2024年

7月14日

廃棄するストレッチフィルムを有料回収し再生へ

今週のゲストは野添産業株式会社 代表取締役社長 野添智子さん。
まずは事業内容から伺います。
「包装資材全般の取り扱いと、それに伴う輸入、輸出、そして製造、販売をさせていただいています。
中でも最も力を入れているのが、主力製品の『ストレッチフィルム』。
販売とそれに伴う回収も行いまして、リサイクルして新たな商品を生み出しています」。

この『ストレッチフィルム』とは?
「わかりやすく説明させていただくと、工業用のラップみたいなものですね。
パレットなどに積み上げられている商品を包むものです。
荷崩れ防止、水濡れ防止や盗難防止、さらに粉塵の防御もできます。
1度、『ストレッチフィルム』で巻かれたものは10km、 100km先までも安全にお客様の荷物を守ってお届けするという、ミッションを持った商品です。
お客様の元に着くと荷物が崩れていたり...そういった心配が一切なくなります。
製薬会社さんから食品に至るまで、メーカーさんであったり物流会社さんで使われているものです」。

この『ストレッチフィルム』が現在の売り上げの主流に。
「元々はそうではなかったんですけれども、この20年間かけて需要が非常に大きくなってきました。
『ストレッチフィルム』は商品に巻かれて輸送されてその先に開梱されます。
そうすると1度使ったものですからゴミにしかならないのです。
その点でお客様が廃棄にお困りになったり、持ち帰りのご要望もありました。
当初、私どもの会社は小さくて、販売しても何かの原因でお客様が離れることがとてもしんどかった状況でした。
できるだけ繋ぎ止めておくためにも、お客様の要望にはお応えしていました。
そうして持ち帰っているうちにこれをなんとか有効利用できないかという考えになりました。
試行錯誤の結果、原料に戻すことができたんです」。

廃棄されるものを持ち帰って、それが商品の原料に。
「元々そのストレッチフィルムっていうのは粘着が強いものです。
粉砕したり練り込んだりすることが、ものすごく厄介な商材だったんですけれども、それをなんとか研究の末に原料に戻すことができました。
そしてこの原料をどうするか。
当初、原料を受け入れてくれるお会社さんも 1社だけあったんですけれども、自社でゴミ袋やシートを作ることに成功しました。
20年ぐらい前に『ストレッチフィルム』を販売して、その2年後の話ですね」。

およそ20年前の世の中の動きはどのようなものでしたか?
「産業廃棄物を処理する値段が上がってきた時代背景もありました。
私どもが買い取ることを打ち出すと、皆さん本当に喜んでいただきましたね。
1度お取引が繋がると商売が続くというような、自然とそういう流れになりました」。

買い取りとは驚きです。
「無償にすると皆さんゴミ扱いなんですね。
でも、お金をお支払いして買い取らせていただくっていうところに、本当に商品としての価値があります。
元々ダンボールの取り扱いもしておりました。
段ボールの箱で回収ボックスを備え付けさせていただいて、そこで分別をしっかりしていただくように小さなゴミ箱も横に置いたり。
お客様が分別しやすいような状況を徐々に作っていきましたね」。

このお取り組みは先代のお父様が中心にされていたのでしょうか?
「そうですね。
父と、そして私と弟たちも。
本当に家族で力を合わせて進めた感じでした。
お金を支払って回収。
当時、父がよく言っていたのは"こんなアホなこと誰もせえへん"と。
私どもはいかにコストを抑えながら、原料を作って。
そして製品になったら売れると信じて開発を続けてきました」。

最初にできたのが、再生プラスチックを100%使用した『スゴエコ袋』。
「市場から1度使われたものを回収して作っています。
ゴミ袋だったらなんとかできるんじゃないかなと。
最初、会社で使われているものを作って差し上げたら良いと思い、作りました。
養生シートや小さなネジを入れる袋、飛行機に被せるような大きなシートまで。
お客様のご要望に合わせてお作りして、お客様のところから回収させていただいたもので、お客様の商品を作ってお返しするという形です。
それをずっと続けてきているうちに、リサイクルの時代が来ました。
現在、東大阪市さんが、エコのゴミ袋として採用いただいています。
ストレッチフィルム由来の再生原料と、でんぷんを合わせたものです」。

ゴミ袋はそもそも"捨てるだけのための袋"。
「そうなんです。
それをわざわざ石油を掘削して作るバージンの原料から作る必要があるのかなと思いますね。
バージンよりも安く提供するということが私どものモットーです。
お客様が従来使われているものがコストダウンできて、さらにそれが再生品である。
それはお客様にとってもプラスな提案ですよね。
やっぱり消費者の方は、1番コストが大事ですから。
再生品は特に市場に出たものは、洗浄や乾燥など手間がかかります。
その手間がゆえに通常よりも20〜30%、もしくは1.5倍ぐらい高くなるものもあります。
私どもは自社で再生原料を作っておりますので、そのあたりはコストダウンできることが大きな強みです」。

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

お金を支払って回収したものを原料に。
これは驚きの手法です。
道なき道を進まれて、独自の大きな成果を上げられましたね。