2023年

4月30日

この手で掘り起こす日本の歴史

今週のゲストは株式会社島田組の代表取締役社長 岩立二郎さんです。
どんなお仕事をされている会社なのでしょう。
「埋蔵文化財の発掘調査をする会社です。
そんなお仕事があるのかとよく言われます。
最近報道されていた奈良市の国内最大の円形古墳・富雄丸山古墳で国宝級の大発見と云われた鉄剣や鏡。
うめきた再開発のエリアですが、あそこは大深町遺跡と云いまして、およそ1500体の埋葬された人骨がありました。
私どもの会社はそういった発掘作業や遺構遺物の検測、調査をしています」。

発掘調査という学術的なお仕事ですね。
「政令指定都市には文化財センターや考古学研究所などあります。
そこには優秀な調査員の方々が居られます。
その方々の指導のもと掘削したり、行政や研究機関からご依頼をいただきます。
内容でいうと重機から繊細な作業まで何から何までやりますね」

一般的な土木作業とは少し違いますよね。
「特殊な仕事ですので、発掘や掘削する作業員さんにライセンスがあるのかというと実はないです。
これは経験の積み重ね、経験年数です。
掘削の仕方がとても難しい。
掘削の道具ですが、スコップをはじめ料理で使う"おたま"なども使います。
スコップは足で押しこんだりしますが、木をカンナで削るように薄く土を削るように取っていきます。
実は私の息子が2年前に掘削の仕事に来ました。
野球をやっていましたので体も大きいし力も強い。
本人は楽勝だと思っていたようです。
そんな息子と20数年この仕事をしている70歳のベテラン作業員さんとヨーイドンで20m掘りました。
そうすると...息子が負けましたね。
土の色、土の層を見ながら掘るベテラン職人さんの圧勝でした。
ベテランになると力を入れなくとも上手にできるというわけです」。

人材の育成は大変ですよね。
「夏は猛暑、冬は極寒。
しんどい仕事です。
若い人でも翌日は筋肉痛で続かないんですよね。
作業員の皆さんには感謝ですね。
作業員さんに続けてもらっていて、長い人は20〜30年勤続の方もおられます。
そんな方々も併せて人数は80人ぐらいです。
作業員さんに話を聞くと"日本の歴史に触れることができる"。
"先祖や人類の歩みを知ることができる仕事"
ロマンを感じると言ってくれます。
考古学や発掘に興味がある方も多いですね」。

近代的な技術もお使いになるそうですね。
「柱の跡とか遺構検出、遺物検出と云いますが、3Dは復元に使ったりします。
例えば大阪城の石垣を予め3Dで撮っておくと万が一崩れた時に復元できます。
他にもドローンを使って上空から測量をしたり。
発掘は変わらず人力ですが、昔と現在で調査技術はかなり進化しています。
遺構遺物の実測・計測、平面図、断面図はデジタル化していますね。
おかげで期間短縮ができます。
熊本城が地震の影響で崩れましたよね。
かなり時間がかかっているようですが、今後はそういった計測をしていくと思います。
広島県の福山城は島田組が3Dでデータを計測しました」。

社員さんの専門性も高くないといけませんね。
「元々のセンスというものはありますね。
好きだけでもいけませんし、繊細さが必要です。
遺物があって、バラバラのものをくっつける接合という作業があります。
すごいなぁと思うのが、パズルみたいにパッと着けていく人がいるんです。
いっぱいある中で断面を見て合わせていくんですよ」。

繊細な作業ですね。
「女性が増えてきています。
細かい仕事をしてくれているのは女性が多いですね。
現場仕事で過酷なこともあります。
その反面、発掘の面白さを感じていただくこともあります。
とにかく自分に合うか合わないか経験してもらいたいですね。」

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

歴史の深い日本ならではの埋蔵文化財発掘調査事業。
直に歴史の一部に触れることができるお仕事ってすごいですね!