2019年

4月28日

革新的に進む老舗酒造の力

先週に引き続き、ゲストは菊正宗酒造株式会社の代表取締役会長・嘉納毅人さん
創業360年という菊正宗酒造株式会社。
改めてその歴史を伺っていきましょう。
これほどの老舗です。
やはり順当に家業を継ぐという流れだったのでしょうか?
「実は全くその気がなかったんです。
今は後継者がいないという問題がいろんな会社にあると思いますが、実は私もそのひとりで他のことをやっていました。
金属箔の仕事をしていたんです。
でも結局私自身、進路変更をして老舗の家業を継ぐことになりました。
結果的には良かったと思っています。
老舗の企業は老舗だからこそ革新的なことができるんだと思います。
いわゆるベンチャー型といいますか。
老舗がベンチャー的な試みをしていくことができたんです」。

実際に様々な試みをされていたそうです。
例えば...?
「私が入社した時は日本酒は甘口ブームだったんです。
うちの酒は辛口ですから売り方を問屋に教えないと売れない。
実際に当時はこんな辛い酒は売れないとまで言われました。
売り方を教えるのに問屋を蔵の杜氏のところに泊まらせたり、掃除などしてもらって現場を見ることで勉強してもらったんです。
辛口の良さを知ってもらうための実習研修会ですね」。
なんと販売教育のために問屋を実際に教育。
さらに驚くべきは...。
「2泊3日で35,000円をいただきました。
それでも2000人ぐらい来られましたね。
蔵の掃除をすると酵母の機嫌がいい。
清潔というのは大事なんです。
こういった経験をしてもらうことで知識を得て、辛口の酒を売るためのセールストークを生み出したんです」。

実際の商品にも新しい試みをされたそうですね。
「樽酒の瓶詰めで小さいものを作りました。
辛口のお酒ですから酒が樽の香りですごく美味しくなる。
そのころ酒は燗をして飲むことが多かったんですが、冷やして飲むのもうまいということをアピールしたかった。
いずれにせよ飲んでもらうことが大事だと思いましたので、テレビ、ラジオのCMよりも試飲販売会を開催しました。
工場の社員に試飲販売をしてもらったこともありました。
その時に勧め上手がいまして、工場から営業へ引き抜いたこともありましたね(笑)」。

老舗だからこそできる取り組み。
老舗だからの安定感。
これからのビジョンはどうみておられるのでしょう。
「何か新しいことをするには老舗がやりやすいと思うんです。
老舗というのは革新的だから続くんです。
保守的な老舗は潰れます」。

進化し続ける老舗にこれからも目が離せません。

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竹原編集長のひとこと

老舗ながらもベンチャー企業の様な攻めの姿勢。
それを長く続けることができるのが老舗の底力ですね。