2022年

5月 8日

カーペットの未来を描く価値と誇り
今週のゲストは先週に引き続き堀田カーペット株式会社の代表取締役 堀田将矢さん。
改めて会社の歴史を伺っていきましょう。
「1962年創業、祖父が創業者です。
今年で60周年になります。
2008年に入社して2017年に私が三代目社長に就任しました」

30代で社長に就任した堀田社長。
やはり幼い頃から後継として...?
「私が初孫で長男だったこともありまして、"三代目!"と言われていた記憶はありますね(笑)。
でも両親から家業を継ぐように勧められたことはなかったですね。
いざ継ぐとなった時はカーペットが下火になっていた時代でしたので母は心配をしていましたね。
父は何も言いませんでしたができれば継いで欲しいという思いはあったかもしれませんね」。

堀田社長の経歴を拝見しますと大学卒業後、現会社へという流れではありません。
「北海道大学経済学部からトヨタ自動車株式会社へ入社しました。
北海道に行ったのは田舎の中の都会に住みたい。
その一心だったんです(笑)
大学は札幌市にあるんですが、自転車で移動してすぐに山があって。
その環境に憧れていたんです。
大学ではサッカー部に所属していまして、実は大怪我をして入院したことがありました。
そのせいで就職活動ができなかったんです。
その怪我の前にエントリーしていた会社がトヨタ自動車株式会社。
面接をしてくださって受かったという...」。

トヨタ自動車株式会社に行ってからはいかがでしたか?
「素晴らしい会社でした。
社会人の基本を作ってもらいました。
いわゆる"トヨタ式のなぜなぜ分析"を日常的にするので論理的に物事を考えたりするようになりました。

トヨタ自動車株式会社に7年。
そこからなぜ家業を継ぐことに?
「突然、父から電話がかかってきました。
会社を継ぐのか継がないのか、継ぐ継がないかで会社の方向が変わる、と。
父と一緒に働いてみたいという気持ちもありましたが、そこから1年悩みましたね」。

入社後はいかがでしたか?
「こんないい商品がなぜ売れないんだと思いましたね。
とても熱い想いを持って商品を作っていましたし。
ブランディングをやっていくしかないと思いました。
それを父に提案していくことになるんですが、目に見えないものに対する投資がわかりにくいんですよね。
今はもちろん理解してくれていますが、私自身もそのブランディングの結果を説明できない。
でもなんとなくブランドが必要だ、といった様子でした。
そのことで父とはドンパチしましたね」。

うまく回り始めたのはいつ頃なのでしょう?
「2008年に入社して8年苦しみました。
自分は何もできない。
何かしなければいけない。
でもブランドだ、という想いはある。
2016年にブランド『COURT』の発表がありました。
これで失敗したら2度とブランドなんて言わないという覚悟でした。
この8年もの間に色んなクリエイターさんや経営の師匠でありコンサルティングにも入っていただいた中川政七商店の中川淳さんとの出会いがありました。
そこでようやく自信がついてきました。
自分で行動することで未来を思い描くことができてきました。
それまで父から言われることが嫌だったんです。
父との関係も良好になりましたね。
素直に意見を聞くことができるようになりました。
父が変わったというより私が変わった。
それからは自分のイメージする通り進んでいます」。

堀田社長自身が変わった。
それは具体的にどういったところなのでしょう。
「今振り返ると、私自身の覚悟の足りなさ。
未来が見えていない、描けていない。
そこに何かを言われても何も返せない。
反発しかなかったんです。
今は目指すべき未来ははっきりしていますし、それを素直に話せます。
父の能力と私の能力は違うということがわかったのも大きいです。
父はものづくりの人。
今は関係も良好ですし会社としても良好ですね」。

当初心配していたお母様の反応はいかがですか?
「FacebookのコメントやLINEで熱いメッセージが来るんです(笑)
新聞で取り上げていただいた内容を送ったりすると"こんなこと考えとったんや、安心やね" とかね。
照れくさいんですけどね(笑)。

この先、未来のビジョンは?
「体験してもらえる場をどれだけたくさん作ることができるか。
これが大事なことだと思います。
私の自宅をはじめ例えばホテルだとか宿だとか。
一方で"カーペットを日本の文化にする"というビジョン。
自動車も電気自動車に変わっていっているようにカーペットもウィルトンから量産に変わっています。
存在価値がこのままでいいのかとずっと疑問に思っていました。
でもここ最近気づきました。
うちの職人たちが誇りを持って作るもの、姿に感動してくださるんです。
今ここにある価値、誇り、それをどう未来へ伝えていくかをやらなければいけないと思っています」。

竹原編集長のひとこと

お父様と息子さんの根のところの信頼感。
カーペットのようにご家族が一面で繋がっていますね。