2024年

10月27日

世界67か国の学校に行ってみよう! ~越境教育と協同学習の未来~

大阪・関西万博の『大阪ヘルスケアパビリオン』で、池田泉州銀行が運営するブースに出展される中小企業・スタートアップ企業をご紹介します。
今週のゲストは株式会社 With The Worldの代表取締役 五十嵐駿太さんです。

■オンライン国際交流ってなに?
「日本の小学校から大学までがオンラインを使って、海外の同じ同世代とオンラインで繋がります。
とある学校の先生方、生徒が決めたテーマでディスカッションしたり交流を図る、そういった授業を学校の中で導入を進めています。
現在、世界67カ国と繋がっていまして、明日はインド、明後日はエジプトみたいな。
色んな国々と友達を作れる事業です。
相手の宗教などの考え方も学ぶことができます。」

現在、世界67カ国と繋がっているネットワーク。
どのようにして広げられたのでしょう?
「最初はドアノックで、学校の先生方に"こんなことやりたいんだけど協力してもらえないか"といった感じですね。
アポなしでした(笑)。
海外でも中学校で習った英語を使いながら。
最初にインドネシアの学校から導入していただいてスタート。
そこからフィリピンなど少しずつ広がっていきました。
きっかけは2020年。
留学が難しくなったコロナ禍でした。
その時に海外の学校は違う国の先生と繋がっていることがよくありまして。
その先生がSNSとかで私のことを紹介して下さいまして。
そうすると知り合いの違う国の先生が私に繋いでくださいまして、紹介してほしいという問い合わせをたくさんいただきました。
特にインドでバズりました。
インドでもいろんな地域の先生方から問い合わせをいただいて繋がることができました」。

繋いだその後、実際にはどんなことをしていくのでしょうか?
「例えば小学校、中学校だと、まだ英語を習い始めて間もないので、まずは友達になってみよう。
こんなことからです。
"友達にどんなことを紹介したいですか"
"絵で書いて質問してみましょう"みたいな。
そういった明るい授業をたくさん行いつつ、高校、大学生になると変化して、それぞれ関心のあるテーマへ内容が変わっていきます。
例えばジェンダーや貧困、環境など社会性のあるテーマです。
ネットで注目されている国にインタビューしにオンラインで繋いだり、意見交換をしたり。
色んな手段を使いながら授業をゼロから作り上げていきます」。

語学習得よりもさらに深いテーマ。
「ほとんどの日本の生徒は英語に自信がないようです。
それを解消するためにおよそ80人のバイリンガルのアシスタントスタッフがいまして、そのほとんどが大学生なんです。
自分の数年後の姿、立ち位置の方が生徒たちも心を開きやすい。
そんなお兄さんお姉さんが仲介役に入ることで言語を超えた価値観を知ることができ、ディスカッションを行えます。
"どう話せば伝わるか"というのもありますが、"話したいテーマで交流できる"ことが最初の取り掛かりとして授業に参加しやすいモチベーションに繋がっているという印象を抱きますね」。

■大阪・関西万博でオンライン国際交流はどんな展示をするの?
「今、67カ国とオンラインで繋がれる時代になりました。
今度は各国の学校の先生、もしくはクラスメイトと一緒に学べるような、そんな環境を作りたいと思いまして。
ブースでは数分間の展示内容になるんですけど、67カ国の学校に実際に訪問した気分になれる、そういった展示をしようと思っています。バングラディッシュの生徒と一緒に数学をしたり、ヨーロッパの生徒と一緒に英語を勉強したり。
海外の生徒がまるで自分のクラスメイトのような感覚でその科目を勉強できるような、そういった体験ブースを万博では作ろうと思います。
日本の学校にいながら教育を受けることが1つの選択肢になって、例えばヨーロッパの歴史に関心があるのならヨーロッパの歴史の授業に参加して、一緒に授業を受けられる。
デジタルの力を使えばお金をかけることなく留学体験ができます」。

展示は難しいこともありますか?
「本当はライブでどんどん繋がっていこうというアイデアがありました。
実際に各国にアンケートを取ると67カ国のほとんどの学校が関心がある、ぜひ繋いでほしいという回答だったのですが時差が問題でした。
実際には夜が得意な子もいたり、朝が得意な子もいたりするので、時差があったとしてもこの企画ではライブで繋がっていけると思うのですが、万博は会場の時間が決まっているので難しい。
繋がる国々を限るか、それともアフリカ、アメリカの南米エリアは収録して繋がった気分になれるか。
いずれにせよ来場者の方にはデジタルで繋がる時代になっていくんだっていうのを感じてもらえるように創意工夫はしていこうと思います」。

