株式会社近正 代表取締役
和田祥一さん
https://www.chikamasa.co.jp
世界が納得 ハサミを作り続けて百余年

株式会社近正 代表取締役
和田祥一さん
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世界が納得 ハサミを作り続けて百余年
株式会社北海鉄工所 代表取締役社長
林 孝彦さん
https://www.hokkai.co.jp/company/hiw/
鏡板、鉄道車両からクラフトビールまで
先週に引き続き、ゲストは株式会社近正の代表取締役 和田祥一さんです。
今週は会社の歴史から伺います。
「1910年(明治43年)に私の祖父である和田庄治郎が創業しました。
二代目は私の父、三代目の叔父、私が四代目になります。
初代はおよそ50年もの間、仕事をしていました。
だから第一次世界大戦と第二次世界大戦を経験しています。
最初からハサミを作っていました。
当時はOEMが多かったらしいです。
"鋼づけ"という作業で鋼を叩いて手作りのハサミを作っていたそうです。
その頃から果樹園芸のハサミでした。
どっちかというと農家さんとか業者さん向けです。
二代目も三代目も手作りを学んでから自動化へ。
その時に『近正』というブランドがスタートします。
OEMを自社ブランドだけにしようという選択をしてくれているんです」。

当時から自社ブランドは順調だったのでしょうか?
「全然、注文がこなかったと聞いています。
でもこのブランドは私への最大のプレゼントだったと思います。
いざブランドを作ろうと思っても、なかなかできないことですから。
初代が手作業での仕事で苦労をして、二代目と三代目が自社ブランドだけにして色んなハサミを作り出した。
初代は最初から最後まで自分でハサミを作っていました。
その形を次世代が引き継いだことも大きいです。
現在でもその形を継承して90%を自社で作っています。
3年前にプラスチック整形会社も買収しましたので成形もできますし、金型もできます。
バネとリベットと一部の熱処理ぐらいは外注ですが、あとはみんな社内で出来ます」。
『近正』として法人化されたのが1968年。
鳥のマークがありますね。
「二代目の父がブラジルでハサミの製造を教えに行ったことがありました。
その時に持って帰ってきたデザインをもとにこれをトレードマークにしました。
ブラジルの国鳥です。
くちばしがハサミに似ているということで使っています」。
現・和田社長はどのようにして入社されたのでしょうか?
「ハサミが身近にありました。
私は若い時からプラモデルとかラジコンとかアマチュア無線とかも好きでしたね。
色んなものを作っていました。
国語は苦手だったけど理科や数学は得意でしてね。
大学も工学部へ行きました。
卒業後は包装機械の大きな会社に入社してそこで機械設計をしました。
そこで学んだことがのちに活きましたね。
25歳ぐらいの時に『近正』に入社しますが、製造の自動化に役立ったわけです」。
入社してからはいかがでしたか?
「当時は20人以下の少人数の会社でした。
なかなか自分の思うような経営ができなくて非常に悩んだ時期でもありましたね。
私は社長の息子ですので周囲からの期待をひしひしと感じました。
すごいプレッシャーでしたね。
色んな勉強もしながらセミナーなどを受けたり本を読んだり。
その中で"これだ"と思ったのがトイレ掃除なんです。
トイレ掃除を毎朝一番に来て続けるんですよ。
もう何年も続けていますね。
6年ぐらい経った時に3代目の叔父が"皆でやろうやないか"と言ってくださったんです。
それが我が社の自慢できる社内の『5S運動』の始まりなんです。
みんなで掃除をすることに反対が出るかなとも思ったのですが、誰一人、反対する者がいなかったんですよ。
多分、私がトイレ掃除をしている姿を見てくれていたからかなと思いました。
年月はかかりましたけども、私が意図している方向に社員みんなが向きました。
今は朝、持ち回りで掃除をします。
トイレや階段も毎朝です。
9時から10時ぐらいまでは夜中に動く無人のラインの掃除を、私も役員も全員で掃除します。
この掃除にはもうひとつ目的があります。
"製品が綺麗、かっこいい"を目指しているのですが、その"綺麗、かっこいい"という目線は五感の部分になります。
人によって感じる差を揃えたいんですよ。
掃除はその練習でもあります。
綺麗な機械で作ったら絶対綺麗な物しかできないですもんね」。
『日本でいちばん大切にしたい会社』にも選出されています。
「去年、選んでいただきました。
どうしたら社員さんや、その家族も元気にできるかを考えました。
株式会社天彦産業さん、東海バネ工業株式会社さんも受賞されているこの賞を福利厚生や社内資格なども含めて目指そうと思いました。
審査が50項目もあるんです。
経営のことをはじめ障害者雇用、社会性、独時性があるか、などですね」。
社員さんにも寄り添った会社です。
「社員さんによく手紙を書きます。
誕生日がメインですが、結婚記念日やご家族の方にも。
私どもは委員会制があります。
社内で3つの委員会があって『おもてなし委員会』が工場見学を担当しています。
工場見学の最後に普通質疑応答するじゃないですか。
それを受けるメインは委員会の社員さんがするんです。
経営に関することは経営陣が答えますが他の質問にも社員さんが答える。
高評価をいただけますね」。
未来のビジョンを聞かせてください。
「目指すは日本一のハサミメーカー。
日本一っていうことは世界でも指折りのハサミメーカーに。
いいところまで来ているので、あとは次世代にもお任せしながら、私も援助しながら進めていきたいなと思っております」。
