「しあわせの五・七・五」本日最終回!

「土曜5時皆で集ったラジオ前」(ハイビスカス)
 16年と2ヶ月の間ご一緒して頂きました「しあわせの五・七・五」は今日最終回を迎えました。
しゃべり終えた今も、まだ実感がないというのが本音です。
逆に、番組を通して皆さんがつながってくださった感覚は確実にあります。不思議ですね。
 これまでいろんな体験を共にしてきました。中之島で毎年集い、何冊もの本を番組から生み出してきました。
毎日新聞の健康川柳の欄を楽しみにし、鰻谷の川柳通りを歩きました。
ひとつひとつ思い出すごとに、リスナーの皆さんの笑顔が鮮やかに浮かんできます。
コロナで苦しかった日々も、災害や戦争で厳しさに直面した日々もありました。
私自身もこの間に定年退職したり、家族を見送ったり、生き方を見つめなおすタイミングに何度か遭遇しました。
そうして今回、近藤師範の突然の旅立ちに茫然とするまま、今日を迎えました。
一人ではとても乗り越えられなかった険しい坂。皆さんの川柳は、足元を照らしてくれる灯りでした。
まさに「川柳で生き方再発見」の道だったと感じます。

 7月6日、新番組「五七五で生き方再発見!まるっと!幸せ川柳」がスタートします。
漫才コンビまるむし商店の東村雅夫さんとご一緒します。師範はいません。
東村さんは私たちと同じ、川柳仲間です。あなたも一緒に番組を作るお気持ちで、どうぞご参加くださいね。

 7月30日には、近藤さんの遺作「人間通の名言」(仮)が幻冬舎から発売予定です。
8月26日(月)夜7時からは近藤さんの追悼特別番組を放送します。
その公開収録を8月10日(土)にMBS社内で行います。人数に制限があります。
参加お申し込みはハガキのみ。お1人につき1枚、ご住所、お名前、電話番号を明記の上、お送りください。
7月5日(金)到着分まで有効です。抽選の上、当選者にはこちらからお電話いたします。近藤さんを共に偲ぶ場にいたしましょう。

 今の気持ちを表してくれている一句があります。
「ケヤキ言う裸一貫やり直し」(然心爛漫)
 今、私も福井さんもスタッフみんな、裸一貫のケヤキです。近藤さんは冬の欅が大好きでしたよね。
すべての葉を落とし、空に向かって両手を広げて光を求める樹形。
 ここからまた歩き始めることにします。川柳のある暮らしは続きます。

 これまでのおつきあいに深く感謝します。ありがとうございました。
 どうぞこれからもよろしくお願いします。                水野晶子

「川柳な人々」 ゲスト:松岡恭子さん(月間川柳マガジン発行人)

 今朝は、唯一の川柳専門月刊雑誌「川柳マガジン」の発行人である松岡恭子さんをスタジオにお迎えしました。
これまで何度も番組にご出演、近藤さんと共に川柳の歴史などお話し頂きました。
中之島イベントも取材を重ね、リスナーの皆さんの川柳への想いをよく分かってくださっているお一人です。
「月間川柳マガジン」には「しあわせの五・七・五」のコーナーを設けて、毎月しあわせ賞の掲載を続けてきてくださっています。
 新しい川柳番組に生まれ変わる7月以降も、番組コーナーを継続してくださることになりました。
あなたの一句が全国発売の雑誌に刻まれるチャンスは、これからも続きます。
 近藤さんが近年、皆さんに勧めていたのは、自作の川柳を集めて「自分史」を作ることでした。
一句と、その背景を思い出す言葉を綴れば短いエッセイができる、そのセットを積み上げていけば一冊の本が生まれますよ、と。
 「川柳マガジン」を発行している新葉館出版では、多くの方の句集など自費出版物を手がけてこられました。松岡さんにアドバイスを頂きました。
 まず、気軽にやってみること。
いつかそのうち、と完璧な準備をしようと目論んでいると、気がついたら気力体力が失せているケースが多く、残念なことに。
まずはできるだけ早く、小さなものを作ってみる。すると次はこうしたい、と気づくのだそうです。
一生に一冊を、と思い定めて気負ってしまわないで、二冊三冊出すつもりでやってみることだそうです。
簡単な冊子なら、ご自宅のパソコンでもできる時代。ご家族など、パソコン作業が得意な人にサポートを頼めるかも。
勿論、松岡さんに相談することもできます。
 気になる費用ですが、最近は安く制作できる様々な方法があるので、
自分で無理のない予算額を決めて、それに合わせてどんな方法があるか、と相談してみるといいそうです。 
 また新葉館出版で発行する場合は、本にバーコードがつきます。
これは、本屋さんで流通するために必要なもの。
つまり、あなたの一冊を本屋さんに取り寄せてもらえるというわけです。
本屋さんに自分の本が並んでいる光景は、夢ですね。
 「月間川柳マガジン」7月号は、6月27日発売です。
連絡先なども記されていますので、どうぞご活用くださいね。「いつかそのうち」から一歩前に踏み出してみませんか。

