|
|
ポップなブルーズとは 結局黒人に残るものは・・
今日の一曲目は白人のバディ・ホリーのこの”ぺギー・スー”。これは僕が持って いる”The No1.R&R Album”というコンピレーション・アルバムに入っているのだが、 僕が考えるR&Rはこんなんではない。これは白人のフォーク・ソングだと思うが・・ 。どこがR&Rなのか・・僕にはわからない。エディ・コクランなどもあまりいいと思 わない。でも、こういうR&Rのコンピ・アルバムに必ずといって良いほどこの曲が入 っている。 前回約半世紀に渡ってジャズ、R&B、R&R,Bluesと各ジャンルに渡り活躍した”ビッ グ”ジョー・ターナーを紹介し、彼がその度ごとにチャート上位に曲を送り込んで いたことを話したが、彼が1954年に「Shake Rattle & Roll 」をヒットさせた2ヶ月 後に元々カントリー&ウエスタンのシンガーであった白人のビル・ヘイリーがこの 曲をカヴァーしたものをターナーのものよりヒットさせた。 (前回on air)黒人の ヒットした曲をすぐに白人がカヴァーしてヒットさせるというパターンはすでに 30、40年代からあった。そして、いつも白人のカヴァーが発売されると次第に黒人 のオリジナルの方はチャートから落ち消えていく羽目になった。やはりプロモーシ ョンの金の導入も違うし、まだまだ白人が黒人のレコードを買うのには勇気が要っ ただろうし、ラジオ局やプロモのために重要なポストはほとんど白人という時代だ から法律に触れない白人優先ということもあっただろう。そして、オリジナルを水 増ししたような、薄い味のつまらない白人カヴァーがポピュラーなものになってい くが、お金は薄められることなく白人の懐にたくさん入っていく・・・・という仕 組みだ。 ジョー・ターナーは「ビルのヴァージョンもなかなかいいよ」と言っているが、当 時R&Rのコンサートの出演者としていつも顔を合わせる相手のことを批判できるはず もない。僕は前回の原稿で「白人のR&Rの創始者のひとりビル・ヘイリー」と書いた が、僕の気持ちの中には白人のR&Rと黒人のR&Rとがある。最初に聞いてもらう白人 のバディ・ホリーのこの”ぺギー・スー”にR&Rは感じられない、白人のフォーク・ ソングに聞こえる。どこがR&Rなのか・・僕にはわからない。
エディ・コクランなど
はあまりいいと思わない。カントリー&ウエスタンのテイストが強くでているので
やはり薄い、軽い。ビル・ヘイリーを見ても、かっこいいと思ったことは一度もな
い。。ただ、彼は偶然「Rock around the clock」という曲に巡り合い、それが
1955年映画「暴力教室」という当時ヒップな映画の主題歌に使われたためスター・
ダムに上ったが、僕が描いているR&Rシンガーからはほど遠い。いつもR&R誕生の曲
としてこれが取り上げられるが歌もサウンドも途中のギター・ソロも僕には薄すぎ
る水割りだ。
やっぱりRockというぐらいで、できればストレート。入れても氷だけのRockにしな いとR&Rにならない。僕にとってのR&Rはこれだ。
1956年のリトル・リチャードのヒット「Long Tall Sally/のっぽのサリー」だが、 このパワフルな、そしてクレイジーな歌とど太いビートに支えられたサウンド、こ れこそ決められた道からはみだして新しい、自分のものを見つけようとした50年代 の若者の心情を表している。 その前年、1955年スペシャルティ・レコードからリリ ースされたリトル・リチャードの”Tuttie Fruttie”が<アメリカ南部からのR&Rの 誕生>だと思っている。そして、この曲だけでなくリトル・リチャードのヒット曲 、”Luccile”や”Good Golly Miss Molly”はさっきのジョー・ターナーと同様に 白人のシンガーにカヴァーされ、そっちが大ヒットしてPOPチャートの上位になり、 金が転がり込むというパターンとなった。 リトル・リチャードはインタビューで” オレたちが作ったものをやつらがすっとかすめ取って大金を儲けるのさ、クソッ! ”と言ってましたが、まあ彼の曲の中で最も売れたこのLong Tall SallyもR&Bチャ ートでは8週1位ですが、ポップ・チャートではどのあたりまで上がったのか。ここ でひとつ音楽歴史上大切なR&Rの基本ビートである8ビートはいつ出来たのか・・誰 が作ったのか・・・ということがある。
その前に次の曲を聞いてほしい。
Chuck Berryの大ヒット「ジョニー・B・グッド」を初めて聞いた時はやや気が抜け た。ロックのストーンズ、アニマルズがカヴァーしていたものを先に聞いていた僕 は「えらいペラペラやなぁ」と、オリジナルの迫力のなさに驚いた。とくに最初の ヒットだった55年の「Maybellene」は2ビートでカントリー・テイストさえあるし、 声も軽い、曲のテンポは早いがチャックのギターは軽快というか軽い。黒人やろ? チャック・ベリーって?と写真を確認した。 しかし、ビル・ヘイリーはじめ白人ロ ックン・ローラーにありがちな媚びた歌い方はしていないし、バックもブルーズっ ぽい。(ちなみにチャックのレコーディングのメンバーは当時のチェスのスタジオ ・ミュージシャン。ドラム:フレッド・ビロウ、ピアノ:ジョニー・ジョンソン、 ベース:ウィリー・ディクソン、時にはギターにジミー・ロジャースが入っている 。ビロウ、ディクソン、ロジャースは当時のマディのバックだ。) そもそも、彼が チェス・レコードにやってきたのはマディ・ウォーターズのバンドにギターで入る のが目的だった。マディはちょっとやってみたがマディのサウンドには合わずクビ になってしまった。自作のブルーズを歌ってみたが、聞いてわかるようにブルーズ 向きの声ではないし、ギターもどこか軽妙なところがあって重厚感がない。
