2024年

11月17日

ブルーフォレストプロジェクト
マングローブ生態系を目の前で観察しよう!

今週のゲストは、株式会社イノカの取締役COO 竹内四季さん。

■株式会社イノカはどんなことをする会社?

「我々は海の環境をそっくりそのまま、人工的な環境として陸上に再現しています。
サンゴ礁とかマングローブなど海の環境、生態系が今すごく世界的にも注目されています。
日本だと海藻が生えている藻場と言われるエリアなどが注目されているんです。
そんな中、どんどん自然環境が失われていってしまっています。
そこで陸上にこの生態系を再現することができることで研究面だったり、色んな人に海の問題を伝えていくっていうようなことを事業としてやっています。
我々が1番創業期からやっているのがサンゴ礁の生態系を再現すること。
実は多くの水族館や研究機関でも人工的な環境で飼育するのが難しい生き物として知られているんです。
そういったサンゴを2022年に世界初の人工環境で産卵させる実験に成功いたしました。
現在の環境問題の中で数を減らしていますが、人工的な環境の中でそういった産卵をさせられるっていうことによって、科学的な研究の糸口が掴めるんじゃないかと注目をいただきまして。
たくさんの人に本物の生態系を見ていただくことに繋げていく教育イベント事業も創業期からやっています。
ショッピングモールなどのイベントスペースに小型の水槽を持っていって子どもたちに、見て少し触れてもらっています。
そういった生々しい自然への向き合い方、体験っていうのを通じて、やっぱり自然ってすごく面白いなって思ってもらえる人を増やしたいと思っています」。

社名もユニークです。
「イノカという社名は英語では『INNOQUA』と書きます。
最後の綴りが『CA』じゃない。
「イノベートアクアリウム」のアクアリウムのクアからきています。
アクアリウムは「水槽」という意味です。
実は、我々の会社の『環境移送技術』は、元々、趣味でアクアリウムをやっている人の卓越した飼育技術をベースにしています。
環境を再現する職人技術の賜物なんですね。
アクアリウムってものすごく深い世界でして。
日本にはご自宅の趣味でアクアリウムをやられている方って200万人ぐらいいるそうなんです。
そのそれぞれの領域で、この生き物を飼育することを極めようっていう人とか、この環境を再現しようっていうことに、本当に心血を注いでいる方々がおられます。
我々イノカは2019年に設立したベンチャーでして、代表取締役CEOの高倉葉太が東京大学でAIの研究をしていました。
共同創業者に"CAO"という"チーフ・アクアリウム・オフィサー"、最高アクアリウム責任者という世界初の役職の増田直記という者がいます。
彼は海なし県・栃木県の自宅に個人的趣味で2tぐらいの水量が入る水槽を35年ローンで購入したほどの熱量なんです。
アクアリウム業界の中でもサンゴの飼育は難しいことで知られてるんですけれど、彼はサンゴ礁が生息する海をそのまま再現することで、サンゴ礁の生態系を反映させている水素を作ることができました。
彼が面白いのがアカデミックなバックグラウンドはなくて、高校を卒業して工場で勤務しながら自分の小遣いの中でやり繰りして成立させているんです。
イノカは東大発のAIエンジニアと、高校を卒業して趣味で卓越した技術を構築してきた、この2人が立ち上げた会社なんです」。

■『夢洲マングローブラボ』ってなに?

「マングローブを万博という会場で見られるようにしたい。
日本だと沖縄の一部とかで見ることができますが、実はマングローブっていう名前の植物はなくて環境規制環境に自生する植物群を総称してマングローブと云います。
マングローブも世界的にものすごく注目されている生態系です。
それを日本で水槽と一緒に展示したいなと思っています。
イノカにはマングローブシーの専門家の五十嵐という者もいます。
彼も自分の自宅のベランダを改造してマングローブの生態系をベランダの間に温室を作って再現しました。
もちろんこれも趣味から生まれたことです。
マングローブっていう生態系がなぜ世界的に注目されているかといいますと、地球温暖化でやっぱり原因になってるCO2をマングローブ林が吸収して、土壌に蓄積することができるそうなんです。
脱炭素という観点もありますし、マングローブ林自体がすごく豊かな生態系。
この脱炭素、生物多様性、どちらの観点を持った生態系ってことで注目されています」。

実際にはどういった見せ方をするのでしょうか?
「マングローブ林を、ぎゅっと凝縮したような体験をしていただける水槽を展示しようと思っています。
今設計中で大体1m弱ぐらいのコンパクト水槽を作って、そこにマングローブを再生する感じです。
マングローブ生態系にはトビハゼっていうハゼや鉄砲魚という魚が生息しています。
そういう生き物たちも一緒に、もうまさに生態系をそこに持ってくる。
自然と人類の共生っていうテーマは今後の人類にとっては重要なテーマだと思います。
それを乗り越えられるのがサイエンスでありテクノロジーだと思ってまして。
我々の自然をテクノロジーによって再現しながら、自然で起きていることを明らかにしていくことが今後の社会にとって非常に重要になっていくと思います」。

■未来に美しい自然環境を 今からどうすればいい?

「やっぱり今、海の問題がたくさん起きています。
例えば、ごみが漂着しているのでゴミ拾いに参加しましょう、とか。
そういったことも色々とたくさんあるんですけれども、敢えて私がここでお伝えしたいことは"自然は面白い"と思っていただくこと。
興味を持っていただくっていうのがまず結構大事だと思います。
印象的なエピソードがありまして、我々の教育イベント事業ではこれまで1万5000人近い小学生たちが参加してくれました。
海の面白さを伝えてきたんですけども、結構最近の子どもたちって、すでにSDGsを教科書で学んでいる世代なんですね。
そうすると、"海"って言うと"環境問題"の場所だって思ってるんですよ。
海に行くとゴミを探し始めて、ごみ拾いを始める。
真っ先にゴミ拾い始める子たちがいるって話を聞きました。
もちろんすごく良いことではあるんです。
しかし、目的意識として"海はものすごく面白い場所"で、こんなに楽しい生き物たちがいて、人間にとってもすごく大事なパートナーである。
だから彼らを守るためにはどうすればいいか...という行動原理で動いていく方がやっぱり本質的だと思うんですね。
環境問題の関心ばかりが先行してしまうっていうのは何となく違和感があります。
我々も会社のフィロソフィー っていうのを定めました。
みんなで1年半ぐらいかけて頑張って考えて出た結論が"自分たちが見たい自然を見続ける"っていうことなんですね。
我々は環境を守りたい人たちではなくて自然環境を一番面白がっている人たちでありたい。株式会社イノカには生き物好きがたくさん集まってきて、そういう人たちがそれぞれ好きな自然を守るために何ができるか。
やっぱりそういう発想の順番っていうのがすごく大事だと思います。
環境問題っていうとヨーロッパの方がルールメイキングしていっていますが、海に関してはやっぱり日本からぜひ発信していきたいなと思いますね」。

株式会社イノカは2025年5月20日〜26日までね、大阪・関西万博で出展されます。

竹原編集長のひとこと

海に囲まれた日本だからこそできること、生まれる感性。
見たい、見続けていたい自然が人間が求める地球環境なんでしょうね。