■オンライン国際交流はリアル交流を超えることはできますか?
「リアル交流を促進するっていうところは、オンラインの強みだと思っています。
繋がると3、4回ぐらいで子どもたちは海外の友達に対して発話量が上がってきます。
その後に海外に行きたいという今までになかった感情が芽生えてくる。
リアル交流を促進するっていうところは、すごく強みになると思います。
ただ、リアル交流を超えるかというところは色々調査をしたことがありました。
オンラインは良くも悪しくもその画面の中でずっと90分間一緒にいます。
話さざるを得ない環境がそこにあるわけです。
リアルに会って対面で沈黙はちょっと他所を向いて誤魔化したりできるんですけど、オンラインだと沈黙は耐えきれなくなるので何か喋らなきゃいけなくなる(笑)。
話す会話の回転量はオンラインの方が高くなるケースがあることがやってみて少しずつわかりました。
それがまた異文化理解の度合いに繋がったり、その友達に会ってみたいって感情になったりとか、そういった意味での最初のきっかけはハードルが下げる意味でもオンラインは活用できます。 実際に現地に行った後の異文化理解、情報量を収集できるのも、オンラインの方が実はあるかもしれないですね」。
オンラインの有益性は僻地や離島にいる方にも良いと思います。これまではいい教育環境にするためには都市部に出なきゃいけないという時代でした。
デジタルが普及したおかげで離島にいても公平で上質な国際教育受けることができる。
色んな国々とコミュニケーションが取れるのは、まさにオンラインだからこその強みです」。

日本の子どもたちは外国と繋がることでどんな感想を持っていますか?
「繋がった後の感想を聞くとアジア圏内の子たちと繋がった時に満足度が高いことがわかりました。
理由としては、英語が同じ第二言語なのでハードルが低い。
完璧な発音じゃなくても良いってことがわかる。
で、文法が完璧じゃなくても会話になるんだと気づく。
話していることがそのままテストの感覚に陥らずに、本当にカジュアルに話すっていうことが主になってくる。
そこの最初のセットアップ環境が得られるのはアジアで第二言語が同じということからですね。
さらに親日国が結構多いので、めちゃくちゃいいリアクションを取ってくれるんですよ。
"朝8時に学校に行くよ"という何気ない言葉にも"そうなんだ〜!"ってリアクションしてくれる。
気持ちを乗らせてくれるので日本の生徒も次はこんなこと話してみようと、シャイな心を打ち破る。
そういった環境にしてくれるのは、アジアの子どもたちの好奇心が大きく作用しているのかと思います」。

海外と繋がる他にこんな繋がりも...。
「日本にいてクラス環境が馴染めなかった、もう1回学校に通いたいと思ったけれど自分にとってはハードルが高かった。
そんな高校1年生がいたんです。
その生徒にインドネシアの生徒と繋がる機会を僕たちで作ってみました。
インドネシアの生徒がすごくポジティブで明るいキャラクターだったんですね。
日本のその子を受け入れてもらいやすいような環境がありました。
自分を知らない誰かともう1回1から関係構築をしたい。
それがハードルの低さに繋がったっていうこともあってインドネシアの学校なら行ってもいいかなと言ってくれるようになったんです。
その後、インドネシア・バリ島の学校に編入学を手伝いまして。
そうすると日本で不登校だった子が現地でヒーローになって。
若いっていうのはすごいなと思うのが、インドネシア語を現地で覚えるんですよ。
インドネシア語の授業も次第に理解できるようになって。
最初は苦労したみたいですけど、そもそも周りの子が明るくて優しいので、理解してなくても教えてくれると。
日本にいた時に前髪が長かった子がバッサリと切って、ショートカットにしてイメチェン。
その後、ジャカルタの大学に進学して今、モデルをやっているんです。
今、ジャカルタの大学の交換留学生として東京の大学に"留学生"として行くんです。
高校時代は挫折してしまった、でも、今ならもう1回日本の環境でやり直せるかもしれないと気分も一新して、これから1年間、東京の大学に行くんです。
今、不登校支援はたくさんあるんですが自分のことを全く知らない、アイデンティティも知らない同世代の友達から1からやり直す。
これは1つのオプションとしても今後なり得るんじゃないかと思っています。
今とある自治体と一緒にこの不登校支援を国際交流で解決する活動を始めています」。

来年の大阪・関西万博への意気込みをお願いします。
「国際交流って、今まで対面で異文化の人と話し合うことでした。今はオンラインでも繋がることができるし、視点を変えると不登校支援にも繋がる。
さらに国際平和にも繋がるかもしれない。
この私たちのブースを体感することで、いろんな国々のダイバーシティを理解して受け入れて、国や子どもたちとどう接して関わればハッピーな次の人生を送れるのかっていうのを身近に感じてもらえるような、 そういった機会にできたらいいなっていう風に思っています。
他国は他人っていう感覚が少しあるかもしれませんが、距離が近くなって将来、明るい未来を作っていく仲間と思った時に、いい未来を描いていけるようなブース出展と機会になればいいなと思います。

株式会社 With The Worldは2025年5月20日〜26日まで出展です。

竹原編集長のひとこと

世界に友達がいると戦争なんかしません。
オンラインでの国際交流はデジタルの力で物理的距離をなくして、心の距離をグッと近くしてくれますね。