ところ
が「Maybellene」をやったら社長のチェスは「おっ、ちょっとおもろいんちゃうか
」となり、デビューすることになりそれがなんと!ビルボードPOPチャート5位を記
録する大ヒットしてしまった。「ジョニー・B・グッド」は8位。「メンフィス」「
ロール・オーバー・ベートーベン」「キープ・ア・ノッキン」などたくさんヒット
のある人だかPOPチャートの1位にまで上った曲はない。1曲ぐらい・・・と思ってい
たが意外だった。
バックはシャッフルなのにチャックのギターと歌は8ビートになっている。シャッフ ル、ブギ、ストンプあたりが多く使われていた時代で、まだしっかりした8ビートの とらえ方をしているドラム、ベースは少なかった。「ジョニー・B・グッド」でも歌 ってみるとわかるが歌が8ビートのりの曲である。初期のチャック・ベリーを聞いた 最初はこのリズムの違和感にちよっと戸惑うものだ。 時間的にはニューオリンズ録 音のリトル・リチャードの方が早く、しかも明確に8ビートを打ち出している。もう ひとつ「真夏の夜のジャズ」という有名なドキュメント映画に彼は登場するのだが 、ジャズ・コンサートなので彼のバックは”カウント・ベイシー楽団”がやってい る。ところが彼の8ビートのノリをベイシー楽団のドラマーがつかめないまま曲は終 わってしまう。一度機会があったら見てください。しかし、ビル・ヘイリーもR&Rの 王様、チャック・ベリーも王様、リトル・リチャードも王様。ところが次のこの曲こそ R&Rの始まりだとする人がいる。
若くしてセントルイスで活躍していたアイク・ターナーはピアノもギターも弾くプ レイヤーであり、バンド・マスターであり、プロデューサーでもあった。エルモア ・ジェイムズ、ハウリン・ウルフをレコーディングしたり、才能のある若いミュー ジシャンを見つけだすことも上手かった。1951年ジャッキー・ブレストンというヴ ォーカルをたてて、この曲をメンフィスの”サン・レコード”でレコーディングし た。 曲はあっという間にR&Bチャートの1位になった。さて、ある人たちはこれを最 初のR&Rの曲と呼んでいる。確かにジャンプ・ブルーズから派生した強力なジャンプ ・ビートと迫力のあるサウンドはダンサブルで、こういう曲に乗ってめまぐるしい ジルバを踊るアフリカン・アメリカンの姿が目に浮かぶ。 アイク・ターナーはセントルイス、メンフィスあたりで音楽の黒幕をしきるフィク サーのような人間だったが、その彼のステージがあるとよく来ていたのがこのロッ クン・ローラーだった。
そうエルビス・プレスリー。これは56年の世界的な大ヒット作で同年6月には日本で もカントリー&ウエスタンを歌っていた小坂一也がこれを日本語でカヴァー。それ がプレスリーの日本におけるカヴァーものの最初であり、日本のロカビリーの始ま りだった。またその時期は日本に「ジャズ喫茶」と呼ばれたライヴの場が次々と生 まれたころでもあり、敗戦の傷も癒えて世の中が経済的な余裕もできはじめた頃だ った。 その後、平尾昌章、山下敬二郎、ミッキー・カーティスなどが現れ日本にも ロカビリーのブームが到来する。そして、そのほとんどのミュージシャンがアメリ カのビル・ヘイリーと同様に日本でもカントリー出身だった。その頃日本でポピュ ラー・シンガーといえば、カントリー&ウエスタンか、ジャズ、ハワイアン、そし てシャンソンしかいなかった。日本のロックがブルーズっぽいものに向うのが遅れ た理由のひとつは50年代にブルーズ、R&B系のミュージシャンがいなかったからでは ないだろうか。 しかし、ほとんど時間差なくアメリカの音楽を取り入れ、それを米 軍のキャンプ回りなどで歌ってたいたのだから当時のミュージシャンは勤勉だった のだろう。
Blue Moon Of Kentuckyプレスリーも当然カントリーのテイストをもっている人だっ たが、ブルーズそれもシャウターが好きで彼の歌唱には明らかロィ・ブラウンなど の影響が見れる。 カントリー・ブルーズのArthur Big Boy Crudupの That's All RightやKokomo ArnoldのMilkcow Blues Boogieなどもレコーディングしているが、歌唱法は明らか ロィ・ブラウンなどのシャウター系の影響を受けている。同じメンフィスの素晴ら しいブルーズマンJunior ParkerのMystery Trainのカヴァーを聞いてください。
|
|
|
Copyright(C) 1999 Mainichi Broadcasting System, Inc.
|