2022年

5月29日

転機は縫製部門設立 生み出す製品にこだわりを

今週のゲストは飯田繊工株式会社の代表取締役社長 上田純さん。
まずはお仕事の内容から伺っていきましょう。
「繊維製品の製造と販売です。
その中で衣料品に特化したファッション衣料生地の製造を行っています。
2018年に縫製部門を設立しまして幅広い製品の展開・販売ができるようになりました。
それまでは染色整理業といいまして、生地を染め上げる仕事が主でした。
来年で120周年を迎えます。
創業当時はタオルやベッドシーツの漂白が主流だったんですけれど、昭和中期以降、ファッションが栄えたと同時にいろんなカラーに染め上げる仕事が増えました」。

縫製部門の設立は大きな転換だったのでしょうか。
「それまでは受託がメインでしたが、ブランディングやOEM生産など自分たちで発信できるようになりました。
自分たちで作ったものが形として見えるということが大きかったですね。
仕事の幅が広がったことで社員のものづくりに携わっているという意識、思いが強くなったと思います」。

縫製部門の設立当時の状況はいかがでしたか?
「不安でいっぱいでした。
2018年の設立で、すぐそこへ新型コロナウイルス。
展示会がコロナの影響でなくなってしまいましたから...。
ではどうする...という岐路。
マスクを縫ってみたり、国内回帰になっているOEM生産をしてみたり。
社員たちも縫製部門の設立といっても、それまでは工場に何百メートルも反物が流れているわけですから想像がつきにくかったということもあったかと思います。
試行錯誤で現在に至ります。
現在は制服を縫おうとか、生地がいいから製品にしたいねという発想が広がりました」。

スタジオにも製品を持ってきていただきました。
「"ロイヤルパール加工"を施したコットン100%のTシャツ。
綿なのに真珠のような輝き、シルクのような肌触りでこの名前をつけました。
綿なのに冷感があってこれからの季節に良いと思います。
表面の毛羽を取りながら光沢感をもたらす設備投資をしてこの商品が実現しました。
キングコングの西野亮廣さんとのコラボ商品もあります。
西野さんの会社の『CHIMNEY TOWN』のロゴが入っています。
このTシャツには西野さんの想いがこもっています。
裾や丈、デザインや素材などもこだわりがありました。
4、5回やり直して完成しました」。

なんと原料であるオーガニックのコットンまで作っているそうですね。
「2018年に台風21号が大阪を直撃したことがありました。
社屋が一部倒壊して解体するところまでいきまして。
そのスペースで何かできないか...と。
では綿花を育ててみようと軽い気持ちで始まりました。
実はこれが大変でして(笑)。
もともと工場用地ですから砂利を退けて、近隣の方から田んぼの土を分けていただいて。
そこからスタートしたんですが、綿花がすくすくと育つのを見ていると愛らしいものです。
それを収穫するだけではなく紡績をして生地にする『なにわサスティナプロジェクト』立ち上げて参画してくれる企業を募っています。
そのオーガニックコットンで作った下着をクラウドファンディングサイト『Makuake』でも出展しています。
婦人用の『ふんどしショーツ』で加工もサスティナビリティに特化しています。
水の使用量、CO2の排出量など従来の30%削減して製造しています。
ブリングアウト製法といいます。
環境に優しい持続可能な社会を目指す加工法ですね。
とても肌触りがよくて締め付けも少ないです。
締め付けが少ないと浮腫が減ります。
浮腫から足の冷えにも繋がりますが、こういったおしゃれふんどしが脚光を浴びています」。

コットンの収穫祭もされたそうですね。
「地域の方々に集まっていただきました。
コットンはこうやってできるんだよ、衣料品ってこんな形でできるんだよ、と小学生にお話ししました。
衣料品の最終製品を見ていただくことで衣料ロスを減らす"服育活動"ができたらと思います」。

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

長い歴史を持つ会社の一大転機。
コロナの影響も受けましたが逞しく成長されていますね。
自分たちで最終形の製品を生み出すことにこだわりを持っておられます。