2023年

4月 9日

臨床医から研究へ 創薬で世界を目指す
ゲストは先週に引き続き、池田泉州銀行が大阪・関西地域のイノベーション創出に向けて新規性、独創性にあふれた企業・起業家を応援する第23回『ニュービジネス助成金』で大賞を受賞した、 HiLung(ハイラング)株式会社の代表取締役CEO山本佑樹さん。
今週は改めて会社の歴史から伺っていきましょう。

「私のバックグラウンドが呼吸器内科なんです。
医者として一通りの肺の病気は診てきました。
そこからiPS細胞を使った研究の道に入りまして、研究の中でiPS細胞から肺を作るという技術が将来、呼吸器疾患に役に立つだろうと始めたことが最初でした。
医者を始めた当初は研究をすることを考えたこともなかったですね。
患者さんを診ていると肺という分野は難しい病気が多いんです。
それを根本的に変えていくには研究することだと思いました。
"肺を再生"することは新しい概念。
どうせ研究をするのならば根本から変えたいと思って研究の道へ進みました」。

早くから医学の道を志しておられたのでしょうか?
「医学部に入ると医者になる方向です。
それは高校の時に決めました。
医者は社会と人とのコミュニケーションができる仕事だということ。
そして世のため人のためになるということ。
それが大きな医学の道へのモチベーションになりました。
もうひとつは全然違う方向で考古学も考えていました。
発掘をして研究をして深掘りしていく感じですね(笑)。
発掘する時って世界で誰も見たことがないものが出てくるわけじゃないですか。
ものすごく憧れましたね(笑)。
ただ医者になってから研究しようという考えはなくて、医者は医者として。
そこから研究の道に進むようになったのは考古学的に何かを探究するという気持ちが現れたからなのかもしれませんね。
iPS細胞を使って新しい発見や失敗があったり、道なき道を行く感じですね」。

発見があり、創業してビジネスまで。
「結構苦労してできたので、すぐに患者さんの役に立つんじゃないかと思いました。
蓋を開けてみると研究室の技術を患者さんに届けるまでは、また新たなハードルがありますね。
次もチャレンジしていこうという気持ちが会社を作った動機になりました」。

新型コロナウイルスの脅威がありました。
「感染症の創薬に役立つんじゃないかという話が出てきましたね。
国内外から問い合わせをいただきましたね。
最初に新型コロナウイルスに開発した肺細胞を使って論文を出したのはアメリカの研究機関と共に。
行くことができず、オンラインのやりとりをして、なおかつ細胞を生で届けるという技術が活きました。
新型コロナウイルスの感染実験をする時は防護服を来て完全防備をして大変なんですが、極力作業を減らしたいわけです。
その中でも私たちの開発した細胞は開封してすぐ使えるので"これはアメリカにない"と好評をいただきました。
やっていてよかったなと思いましたね」。

金鉱を掘ることと似ていますね。
「創薬はまさに金鉱堀なんです。
確率は低いんですが、その確率を上げるため、効率を高めるための支援技術って必要なんです。
高めていくと継続的な需要のある技術なので、ビジネス的にも成功するのではないかと思います」。

将来のビジョンはどう描いておられますか?
「世界一を目指したいと思っています。
日本の技術が世界で認められることが、色んな領域に対して広がりがあると思います。
ビジネスとしても大きくしていきたいですし、私が元々臨床医ということもあって、患者さんのためになるところを見たいですね」。

日本発の技術は世のため人のため。

竹原編集長のひとこと

臨床医からのスタート、そして研究の道へ。
世のため人のためという思い、目標が素晴らしいですね。