兼題「空」川柳。  それと、これからのこと。

「逆上がり失敗するから見える空」(末松満里子) 
4月にお願いしておりました「空川柳」。
近藤さんとご一緒に味わう予定をしていましたが、その前に近藤師範があっさり空へ旅立っていかれました。それが5月10日のこと。
 以来、皆さまから近藤さんを悼むおたよりを頂き続けてきました。
また共に「しあわせの五・七・五」はこれからどうなるの?というご質問も山のように頂戴しました。
これまで何もお答えできませんでしたが、今日はこれからの番組についてお知らせをさせて頂きました。
 健康川柳は「しあわせの五・七・五」として2008年4月にスタート、
それまでにも「はやみみラジオ 水野晶子です」や数々の報道番組で川柳の時間を近藤さんと共にしてきました。
その間、中之島でのイベントを重ね、リスナーの方々と近藤師範による本を何冊も生み出しました。
 そんな「しあわせの五・七・五」は、やはり近藤勝重さんを抜きには作れない、というのが私たちスタッフの一致した考えです。
 番組は6月いっぱいをもちまして終了いたします。どうぞご理解ください。
 ただ、皆さんの生活の中に川柳がしっかりと根づいていることを、今回強く感じました。
それは近藤師範が何より願っていたことでもあります。その思いを大切に、川柳の番組は継続させて頂きます。
皆さんの生活リズムを崩さないためにも、土曜5時からの同じ時間に放送します。
そして、私、水野晶子はお相手を続けさせて頂きます。
メールアドレスなどの変更もありませんので、これまで通り引き続きあなたの一句をお寄せください。
「ケヤキ見て空見て今日も五七五」(まりりん)
 どうぞこれからもよろしくお願いします。
 

