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ブルーズ講座 (関西エリア 2002/03/24放送分)



ブルーズ名盤百撰 No.8

今回の放送曲目

The Sun Is Shining / Elmore James

 この大阪ブルーズ・スピリッツは今回を含めてあと2回で番組終了となるのですが、少し急な番組の終わりとなってしまって僕もいずみちゃんも戸惑っているのですが・・。

 僕は番組開始当時シャレで言ってたのですが、「MBSのMは毎日のM、BはブルーズのB、SはステーションのS。つまり毎日ブルーズ・ステーションだ」と。できれば日本で(唯一)のこのブルーズ・ラジオ・プログラムをずっと続けて、番組と開設してもらったHPに僕のありったけのブルーズに関する知識と見解を残して巨大な、そして信頼してもらえる比類ないブルーズ・ライブラリーを作りたいと考えていた。自分自身にとってライヴをしたり、レコーディングしたりするのと同様のライフ・ワークのひとつだとパワーを出してきました。

 僕をCPに誘った先輩、シーナ&ロケッツのマコチャン(鮎川誠)には先日、「ホトケのラジオの原稿の量は毎回すごいよね。よく調べてあって・・意気込みがあるよね・・」と言われ嬉しい想いをしたばかりでしたが、番組の電波が届かなくてもHPを見てくださっている方が意外と多いことも途中で知りました。昨年来日したジョージ・ポーターはじめニューオリンズのミュージシャンの人たちには「よくニューオリンズの音楽を紹介してくれているんだってね。英語版のHPも作ってくれよ。ニューオリンズから見るからさ」と言われ、一瞬この番組が地球をキューンと回った気がしました。そう、もう時代は地球のどこからでもひとつの想いを持つものたちが結束し、その熱い想いを伝え、分かち合う時になっているのです。ブラジルからメールをもらったこともあります。フィリピンに単身赴任をしているブルーズ・フリークの方。そして、登校拒否になっている女子学生の支えにも少しはなったこともありました。いろいろありましたが、スタッフの方々の力強いサポートの元、4年半近くよくがんばったという思いと志半ばにして・・・という残念が半分づつ・・。とくに新シリーズ「ブルーズ・アルバム百撰」を始めたばかりと言うのが気になっていたのですが(100枚選ぶのにまだ20数枚ですから)、ひとすじの希望と言うか・・番組終了後も当番組のHPは残るということなので、僕が「アルバム百撰」の原稿だけは最後まで書いて当HPに送り続けますので是非時々見てやってください。

 それで今回はラスト前ということで、僕がCD、レコードを買うときにガイドにしていることというのをお話しますが、今日はブルーズマンの名前のABCの順ではなく「コンピレーション・アルバム」「オムニバス・アルバム」について話したいと思います。最初に聴いてもらっているのは僕がブルーズ初心者だった頃日本盤でビクターから発売されていた「シカゴ・ブルース・ゴールデン・パッケージ」からエルモア・ジェイムズの"The Sun is Shining"。

 まず月々のCD,レコードに使うことができるお金はみなさんいくらぐらいでしょう?

 僕はいまでもレコード店に行くと中学生の頃のように「ああ、もっと買いたいなぁ・・」と思いながら帰ってきますが、この広く、深い海のような膨大なブルーズの世界から限られた予算で何を選ぶかという時に考えたのがまずコンピレーションでいろんなブルーズマンを聴いてみるという方法です。70年代初中期このアルバムから僕はマディ・ウォーターズの"Long Distance Call"を、近藤房之助はオーティス・ラッシュの"So Many Roads"を、入道(西村元弘)はリトル・ウォルターの"Boom Boom Out Goes The Lights"を自分のレパートリーに取り入れたという記憶がある。このアルバムはすでに廃盤になっているので「百撰」には入れません。中古で見つけたら絶対「買い」です。

 次ぎの"American Folk Blues Festival1963-1966"というアルバムはアナログでもっていたものをP-VINE RecordsがCDで再発したので改めて買ったのですが、これもほんとによく聴いた世話になった1枚。収録されているミュージシャンは、マディ・ウォーターズと当時のチェス・レコードの錚々たるメンバーが中心。ウィリー・ディクソン、オーティス・スパン、そしてサニー・ボーイ、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュ、ジュニア・ウェルズ、ビッグ・ジョー・ウィリアムスなど実に豪華なメンバーです。彼等がヨーロッパ・ツアーにはじめて行った頃の録音で、イギリスではローリング・ストーンズはじめブルーズ・フリーク・ロッカーたちが席を取るのに大変な騒ぎだったようです。自分のレパートリーにはしなかったけれどこういうブルーズもいいなぁ・・・と、聴いた後この人のアルバムを買ったのがこれです。

