2024年

10月20日

世界初!「香り」がもたらす、感じて、癒して、認知能力が向上するアート

いよいよ来年に迫った大阪関西万博!
オール大阪でつくりあげる大阪ヘルスケアパビリオンで、池田泉州銀行が運営するブースに出展する中小企業・スタートアップ企業をご紹介します。

今週のゲストは、久保井インキ株式会社の代表取締役社長 久保井伸輔さんです。

■インキの会社が万博で香りの展示
「まずは私どもの会社のお仕事の内容を簡単にご説明します。
ラベル用やパッケージ用の印刷用インキを作っておりまして、元々オフセット印刷という裾野の広い業界に販売していました。
さらに偽造防止の印刷物の開発、マイクロカプセルを作る技術ができました。
小さな粒なんですがその中に香りを閉じ込めることができます。
一見すると新しいように思われますが、実は30年ぐらい前からやっています。
色々とブラッシュアップを重ねて少しずつ進化してきたわけです」。
番組の前に久保井社長から頂いた名刺は、擦るとやさしい花の香りがします。

インクに香りをつけようと思ったきっかけは?
「偽造防止の印刷をする上でマイクロカプセルの中に溶媒を閉じ込めます。
マイクロカプセルはそれだけではなくて色んなことができるので、香りを入れてみたらどうなるかなっていうのがスタートなんですよ。
この香りを印刷するための技術開発は一定の段階まで到達しています。
今は新たな取り組みとして、このただ単に香りが出るというだけではなく、この香りにその他の機能を持たせていきたいというアイデアがあります。
それは"香りによる認知症予防"。
実は鳥取大学さんのスタートアップで『ハイパーブレイン』という会社があります。
こちらが開発なさってる香料を使って私どもが印刷用のインキを作り、認知機能を回復させるということが期待できるアイテム作りに取り組んでいます」。

実際にどんな展示を行うのでしょう。
「表面を擦っていただくと香りが出るこの技術と、香りによる認知機能の回復、認知機能の向上。
これを一体化して紙媒体っていうものにこだわらないアート作品をと考えています。
今回出させていただくのが大阪ヘルスケアパビリオンですから、やはり健康に着目しました。
SDGs万博という側面もあります。
"誰一人取り残さない"という目標がありましたよね。
目の不自由な方に少し楽しんでいただきたいので、普段触ることができないアート作品に触ってほしいと思ってます。
香りなど少しでも五感に伝わるようなものを作って、思い出のひとつにしていただければと考えています」。

■印刷物が香る 実際どんなの?
「ハガキに見慣れた石鹸パッケージの柄がありますよね。
これは牛乳石鹸さんからのご依頼でお作りしました。
お馴染みの赤箱の香りを製品化しています。
今あるようなものでしたら、全てもう販売しています。
販売用のECサイト・香りの印刷所『プルースト』を作りました。

万博で展示される作品はどのように制作されるのでしょうか?
「現実的なアーティストさんっていうのはまだ決定してないんです。
少し前から私たちはアーティストの発掘という活動をやっています。
『UNKNOWN ASIA』というアーティストが集うイベントがあるんです。
ここに会社として協賛させていただいて、私どもの会社の名前をつけた『久保井インキアワード』を出して、アジアの中から数十名のアーティストさんがいろんな作品を展示していただいています。
今後、アーティストの方とお話を進めて行こうと考えています。
通常、アート作品は触ってはいけないものが多いです。
そんな中、触れるというのを大きなポイントにしたいと思っていますので、そこはしっかりとご納得いただいた上で制作したいと思っています」。

■香りつきの印刷グッズ 売れそうですか?
「単純な量産というとそんなに難しいものではないですね。
比較的量産はやりやすい。
ただ"売れる""売れない"の前提としてまだ知られていないというのが非常に大きいです。
万博関連でいろんな方とお話をする機会が多いんですが皆さんまだ知らない。
そこで香りがする名刺をお渡しして体感していただきます。
この香りの印刷物を作るECサイト『プルースト』ですが、この名前ってあまり聞き馴染みがないかと思うんです。
マルセル・プルーストという作家の名前が由来して、この方が書かれた『失われた時を求めて』という長編小説があります。 その小説の中で紅茶に浸したマドレーヌを食べた主人公の記憶が蘇り...という物語。
特定の香りで記憶や当時の感情を思い出すことを「プルースト効果」と呼ぶそうです。
その話からこの名前でやっていこうと思いました」。

名刺の香りつきと通常のもの。
価格はどのくらいの違いがあるのでしょう?
「この、先ほどお渡しさせていただいた名刺は4色。
これに香りの加工したこの名刺100枚で4000円ぐらいですね。
万博会場でも匂いの出る印刷をご存じのない方が多分多いと思います。
これを機にパッケージだとか販促物などに使っていいただきたいと思いますね。
例えば車の芳香剤。
売り場には大体サンプルとして現物が置いてあることが多いです。
現物を出すのは勿体無いと思うんです。
お店にお話を聞きに行ったこともありました。
あのサンプルはメーカーさんが負担するらしいです。
商品自体の美観の問題で中の液体などが半分ぐらいになったら交換しなきゃならない。
そうするとサンプルを出すだけで年間億単位のお金が必要らしいです。
そこに我々が印刷した香りつきのラベルを置いとくとか。
そうするとコストダウン、環境保全にもつながります」。

大阪・関西万博への意気込みをお願いします。
「50年後の世の中を色々想像しています。
印刷という切り口で考えるのではなくて皆様が手にするアイテムに香りがついている。
これはよくあると思います。
その香りがただ単にいい香りというだけではなく、そこに意味がある。
自分の健康を増進してくれる、商材のパッケージにサンプルがある、名刺にも香りがついている。
その昔、シャンプーも香りの啓蒙をしたそうです。
ですから50年後は"香りがない名刺なんて..."。
そんな時代になっていればいいなと思います」。

久保井インキ株式会社は2025年5月20日〜26日まで出展です。

竹原編集長のひとこと

香りつきの名刺をはじめ、身の回りに香りを纏うことで変わる商品がたくさんありそうです。
万博で触って香るアート、楽しみですね!