「川柳な人々」 桜木紫乃さん

 近藤さんを「文章の師匠」と呼び、いつもやり取りを続けていた直木賞作家の桜木紫乃さんのインタビューをお届しました。
 お話を伺ったのは、近藤さんが急逝して一週間たっていない時期のこと。
北海道在住の桜木さんが、新作の取材のために偶然大阪にいらっしゃっていたのです。
出発するときに近藤さんに電話をして「今から大阪に飛びます」と伝えようとしたら、電話がつながらかったそうです。
その時すでに近藤さんは入院していらしたのです、誰にも明かさず。
 次回作は大阪の話で、事件記者としての近藤さんの体験談をもとに取材を進めて、これから執筆に入ろうというもの。
近藤さんのサポートが大きな意味を持っていました。
いよいよ大阪に乗り込み、近藤さんと相談しながら取材を、と意気込んでいたところに届いた訃報でした。
 近藤さんの自室は、書きものや調べもので、本の山。すぐに戻ってくるつもりだったらしく、日常のままでした。
その中から、桜木紫乃さんに関わる二つのものを、ご遺族が私たちにお預けくださいました。
ひとつは桜木さんの作品「家族じまい」を紹介する際に調べた、当時最新の資料。もうひとつは「砂上」の単行本。
どちらにも、多くの付箋がつけられています。
また気に入った言葉や表現に赤ペンと青ペンで線を引いていたり、丸で囲んでいたり。
近藤さんの癖のる文字でびっしり書きこみが残されています。
文章の細部にわたって丁寧に読み込み、自分の印象を書き留める、近藤さんのいつもの読書の姿が浮かんでくるようです。
 そして、もう一つ桜木さんにご覧頂いたものがあります。
それは近藤師範が残していかれた、最後の原稿。7月末に発売予定の新著です。
近藤さんは病に倒れる直前に、最後の一冊を書き上げていました。
そして本当なら、製本する前の叩き台の原稿に、今頃赤ペンで朱を入れて最後の仕上げをしているはずでした。
 近藤さんの資料や本、最後の原稿を手にした桜木紫乃さんは、思わず「師匠、なにやってるんですか...」と涙。
 近藤さんとの三時間にも及ぶ長電話。唄うことが大好きだった近藤さんの歌を、電話で二番まで聞いた日。
自分の気持ちのままに突然電話を切る癖。桜木さんと分かちあう、近藤さんのプライベートの思い出はいつまでもおしゃべりしていたいくらい、話が尽きませんでした。
 「噂供養」という言葉があるそうです。
なくなった方の噂を、親しい人たちがあれこれ交わす時間を持つことが、いい供養になる。
今日はそんな時間を皆さまにもご一緒頂きました。

「川柳な人々」 高田郁さん(時代小説作家・満月ぽんぽん)

 今朝は、小説家の高田郁さんがお越しくださいました。
リスナーの皆さんにはラジオネーム「満月ぽんぽん」さんとしておなじみですよね。
 高田さんと近藤勝重さんの最初の出会いは2009年。
高田さんが「銀二貫」で出版界に大きな旋風を巻き起こす直前だったと思います。
夜の報道番組で、曽根崎心中や堂島の相場、水路を生かした商いなど、大阪の町人の歴史を語ってもらったのです。
近藤さんの鋭い質問に次々答えていく高田さん。以来、近藤さんはすっかり高田さんの小説のファンとなり、新作について語り合ってきました。
 一方で「しあわせの五・七・五」のリスナーとしての高田さんの一句には、いつも大笑い。
「十三年まだまだ続く作家道」には「そのまんまやなあ」と近藤さん。
「みをつくし料理帖」「あきない正傳 金と銀」とシリーズを次々ヒットさせ、
テレビドラマや映画になるほどの人気作家でありながら、
十七音の世界では笑いを巻き起こす満月ぽんぽんさん、自他共に認める「ボツ酒場のチーママさん」です。
 2022年3月、ロシアのウクライナ侵攻が始まって間もない時期の一句。
「いくさ世の終わりを問うて咲くさくら」
 このときばかりは、近藤さんも「川柳を超えている」と唸りました。
今もまだ終息の兆しが見えず、より混沌とする世界を深く案じながらの、近藤さんの他界でした。
 高田作品には、大切な存在を突然奪われる場面が多くあります。
今、混乱の中にある私に高田さんはこんな言葉をくれました。
悲しい時はとことん悲しむといい。そうすれば、いつか必ず「底」が訪れる。
その時期は人それぞれだけれど、コツンと音がしたら、
そこからは故人が望んでいることを心に留めて日常を暮らしていくのが、
生きていく人間にできることだろうと思う。
 そうして「みをつくし料理帖」の一節を教えてくれました。
主人公がとても頼りにしていた人を突然亡くしたとき、こんな言葉をかけられます。
身のまわりにある小さなしあわせを積み重ね、なるべく笑って生きていこう。
今朝の一句。
「さよならの代わりに川柳つづけます」
近藤さん、満月ぽんぽんさんの一句、どないでしょうか~?

【おことわり】
満月ぽんぽんこと、たかだかおるさんのお名前漢字表記ですが、
正しくは、「はしごだか」です。
機種依存文字となり、文字化けする可能性がありますので、
「高」を使わせていただきました。

しあわせの五・七・五 川柳な人々

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