I Keep On Drinking / Little Brother Montgomery

 そして、ブルーズ探索のより深いガイドになったのが、いまやブルーズファンのナビゲのひとつになっている"RCAブルーズの古典"。これは戦前のブルーズ(ブルーズはよく戦前と戦後、つまり第二次世界大戦の前後によって区切られる)についてのコンピレーションで、日本にブルーズ・ブームが生まれ始めた1971年にリリースされた。中村とうよう、日暮泰文、鈴木啓志の3氏によって編集されたこのコンピは初心者には捉えにくい戦前のデルタ・ブルーズ、カントリー・ブルーズについて適切な解説と選曲がなされていてブルーズ・ビギナーにはぴったりのアルバムだ。

Going Back To Memphis / Memphis Jag Band

 50年代から60年代にかけて主に南部のアフリカン・アメリカン・コミュニティーで圧倒的に支持されていたボビー・ブランド、ゲイトマウス・ブラウンなど優れたブルーズマンを抱えていたデューク/ピーコック・レコードのコンピレーションなどは収録されているミュージシャンが多彩で、自分の趣味に合ったミュージシャンを選ぶには好適なアルバムだ。ここには1曲だけ発売されたオーティス・ラッシュのこの曲が入っている。

Homework / Otis Rush

 こういうコンピレーションのライナー・ノーツを英語のものでもしつこく読むことですね。そうするとだんだん自分が気に入ったブルーズやソウルが作られた年代とか、関連するミュージシャンとかがわかってくるんですね。その内プロデューサーや録音スタジオ、その地名なんかも「あっ、これよく出てくるなぁ」と覚えはじめてしまうんですね。これは自然とそうなります。いいアルバムを出しているレーベルはちょっと冒険して少し違うテイストのものを買ってもまずひどいことはありません。ただ、すべてのアルバムが100%に近い出来のミュージシャンなんていません。そのミュージシャンを好きになるということはその人のダメと言われているアルバムも自分の耳で聴いてみることです。そして、そのミュージシャンがなぜ再びいいアルバムをつくるようになったのか、また何もつくれずに死んでしまったのか・・・なぜ、ずっとひとつのレーベルに固執してしまったのか・・どうしてだめになっていったのか・・・その辺りまでくるともう人間を知る作業が加わってきて、それはもう自分の思想や倫理や哲学をつくることにつながっていきます。たったひとつの曲からレコードが初めて作られたときまで遡ってしまい、そこから人種問題に入り、政治の問題、歴史のことに入り、人が人を憎しむ、蔑むのはなぜかというところまでいってしまったのですね。

 例えばマディは50年代に活躍し・・・と書いてあると、僕はちょうど1950年生まれですから、ああオレが生まれたころが全盛期か・・と何か親近感がでるんですよね。ミシシッピー生まれか・・・ミシシッピーって英語で書くとややこしいなぁ・・・・地図見てみよか・・ああ、これをデルタ言うてるんやな、それでデルタ・ブルーズか・・。名前がすごいなぁ・・みんなブラインド・レモン・ジェファーソンか、ブラインド・・・へぇーっ目が見えない人のことなんや。この時代は多いなぁ。すごいなぁ目が見えないのにボクサーやってた?でも、つらいなぁ・・・でも、たくましいなぁ・・・。生きるんに必死やったやろなぁ・・・、最後は凍死か・・。幸せやったかな、生きてるうちにお金も掴んだし・・・アメリカ行ったら絶対ミシシッピーへ行こう。

 僕の周りのブルーズ・フリークがこぞって言うのがライノ(RHINO)のコンピレーションの編集の素晴らしさだ。僕は編集だけでなく音もいいと思う(リマスターがうまい!)。とにかくコンピレーションというとよく売れたものを集めて入れておけばいいだろう主義の編集や、ライセンスが取れなかったためにこんな曲を埋め合わせにいれるか?的な間に合わせ主義の編集もよく見かける。やはり、その音楽に精通している人が愛情込めてやらないと編集の作業のアラは少し知った人たちには見えてしまう。それでも珍しい曲が入っていると渋々、納得いかない気持ちで買ってしまう。しかし、ライノ・レコードはまずハズレはない。次ぎに聴いてもらうジャンプ・ブルーズのコンピの選曲も見事と言うほかない。

Pink Champagne / Joe Liggins&His Honey Drippers

 次のソニーがかっての名門レーベル「オウケー・レコード」を再興した時に作ったこのコンピは、20年代のブラインド・レモンから現在のケブ・モ、アルヴィン・ヤングブラッドなどを一緒にガンボしたもので、こういうのも面白いと思った。コアな人たちがなかなか手を出さないものと、新たなブルーズ・テイストをもった人たちが手を出さないものを一緒にして、「まあお互いにとにかく聴いてみろ!」と仲裁しているような感じのアルバムだ。今日はそこから僕は結構おもろく思ったこの若手を。

