。
土の中で何が起こっているかなんて分からないですよね。
それが人の視点や鳥の視点などを重ね合わせながら、生物同士がどんな風に繋がっているのか。
そういったことを映像で表現できればと思っています。
専門的なことが当初、全然わかんなくて(笑)。
実際に石川さんに調査の仕方や分析されたものの見方などを2回ぐらいレクチャーしていただきました。
一般には難解なところもあって、逆に僕らがそれをそのまま全部正直に表現してしまうと伝わりません。
いかにシンプルに直感的にそれを表現するかっていうところが僕らの役割だと思っています」。

来週も引き続きお話を伺います。

竹原編集長のひとこと

別ジャンルの企業が同じ方向を見て、手と手を取り合って表現して世界にメッセージを発信。
これぞ万博の共創ですね。