2018年

6月10日

一歩違うものを作る発想力

ゲストは先週に引き続きポリユニオン工業株式会社の代表取締役社長・大工貞晋さん。
社長自ら様々なシーンで活躍する自社商品PIGを「可愛い」とおっしゃいます。
今週は会社の歴史を伺っていきましょう。

「家業は織物の横糸を打ち込むシャトルを作っていました。
織物屋さんが盛んな頃に成り立っていたのですが、時代とともに移り変わっていきます。
私は昭和40年頃に福井の大手繊維会社に就職しました。
シャトルをより知るためです。
でもそこで衝撃的な事実を見るんです。
シャトルを使わない織機が入ってきたんです。
私はシャトル屋ですからショックでしたね。
こんなものが出てきたらダメだなぁ、と…」。
強烈な印象を残した当時、26歳だったそうです。
そこから…。
「家業が悪いものですから、実家に帰ってきました。
でも私どものシャトルの方が重症でしたね。
もともと輸出志向なんです。
そうすると品質よりも量を出す。
そうなると品質を怠る。
実際に勤めていた会社で見たようにシャトルレスの時代が目の前にきていました」。

その後、転換してプラスチックでシャトルを製造。
一時期は好調だったそうですが、じきに限界が。
本社工場を売却したそうです。
PIGに転換したきっかけはなんだったのでしょうか?
「プラントショーに行った際、PIGと出会いました。
これにかけたんです。
本社工場を閉めたので、製造を絞り込んだシャトルとこのPIGにかけました」。

ここからが試行錯誤の始まり。
PIGを自社のものとするために突き進みます。
「PIGはもともと輸入品。
サイズが違うので日本で使えば詰まってしまいます。
設計思想が違うから日本のパイプに合わないのです。
何かいい素材を使って作れないかと考えていたら、繊維時代にウレタンの業者とつながりがあった。
そこに相談しました。
材料はある、でもPIGにする科学知識がない。
しかし、本社工場を閉めた時についてきてくれた15人がいる。
私にはその人たちしかいない。
まさしく試行錯誤でした。
時間がかかりましたけど、できるもんですね。
当時、妻が“よく通るように”と験を担いでうどんを作ってくれました。
今でも頭が上がりませんね」。

日本のパイプサイズに合わせて作ったPIG。
徐々に実績を生み出していきます。
さらには特許取得。
繊維業時代に培った地盤にも営業に出向き成功を掴むこととなります。
社長の推進力と社員の力の賜物ですね。
「私と運命をともにした15人の中で今でも2人が残ってくださっています。
社員は全員中途採用なんです。
どこかを経験してきてくれる。
平均16年、我が社にいてくれているんです。
嬉しいことですね。
自社でPIGを作って、作業もしている。
それに営業チームが加わる。
そこには責任が伴ってくる。
社員はやりがいを感じてくれているのかもしれません」。

今後のビジョンはどうお考えなのでしょう?
「現在、国内ではこういったPIGを扱う会社が5社あります。
これをいかに差別化するか、いかに信頼していただけるメーカーになるかということですね。
そのためには新しい市場は自分で作って、他と一歩違うものを作る。
一歩違う工法を持つオンリーワンのものを持つということですね」。

数々の実績が認められ大手の化学メーカーが製造に協力的だというポリユニオン工業株式会社。
一歩も二歩も先に進んだ技術が生まれてくる未来は、すぐそこなのかもしれません。

竹原編集長のひとこと

時代とともに移り変わる転換期を見定めておられますね。
培った技術と新しい発想はこれからも注目ですね。