Baby's Got Sauce / G.Love&Special Sauce

Respect / Otis Redding

 R&BそしてSoulの宝庫「アトランティック・レコード」 のコンピレーションはいくつかこれまでも出ている。このコンピレーションに入っているドリフターズ、サム&デイヴ、オーティス・レディング、ソロモン・バーグ、ウィルソン・ピケットなどのソロのアルバムを僕は何枚ももっているし、ここに入っている曲も収録されているのにこのコンピを買った。なぜかというと自分のベスト・ヒット20みたいなのを聴きたいからだ。原稿など書いている時にこういうコンピはいい。「モータウン・レコード」のこの手のものも愛聴している。

 この番組ではゴスペルも再三取り上げました。ここ数年、我が国でゴスペルが静かなブームと言われて、少し前まではコーラス・グループだったのがクワイア(大聖歌隊)と名前を変え、ヴォーカル教室だったのがゴスペル教室になっている。歌が常に信仰とともにあるゴスペル本来の姿を知っていながら信仰はなく「歌」のみを教えるという我が国のほとんどの偽ゴスペル指導者たちにこの最後にも僕は自省を求めたい。世界中から何もかも取って還元しないと言われ続けている我が国民は信心深く宗教に頼り生きている人たちがいるその宗教までもメシの種にするのか!?

 少なくともアメリカでゴスペルの現場をいくつか体験したならば、軽く「ゴスペル教えます」などと看板を出すことができるかどうか・・・。僕の知人も悲しいかな高い授業料を取ってクワイアという名のコーラス隊を組織している。彼はもう僕の「ブラザー」ではない。「彼の衣服の裾に触れる」という曲名の彼は「神」のこと。このタイトルを読むだけで深い宗教的意味があるように僕は感じる。素晴らしいゴスペルのレコードを出し続けたスペシャルティ・レコードのゴスペル・コンピレーション・アルバムから。

Touch The Hem Of His Garment / Sam Cooke With The Soul Stirrers

 いま聴いてもらったゴスペルのコンピレーションなどは本当に役立たせてもらった。何しろゴスペルの世界もブルーズの世界と同様に広く、深い。どこから手をつけていいのか戸惑うときにこういうコンピ・アルバムでまず好きな感じのゴスペルを掴み、そこからそのシンガー、グループ、クワイアのソロ・アルバムへと手をのばしていった。僕はゴスペルを聴くのはすごく好きだ。本当に魂を突き上げてくるパワーと歌い手の真摯な気持ちが僕に涙させる時もある。なぜかわからない。それは歌手の信仰の力かも知れない。しかし、感動したからと言って即歌うということにはならない。なぜならそこには「God」をはじめ「Jordan」「Hallelujah」「Jesus」など宗教の言葉が当然あふれているからだ。私が接したアフリカン・アメリカンのミュージシャンたちのほとんどは日本人のいくつかにクワイアに首をかしげ、日本人の指導者を見て怪訝な顔で僕に「彼はReverendなのか?(Reverend/聖職にある師)」または「彼はPreacherなのか?(Preacher/牧師、説教師)」と訊く。僕は「いや、リーダーだ」と答える。その後はあきれた顔をされ、僕は同国民として恥ずかしくなる。もちろん、洗礼を受け信仰に厚く長きに渡って信仰とともに聖歌を歌ってきている人たちが日本人にも多くいることも最後に付け加えたい。

What A Wonderful World / Louis Armstrong

 ブルーズの世界ではB.B.Kingがブルーズを身近に運んできてくれたブルーズマンのひとりだ。その役割をジャズの世界で早くにしたミュージシャンがルイ・アームストロング。もちろん彼はジャズを創始した偉大なミュージシャンのひとりだ。ジャズがポピュラーになっていく黎明期に人種の問題を含め数々の苦汁を味わった彼でしか歌えないこの心あたたまる歌。何年か前の年末、僕はこのジャズ・コンピレーションをよくある駅の即売場で確か千円で買った。いっぱい好きな歌が入っていて心が暖まり、そしてめちゃ得をした気分だった。


☆今回のブルーズ百選

  • "American Folk Blues Festival1963-1966"/P-Vine Records
    P-Vineは☆Best Blues Mastersというコンピのシリーズをやっているがこれもなかなか充実している。
  • RCAブルースの古典/BMGビクター
  • Greatest Gospel GEMS/Specialty Records
  • The Best Of Okeh Label /ソニー・エンターテイメント
  • Atlantic R&B /このアトランティックの年代別コンピは輸入盤でちょくちょく見かけるが、日本盤は以前[ジャパンWEA]がリリースしていた。
  • The Best Of Duke -Peacock/日本盤では以前MCAがリリース。
  • そしてRhino(ライノ)レコードのコンピは概ねどれも信用していい高水準。

今回の放送曲目




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